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第4回 「北部加州」の日系人

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「米國日系人百年史」(1961年発行)は第一篇「総論」と、第二篇「各州日系人発展史 地方篇」の二つに大きく分かれる。このうち、全体の約3分の2にあたる1000ページほどをさいて全米各州別に日本人、日系人の百年の足跡をたどっている。ページ構成をみると、カリフォルニア州だけが北部、南部、中部とわけられ全体の約半分を占め、残り半分が他の州にあてられている。

各州とも「最初に日本人がこの州に踏み入れたのはどこで、どういう日本人が何のために移住してきたのか」といった、日本人移住(移民)のルーツを可能なかぎり記している。そして、各地に日系人が定住し、どのようにコミュニティーをつくり、発展していったかを俯瞰する。

また、戦時中はどのような経験をしてきたのか、戦後の復興はどうであったか、世代がかわってどのようにコミュニティーや各種日系の団体が活動してきたかを、具体名をあげて記している。名士や成功者、異色の存在についてはその横顔を紹介する。

北カリフォルニアからたどる

本連載では第4回以降、「米國日系人百年史」を各州別に読み、その内容を紹介していく。今回は第1章「北部加州」。その第1節「日本人先着の地桑港」では、次のように記している。

「わが在来日本人活躍の端緒は、桑港を振り出しに展開されて居る。初期時代の在住日本人の中に米人雑貨商店に勤務していた佐藤百太郎が当時渡米しても西も東も分からない新米者に対し、種々な便宜を与え、働口の周旋をしており、後ち布哇から転航した牧野富三郎も亦同時代支那人桂庵に出入して労働口を日本人に供給し合っていた。…」

百年史にある「北米毎日新聞社」、「日米時事新聞社」の広告記事

初期の団体である福音会や商店銀行の開業、1906年の桑港の大地震と日本人に与えた影響、また日本人墓地の存在に触れている。このあと、地域別に紹介。

「第2節 湾東地方の日系人」の湾東とは、オークランド、バークレー、アラメダの三市を総括した呼称。「日本人は農業、商業、洗濯業、花園業に多年の地盤を有し…」とある。

「第3節 湾南地方の日系人」で解説するのは、サンフランシスコ湾南西のサンマテオ、パロアルト、マンウテンビュ、サンノゼ、ギルロイといったまちと日系人について。このうち、サンノゼあたりに最初に入った日本人は広島県人で1892年とある。

つづいて「第4節 中部沿岸の日系人」というのはサンノゼの南、太平洋沿岸のワツソンビル周辺、サンベニト郡、サンタクルズ、サリナス、モントレーを指している。サリナスの日本人農家はレタス栽培を得意としていたという。モントレーでは「野田音三郎はハエナワ式漁業を試み頗る有望なことを認め多くの邦人に漁業創始の端を拓いた」とある。

「第5節 湾北地方の日系人」では、ソノマ郡がまず最初にあげられているが、ここはのちに「葡萄王」といわれた薩摩藩士、長沢鼎がイギリス留学からの帰途、アメリカに入国後に移住した地として知られることなどを記す。

「第6節 桜面都平原の日系人」は、州都サクラメント市周辺について。正確な記録はないが、1890年には「日本人の成業者が一軒あったと伝えられている」とする。このほかフロリン、ルーミス、プラーサ郡、メリスビル、コートランドなどについて紹介する。

戦争開始後の出来事なども掲載

「第7節 河下地方の日系人」では、サクラメント川に沿った、コートランド、ウオナッツグローブ&アイルトンの3地方でのさまざまな日系人の活動に触れる。その一つが1914年の「河下学園」なる日本語学園の開校。また、1915年に日本人家屋70余戸を焼き払う大火の記録も。

このほか、7節ではストクトン市について、農園開拓の先駆者として牛島謹爾(うしじま・きんじ)の事業について詳述している。異色の入植事業である「コーテズ植民地」の紹介もある。

第8節は、「北加州日系人の戦後復興」で、戦争による強制立ち退きによって離散した日系人たちが、どのように再興を果たすか、あるいは別の道を歩んでいくのかなどをみる。そのなかでサンノゼを「北加各地において日系人の帰還又は新移住者の、もっとも多数をみた」としている。

「第9節 戦時戦後の産黄金平原」では、戦争勃発後の混乱、関係する収容所での生活などを記す。サクラメントでは、日本軍のフィリピン攻撃の影響で、フィリピン人の暴動が起き、「山口県人木村儀一が自分の店さきで、客と見せかけて入った比島人の為めにピストルを乱射され即死する惨劇も起った」と記す。

「第10節 北加州の日系人団体史」では、対排日運動への対処や日本人会、日本人商工会議所をはじめ、各地域の県人会、故郷会、そして仏教会など宗教団体について細かく情報を載せている。

“紳士録”的な記事としては、叙勲者、事業成功者十数人を特集している。

(注:引用は原文のままに行いました。また、地名については「百年史」にある表し方を基本としました。敬称略。次回は「南部加州」をみていきます)

 

© 2014 Ryusuke Kawai

カリフォルニア州 コミュニティ 移住 (migration) 北カリフォルニア アメリカ合衆国
このシリーズについて

1960年代はじめ、全米を取材して日系社会のルーツである初期の日本人移民の足跡をまとめた大著「米國日系人百年史」(新日米新聞社)が発刊された。いまふたたび本書を読み直し、一世たちがどこから、何のためにアメリカに来て、何をしたのかを振り返る。全31回。

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執筆者について

ジャーナリスト、ノンフィクションライター。神奈川県出身。慶応大学法学部卒、毎日新聞記者を経て独立。著書に「大和コロニー フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)などがある。日系アメリカ文学の金字塔「ノーノー・ボーイ」(同)を翻訳。「大和コロニー」の英語版「Yamato Colony」は、「the 2021 Harry T. and Harriette V. Moore Award for the best book on ethnic groups or social issues from the Florida Historical Society.」を受賞。

(2021年11月 更新)

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