ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2024/4/24/iguacu-de-cafe/

第12回 世界や地元で愛されるイグアスコーヒー社

第12回目は、ブラジルが誇るコーヒー会社の一つとして知られてきたイグアスコーヒー社の松井俊樹社長に話を聞いた。

日本人ゆかりのブラジルコーヒー

松井俊樹社長

同社は、1934年に移民してパラナ州コルネリオ・プロコピオ市でコーヒー精選工場や精米所等を兄弟で経営していた、実業家兼農業経営者で初代同社社長も務めた故宮本邦弘氏(1916年生、大分県)をはじめとする、大手農園主の共同出資により1967年に設立された。

1972年に丸紅株式会社が出資を開始して以来、世界的に販路を広げると同時に生産規模を拡張、また今日まで様々な最新技術を導入して「皆さまに喜んでもらえるおいしいコーヒー」をモットーに、インスタントコーヒーの製造・販売を手がけてきた。

今日、イグアスコーヒー社のインスタントコーヒーは輸出が75%、国内が25%で、世界約50カ国に輸出されて愛飲されている。


顧客好みのコーヒーを追求

同社が製造するインスタントコーヒーは、スプレードライ、フリーズドライ、アグロメレートの3タイプで、合計して年間2万3千トンの生産能力がある。日本ではスプレードライのニーズが高いのに対し、ブラジルではアグロメートが全体の7割近くを占める。

同社の強みは、顧客の様々なニーズを製品化するための製造設備とR&Dチームのコミュニケーション力、パイロットプラントを使いこなし製品イメージを具現化する技術力の高さにある。

また、安定的な製品を期日に納めるという、日本では当たり前のことも、相場変動の大きい農産物が主原料のため意外と守られない同業者が多いことから、顧客より高評価される一因となっている。

ベトナムで兄弟会社が操業開始

2020年に始まったコロナ禍では様々な困難がありながらも、ビジネスそのものは家庭の巣ごもり消費に支えられ、需要を減らすことなく堅調に推移した。しかし、2021年には霜害でブラジルコーヒー豆の国際競争力が低下、2022年のロシア・ウクライナ問題では混乱により、米国に次ぐ第2位の輸出先であったロシアへの輸出減で、ブラジルコーヒー業界は激動の時期を経た。その間、特に2021年以降、ベトナムやインドなどの新興インスタントコーヒー輸出国が台頭してきた。

世界的なインフレにより、顧客のインスタントコーヒーへの低価格志向が強まっている時勢の中で、価格競争力のある製品を生産していく必要がある。ブラジルは圧倒的な世界最大のコーヒー生産量(世界シェア35%)で、高品質なアラビカ種から価格競争力のあるロブスター種まで幅広い原料が入手可能であるが、常に世界一安い訳ではない。

そこで、ブラジルではより付加価値の高いビジネスを目指す一方、丸紅は世界生産量15%で価格競争力のあるベトナムに、第2のインスタントコーヒー工場イグアス・ベトナム社を設立し、2022年に稼働開始した。ブラジルとベトナムの原料のメリットと同社の技術をかけ合わせることで、幅広い顧客のニーズに対応でき、グループ全体として世界のインスタントコーヒー業界の中で存在感をアピールする。

イグアスコーヒー社のロゴマーク

ベトナム工場の立ち上げ時には、長年のノウハウと人材を有するブラジルから、ピーク時には8人が出向し、現在も技術陣4人が工場長や他の製造・技術面の幹部として駐在している。ベトナムの操業開始に合わせ、2022年6月より世界共通の新しい「IGC」のロゴも制作された。


地域密着型で地元に貢献

同社はコルネリオ・プロコピオ市(人口約4万8千人)の町を代表する企業となっている。親子2代や兄弟、夫婦で働いている社員も多く、従業員・地域が家族的な連帯を持っており、それが社員のロイヤルティの高さにつながっている。

松井氏が一回目に駐在していた1992年には、創設25周年を記念して日系企業ならではの5S(整理、整頓、清潔、清掃、しつけ)改善運動が導入されたが、2020年に2回目の駐在を始めた時、この運動を通じて工場運営における日本の優れた手法が完全に社内に根付いていたことに感慨を覚えた。

環境面を意識した地域の模範となる経営を指針に、2009年にはバイオマスボイラーを導入し、また、下水浄化設備に学校の先生・児童を集めての研修会を毎年開催するなど、地域一体となった取り組みも行っている。地元に愛され、世界でも愛されるイグアスコーヒーは、まさに日伯合作のインスタントコーヒーである。

イグアスコーヒー社の概要
正式名称:Cia. Iguaçu de Café Solúvel
所在地:
パラナ州コルネリオ・プロコピオ市
設立年月:1967年(丸紅株式会社が1972年に出資開始)
従業員数:
約700人
事業内容:
インスタントコーヒー(スプレードライ、フリーズドライ、アグロメレート)、コーヒーエキストラクト、コーヒーオイル等のコーヒー関連製品の製造・販売

 

*本稿は、『ブラジル日報』(2023年9月16日)からの転載です。

 

© 2024 Tomoko Oura

ブラジル イグアスコーヒー社 コーヒー 日系企業
このシリーズについて

パンデミックの厳しい環境の中でも事業を継続してきたブラジルの日系企業。コロナ禍も落ち着き始め、サステナビリティを目標とした新しい価値基準が求められる中、本連載では「ブラジルで活躍する日系企業の今」をご紹介する。ブラジル日本商工会議所協賛企画。『ブラジル日報』からの転載。

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執筆者について

1979年兵庫県生まれ、高校卒業まで神戸市で育つ。大学卒業後、2001年からブラジル・サンパウロ在住。フリーランスで現地の日本人向けマスコミを中心に取材・執筆活動ほか、編集業務に携わっている。

(2023年9月 更新)

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