ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2024/5/2/mn-propolis/

第13回 味と健康にこだわるMNプロポリス社

第13回目はMNプロポリス社の松田典仁代表取締役会長(86、群馬県)に話を聞いた。

高精度の食品分析を行った高品質のプロポリスや養蜂製品の製造・販売を続け、今日ではブラジルから外国に輸出されるプロポリス製品の約50%を同社が占めている。松田社長の飽くなき探求心から生まれた日本の伝統製法によるオーガニックの醤油や味噌も売れ行き好調で、特にラーメンの麺は注文がうなぎ上り。年末には昨年の年間販売数の倍を上回る100万食を超えそうな勢いだ。

世界のMN製品

MNグループののロゴ

サンパウロ市リベルダーデ地区の健康食品店などで、一度見ると記憶に残る「MN」マーク。長年、プロポリスのブランドとして認知され、外国で喜ばれるお土産として、気軽に使用できる喉スプレーや免疫力アップやガン・糖尿病・ボケ防止を期待できるプロポリス・エキス、錠剤、ハチミツなどが重宝されてきた。

その製造工場はサンパウロ市郊外の日系人の多いモジ・ダス・クルーゼス市にあり、店頭での販売イメージをはるかに超えるそのスケールの大きさに圧倒される。プロポリス業界では「世界のMN」と言われ、実際、世界18カ国に輸出されている。

MNのプロポリスや養蜂製品、オーガニック醤油 (右)、オーガニック味噌(左)

現在、MNグループは次の5つの子会社で構成されている。

《MNプロポリス》養蜂製品の製造販売。特にフリーズドライの粉末は、ブラジルでは同社のみが生産。全生産工程での信頼度の高さを証明するSIF(連邦検査局)のモデル工場に指定されている。

《CETAL - 食品分析センター》ブラジル政府公認。中小企業が所有する食品分析センターとしては最大規模と見られる。

《MNフード》ラーメンの麺など。

《MNオーガニック》プロポリス・蜂蜜、醤油、味噌、乾燥ハーブなどを製造販売。

《MN動物用サプリメント(2025年稼働計画)》ペット用の健康食品を開発。

MNの工場全体


長寿社会をサポート「アルテピリンC」

松田典仁代表取締役会長

主力のプロポリスは、松田氏が1982年から研究・調査を始め、1992年に製造販売を開始した。同氏は1960年に農業移民として単身でブラジルへ渡り、最初の22年は会社勤めをしていたが「男のロマン」を捨て去ることはできず、妻の理解を得て本格的に起業を目指した。

1993年、ミナス・ジェライス州南部のプロポリスはアルテピリンCを含有していることを発見し、1997年には岡山県の林原生物化学研究所と木本哲也医学博士が、日本の学会でアルテピリンCがガンや糖尿病予防に効果が期待できると発表し、国内外でも注目を集めた。

今ではボケ防止の効果まで認められ、事実、86歳とは思えない松田氏の旺盛な好奇心と向上心を目の前にすると、その効果は一目瞭然と思える。

MNグループの企業理念である「安心・安全・こだわり」の製品、品質と信頼で顧客第一の信条は、日本製の機械も導入した自社の食品分析センターによっても裏付けられている。その年の気象条件によってアルテピリンCをはじめとする様々な成分の値は変動するが、有効とされる一定の数値に達しない場合も顧客には真実を伝える。厳選した原料から製造、流通まで、全過程に透明性を持たせ、クレームには松田氏または和田カルロス社長が真摯に対応し、「MN」マークの信頼を築き上げてきた。

プロポリスの原料の選別


オリジナルの味と健康を追求した製品

稲盛哲学にちなんで「盛」の字を描いたMNラーメン店の正面

現在、MN製品は約60品目ある。その中で、今年初めに年間100万食を目指したラーメンの麺は、年末には目標値以上に達する見込みで、嬉しい悲鳴を上げている。特注の小麦粉と政府の使用許可が必要なかん水を使用しているのがおいしさの秘訣で、ラーメンブームに合わせて続々と注文が相次ぎ、飲食店やブラジル各地のイベント出展者など200近い取引先がある。

ラーメンはもちろん、サシミなどにも松田氏自身の舌が満足する醤油と味噌を求めて、100%自然発酵、日本の伝統製法、保存料・添加物不使用で生産しているオーガニックの醤油や味噌も、「自然のおいしさ」を求める消費者の間で着実にファンが増えている。

この味噌と醤油をベースとしたスープの素と麺1玉が入ったラーメンセットも、小売店ではすぐに完売する。

モジ・ダス・クルーゼス市内で営業する「MNラーメン」店も食事時間には客足が絶えず、月6000食が出る。店の正面には、「稲盛哲学がなければ今日の自分はなかった」という松田氏の思いから、金色の亀甲型の中に描かれた「盛」の文字が力強く輝いている。

MNプロポリス社の概要
正式名称:MN Própolis-Indústria, Comércio e Exportação LTDA
所在地:モジ・ダス・クルーゼス市(本社・工場)
設立年月:1992年
従業員数:125人
事業内容:養蜂製品の製造販売、食品分析、食品材料(ラーメン材料他)、醤油、味噌、他のオーガニック(製品)の製造販売

 

*本稿は、『ブラジル日報』(2023年9月30日)からの転載です。

 

© 2023 Tomoko Oura

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このシリーズについて

パンデミックの厳しい環境の中でも事業を継続してきたブラジルの日系企業。コロナ禍も落ち着き始め、サステナビリティを目標とした新しい価値基準が求められる中、本連載では「ブラジルで活躍する日系企業の今」をご紹介する。ブラジル日本商工会議所協賛企画。『ブラジル日報』からの転載。

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執筆者について

1979年兵庫県生まれ、高校卒業まで神戸市で育つ。大学卒業後、2001年からブラジル・サンパウロ在住。フリーランスで現地の日本人向けマスコミを中心に取材・執筆活動ほか、編集業務に携わっている。

(2023年9月 更新)

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