
ニッケイ物語
#8
ニッケイ・ヒーロー:私たちの模範となり、誇りを与えてくれる人
「ヒーロー」という言葉は、人によって異なる意味を持ちます。このシリーズでは、日系ヒーロー、すなわち彼らが人々に与えた影響についてさぐってみました。あなたのヒーローは誰ですか?あなたのヒーローはあなたの日系アイデンティティまたは日系人とのつながりにどのような影響を与えましたか?
ディスカバー・ニッケイでは、2019年5月から9月までストーリーを募集し、11月12日をもってお気に入り作品の投票を締め切りました。全32作品(英語:16、日本語:2、スペイン語:11、ポルトガル語:3)が、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、日本、ブラジル、米国、ペルー、メキシコより寄せられました。
「ニッケイ・ヒーロー」シリーズに作品を投稿してくださった皆さん、どうもありがとうございました!
このシリーズでは、編集委員とニマ会の方々に、それぞれお気に入り作品の選考と投票をお願いしました。こちらが、お気に入りに選ばれた作品です。
目次
免責条項:提出された作品(画像なども含む)に関しては、DiscoverNikkei.org および本企画と連携する他の出版物(電子または印刷)に掲載・出版する権利を、ディスカバー・ニッケイおよび全米日系人博物館に許諾することになります。これにはディスカバー・ニッケイによる翻訳文書も含まれます。ただし、著作権がディスカバーニッケイへ譲渡することはありません。詳しくは、ディスカバーニッケイの利用規約 または プライバシー・ポリシーをご参照ください。
ニマ会によるお気に入り

編集委員によるお気に入り
日本語

三木昌子さんからのコメント
白石さんのエッセイは、ちょうど150年前、カリフォルニアに渡り、若松コロニーを築いた一人であった先祖、大藤松五郎の足跡をたどるものです。松五郎の人生もさることながら、白石さんご自身の調査の過程もドラマチックで、読み終えるのがもったいない気もしながら、引き込まれて一気に読みました。
物事を調べていく中で、あることがまた別のものとつながり、新しい何かを知る喜び。過去と現在がつながっていく不思議に立ち会う興奮。調査の中で手を差し伸べてくれる人と出会い、知識や人や社会や歴史とは決して孤独なものではなく、大勢の誰かがいて存在するものであり、自分もそこで生かされていることを知る祝祭めいた感覚。ディスカバー・ニッケイの醍醐味を体現するようなエッセイでした。歴史はこうして語られることによって、再び生きなおすのだと実感します。
英語

ダン・クワンさんからのコメント
エドナ・ホリウチのミネ・オオクボについてのエッセイに、私はさまざまなレベルで胸を打たれました。第一に、類いまれな日系女性アーティストと彼女の力強く感動的な作品、『市民13660号』に新たな光を当てることの重要性という点において、次にエドナ自身が始めた自己探求の旅において、最後に、二人が最終的に幸福にも交差するという点においてです。ある女性の決意がいかにもうひとりの女性を勇気づけたか、というストーリーを読むことができたのは、素晴らしい体験でした。このエッセイが私たちに教えてくれるのは、人生における私たちの創造的行動が、いつ、どこで、誰に、どのような影響を与え得るかは未知数だということです。
女性作家としてのミネの選択に対するエドナの感謝と尊敬に、私も深く共感します。私を育てた日系二世の母、モモ・ナガノも、アーティストになりたいという願いをかなえるため、女性への伝統的な期待(や制約)を乗り越えなければならなかったからです。
ミネとエドナの物語は、二人の女性が自己発見の道を歩み、ミネ・オオクボはアートと執筆を通して、エドナ・ホリウチはコミュニティでの活動を通して、お互い他者と共有する術を見つけるというものです。この二人がつながり合ったことは、なんと完璧であったことでしょう。
スペイン語

ハルミ・ナコ・フエンテスさんからのコメント
このヒーロー企画を通して、たくさんの物語と素晴らしい人物を知ることができました。皆さんがよく知っている人から全く無名な人まで、これらのストーリーにはどれも彼らの人生そのものが映し出されており、男女問わず何かを後世に影響を与えたヒーローの姿がありました。
キヨシ・クワハラさんのエッセイは、1910年代にチリのイキケに到着したある日本人移住者のお話です。孫のフジコさんが書いてくれました。彼女にとって祖父は最大のヒーローだそうです。ルーツ探しのために祖父の故郷である熊本にも行ったことは、とてもすごいことだと思います。
このエッセイは、とても読みやすい文章構成になっており、ノルタルジックで愛情溢れる感情が伝わってきます。幼少期から半世紀後にかけ多くの日系人が問うように、フジコさんも祖父がどこから来たのか、なぜ移住したのか問うようになりました。そしてその経緯を知ることによって、著者は益々祖父のことが好きになり、尊敬するようになり、その教えが今も自分の中に存在することに気づくのです。
ポルトガル語

