戦場の漫画家

1969年8月中旬イーストロサンゼルスのボイルハイツ。日系1世、トクジ・ヨシダは自宅の食卓でたばこをふかしながら今日の羅府新報に目を通していた。「第28回二世週日本祭グランドパレードは明日」と出ている。トクジは短くなったたばこを灰皿に押しあてると、リビングにいる妻に向かって言った。
「おい、そろそろ行くぞ」
二人は60代後半ばの老夫婦。ヒサエは盆棚にお茶を添えた。
「ちょっと待って」
ほかにきゅうりの馬とナスの牛、中央には位牌と、若者の写真が立てられている。ヒサエはつぶやいた。
「もう25年も経つのね」
戦死した一人息子だ。決してハンサムとは言えないが、丸顔で親しみやすい笑顔が特徴の子だった。
ケント・ヨシ…