日系(ニッケイ)—をめぐって
日系ってなんだろう。日系にかかわる人物、歴史、書物、映画、音楽など「日系」をめぐるさまざまな話題を、「No-No Boy」の翻訳を手がけたノンフィクションライターの川井龍介が自らの日系とのかかわりを中心にとりあげる。
このシリーズのストーリー
第20回 サンパウロ東洋街—ブラジルの日系
2022年12月23日 • 川井 龍介
日本から見れば地球の裏側に位置する南米の大国、ブラジル。ここには190万人もの日系人が暮らし、世界最大の日系社会を構成している。どこの国からの移民でも数が多くなれば、自然と人々は集まり母国と同じようなコミュニティーが形成され、異国の中の小さな母国社会が誕生する。 母国と似たような店ができたり、街並みが生まれたりする。しかしそれは、似て非なるものである。気候風土が異なり、文化が異なり、社会制度も異なる条件のもとで誕生するのは母国のものをアレンジした、“母国風&r…
第19回 瀬戸内の日本ハワイ移民資料館
2022年12月9日 • 川井 龍介
大小約700もの島が点在する瀬戸内海で、山口県南東部に位置する周防大島(正式には屋代島)は3番目に大きな島だが、ここに日本ハワイ移民資料館(Museum of Japanese Emigration to Hawaii)がある。観光的には「瀬戸内のハワイ」とも呼ばれる島の資料館とはどんなものなのか、なぜここに資料館ができたのか、中国地方への旅の途中で訪ねてみた。 資料館は成功者の家 国道188号から車で大島大橋を渡り島に入り、海岸沿いをしばらくすすんでから内陸に入る…
第18回 世界の沖縄人が集うウチナーンチュ大会
2022年11月11日 • 川井 龍介
沖縄の個性の象徴 沖縄にルーツをもつ世界各地の人たちが、一堂に会した「第7回世界のウチナーンチュ大会」(同実行委員会主催)が、10月30日から11月3日まで那覇市を中心に沖縄各地で開かれ、日本のなかで「世界とつながる沖縄」の独自性が見事に表わされた。 「ウチナーンチュ」とは、沖縄の言葉で「沖縄の人」を意味する。つまり世界に散らばった沖縄県人が、その母国ならぬ母県に集い、沖縄の人と交流を深め、沖縄を軸としたネットワーク=ウチナーネットワークを維持、発展させようというの…
第16回 移民を運んだ船の物語「船にみる日本人移民史」から
2022年9月23日 • 川井 龍介
今日のように海外への渡航が飛行機によるものだった時代と異なり、かつては、島国である日本から海外へとなれば船便に頼るのが当たり前だった。北米・南米などへ移住する人たちも船で長い時間をかけてようやく異国にたどり着いた。 横浜、神戸から大型の客船に乗り込んだ人は数知れない。こうした移民を乗せた船については、横浜の港に近い日本郵船歴史博物館に行くと、当時の様子などがわかる資料があるが、移民船というテーマにしぼってまとめて紹介された書籍はあまりみあたらない。おそらく、「船にみる…
第15回 一世への挽歌 — 野本一平を読む
2022年9月9日 • 川井 龍介
いつだったか、ロサンゼルスのリトルトーキョーで日本人の経営するジャズバーにふらりとひとりで入ったとき、常連らしき現地の日本人と話す機会があった。長年現地で暮らすその人は、旅の途中の私に現地の日本人のことをあれこれ教えてくれた中で、「いろいろ事情があって、日本にいられなくなりこちらに来た人もいますよ」と、言った。 先日、1990年に出版された野本一平著の「亜米利加日系畸人伝」(彌生書房)を読んでこの人の言葉を思い出した。バーでの話にあがった日本人からはずっと時代を遡るこ…