
ジャーナリスト、ノンフィクションライター。神奈川県出身。慶応大学法学部卒、毎日新聞記者を経て独立。著書に「大和コロニー フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)などがある。日系アメリカ文学の金字塔「ノーノー・ボーイ」(同)を翻訳。「大和コロニー」の英語版「Yamato Colony: The Pioneers Who Brought Japan to Florida」は、フロリダ歴史協会による2021年ハリー・T・アンド・ハリエット・V・ムーア賞(民族集団または社会問題に関する最優秀図書賞)を受賞。
(2021年11月 更新)
この執筆者によるストーリー

第61回 ジョン万次郎の子孫が語る
2025年4月25日 • 川井 龍介
希有な人生行路とその功績 自らの意志で海外に渡り、新しい人生を拓いていく多くの移民、移住者がいれば、漂流の果てにたまたま異国にわたり想像もしなかったような人生を送った人もいる。江戸時代の後期、漂流中にアメリカの捕鯨船に助けられアメリカ本土へ行き、やがて日米の交流、親交に尽くしたジョン万次郎(中濱万次郎)は、その典型ではないだろうか。 米国大陸に初めて上陸した日本人としても知られるこのジョン万次郎の人生と人となり、そして日米関係に果たした役割について、ジョン万次郎直系5代…

第60回 敵と闘い、差別と闘った物語―『遥かなる山に向かって 日系アメリカ人二世たちの第二次世界大戦』を読む
2025年4月11日 • 川井 龍介
終戦から今年で80年、先の戦争を知る“生き証人”がほとんど残っていないなか、史実を語り伝えることがますます重要になっている。戦争は教科書で説明されているような国際問題として理解するだけではまったく不十分で、生身の人間がどのように傷つき、苦しんだかという、過酷で残虐な事実の集合体だということに思いを馳せればなおさらである。 このほど出版されたノンフィクション『遥かなる山に向かって 日系アメリカ人二世たちの第二次世界大戦』(森内薫訳、みすず書房)からこの事実を思い知らされ…

第59回 サンノゼ日本町を知る
2025年3月28日 • 川井 龍介
日系の伝統を伝える希有なコミュニティ 海外へ移住した日本人が日本の伝統や文化を残し、独特な日系文化を維持している数少ない例として知られるアメリカ・カリフォルニア州サンノゼ。先端技術の集積地である「シリコンバレー」のお膝元であるこのまちに形成された日本町についての企画展示『サンノゼ・ジャパンタウン 受け継がれる移民の想いと心』が、横浜市中区の「JICA横浜 海外移住資料館」で開催され、注目を集めている。 「日系人が海外でつくった日本町はいくつもあるが、サンノ…

第58回 日本の収容所にいたイタリア人少女の回想 — ダーチャ・マライーニ『わたしの人生』から
2025年3月14日 • 川井 龍介
日系人収容との類似も 第二次世界大戦中、アメリカやカナダそしてオーストラリアに敵国である日本の国民や日系人を強制的に収容していた施設があったように、日本にも敵対する国の人間に対する同様の施設があった。 このことは一般にあまり知られていないが、そのひとつが名古屋市にあったイタリア人の強制収容所だった。イタリアといえば、日独伊三国軍事同盟で知られるようにドイツとともに日本の同盟国であり、そのイタリア人がなぜ収容されるのかと疑問に思う人もいるだろう。 わたしもその一人だった…

第57回(その2) 文化の交差する世界を追い求めて
2025年2月28日 • 川井 龍介
第57回 (その1)を読む アメリカへの留学体験(1970年代)からアイデンティティの問題を意識し、以後、マイノリティーや異文化コミュニケーション考察の旅を続け、近年は、自らのルーツである伊豆の知半庵を拠点に、アートプロジェクトを仕掛けるあわやのぶこさんに、その活動内容や意図などをたずねた。 * * * * * 過去と未来、日本と外国がクロス 川井:生まれ故郷の伊豆の「知半庵」で、あわやさんがおこなっている「知半アートプロジェクト」というイベントには、さまざまな…

第57回(その1) 文化の交差する世界を追い求めて
2025年2月14日 • 川井 龍介
アメリカへの留学体験(1970年代)からアイデンティティの問題を意識し、以後、マイノリティーや異文化コミュニケーション考察の旅を続け、近年は、自らのルーツである伊豆の知半庵を拠点に、アートプロジェクトを仕掛けるあわやのぶこさんに、日系社会との関わりを中心に、異文化体験から今日に至る活動についてきいた。 たったひとりの日本人留学生として 川井:あわやさんとアメリカとの関係は、どのようにしてはじまり、どのような経過を経て今日にいたるのでしょうか。 あわや:大学で英米文…

第56回 戦前のカムチャッカの日本人
2025年1月10日 • 川井 龍介
堀江満智さんの研究から ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアと日本との歴史的な関係を研究している日本人のなかからは戸惑い心配する声が聞かれる。京都市在住の堀江満智さんはそのひとりで、堀江さんの祖父と父は、戦前ウラジオストクやカムチャッカに移住し商店経営をしていた。堀江さんがまとめた研究の一部や堀江さんに寄せられた同様の研究から、戦前のカムチャッカでの日本人の活動について紹介したい。 堀江満智さんは、1940年に京都市で生まれ、同志社大学を卒業後、中学教諭をつとめるかたわら…

第55回(その2) アジア系アメリカにいち早く注目 — 村上由見子さんにきく
2024年12月27日 • 川井 龍介
第55回(その1)を読む 1970年代から日系アメリカ人やアジア系アメリカ人について取材し、その成果をノンフィクションなどの書籍に著してきた作家でエスニック文化の研究者でもある村上由見子さんに、引き続き、アジア系アメリカをテーマとして長年、取材や研究をしてきたその足跡や意義などをきいた。 映画の中の差別 川井:村上さんは、「アジア系アメリカ」というテーマのなかでも、とくに演劇や映画の世界に焦点をあてているようですが、どのようなことがきっかけだったのでしょうか。 村上…

第55回(その1) アジア系アメリカにいち早く注目 — 村上由見子さんにきく
2024年12月13日 • 川井 龍介
1970年代から日系アメリカ人やアジア系アメリカ人について取材し、その成果をノンフィクションなどの書籍に著してきた、作家でエスニック文化の研究者でもある村上由見子さんに、アジア系アメリカをテーマとして長年、取材や研究をしてきたその足跡や意義などをきいた。 絵本作家、八島太郎との出会い 川井:アジア系アメリカ人や日系人に関して、村上さんがこれまで携わってきた研究や取材の歴史的な流れを教えていただけますか。 村上:私は大学卒業後、出版社で編集者をしていて「月刊絵…

第54回(その2)フロリダのある日系ファミリー・ヒストリー
2024年11月22日 • 川井 龍介
第54回(その1)を読む 「大前一郎物語」から 前回、アメリカのフロリダ州で農場を経営した大前家の歴史について、その子孫で現在京都で暮らす大前皓生さんの著作をもとに紹介した。皓生さんの祖父、大前久次郎が借金の返済のために兵庫県の山間部の故郷を去り、アメリカに渡ったのが1903(明治36)年。当初は西海岸で働いたが、その後フロリダへの日本人集団移住計画の一員としてフロリダ州北部のジャクソンビルに移る。 この計画は失敗し日本人は現地を去ったが、久次郎はジャクソンビルに…
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