アンドレ・コンドウさんからのコメント
一般的に「ヒーロー」とは、架空の人物であったり、超人的な能力の持ち主であったり、危険に陥っている誰かを救う人を表す言葉です。今回投稿された三つのストーリーはこのステレオタイプと異なり、普通の人をヒーローとして描いています。三つの作品に登場する人物は、ひたすら真面目に生きてきた普通の人ですが、英雄的な行為をなし、興味深い人生を送ることにより「ヒーロー」になりました。
どれも質の高い作品ではありますが、私の「お気に入り作品」としてイラシー・メグミ・ナゴシの書いたフジサカ・ミヨコさんの物語を選びました。この作品はしっかりと年代順に記載されており、本にしても良いぐらいです。内容が豊富で興味深い素材だと思います。筆者は言葉を飾らず、物事を客観的に描いています。そして、主人公の生涯を自然に描くことで、読者に感動を与えてくれます。ヒロインの日常生活の描写の中に、彼女の感情の動きが感じられるからです。
その上、このストーリー描かれている英雄的なエピソードは、日系一世だけではなく、他国からの移民も経験していることなので、この作品は普遍的なものといえるでしょう。主人公のミヨコさんはまだ若い時に夫に死なれ、女手一つで4人の子供を育てながら、一生懸命、前向きに生きていくのです。また、もう一つ注目したい点は、フジサカ・ミヨコさんが過ごした時代です。当時は女性にとって、今よりもっと厳しい時代でしたが、彼女は全てを乗り越えてきました。これこそが本当のヒロインと言ってもいいと思います。
ストーリー
































編集委員
編集委員の皆さんのご協力に、心より感謝申し上げます。
- 日本語
三木昌子は、全米日系人博物館・日本語渉外担当として、日本人や日本企業に向けてのマーケティング、PR、ファンドレイジング、訪問者サービス向上などを担っている。またフリーランスの編集者、ライター、翻訳者でもある。2004年に早稲田大学卒業後、詩の本の出版社、思潮社に編集者として勤務。2009年渡米。ロサンゼルスの日本語情報誌『ライトハウス』にて副編集長を務めた後、2018年2月より現職。
- 英語
ダン・クワンはマルチメディア公演の受賞歴を持つアーティスト、監督、作家で、1989年よりその作品を国内外で発表している。彼の最初の著書「FROM INNER WORLDS TO OUTER SPACE: The Multimedia Performances of Dan Kwong」(2004年)は、「A History of Asian American Theatre」(2006年)で作品の重要性を評価された。シカゴ美術館附属美術大学を卒業し、18th Street Arts Centerのレジデント指導者アーティストでもある。またロサンゼルスに拠点を構える多文化舞台芸術団体「グレート・リープ」の副監督も務めている。
- スペイン語
ハルミ・ナコ・フエンテは、ソーシャルコミュニケーターで、リマ大学でジャーナリストを専攻する。教職、メディアアナリスト、様々な出版物へ執筆または編集者など、公的・私的機関で働いた経験を持つ。ブランドイメージやマーケティングにおける特殊コースを取得し、文化マネージメントにおける学位を持、APJっている。現在は、ペルー日系人協会(APJ)のコミュニケーション部門の部長を務め、会誌「KAIKAN」の編集者及びAPJ編集基金の編集理事のメンバーでもある。
- ポルトガル語
アンドレ・コンドウは、日系ブラジル人でm「リトルサムライ」(João-de-Barro賞の特別賞受賞,Jabuti賞の最終選考作品)や「日出ずる国の物語」(Bunkyo賞)、「日出ずる国の復興物語」(Humberto de Campos賞)など、10作品の著者である。300以上の文学賞受賞歴を持ち、日本語に翻訳された著書もある。シドニー大学の大学院を卒業後、執筆活動のアイディアを求めて60か国以上を訪れた。日本に住んだこともあり、日本列島の4棟すべてを訪れた。Telucazu Editionsの出版者であり、ブラジル/ANBLA日系文学の副会長を務める。文学に生きる人である。
今回ロゴをデザインしてくれたジェイ・ホリノウチさん、提出原稿の校正、編集、掲載、当企画の宣伝活動などをサポートしてくれている素晴らしいボランティアの方々やご尽力いただいた皆さん、本当にどうもありがとうございます!
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