南米の日系人、日本のラティーノ日系人

日本在住日系アルゼンチン人のアルベルト松本氏によるコラム。日本に住む日系人の教育問題、労働状況、習慣、日本語問題。アイテンディティなど、様々な議題について分析、議論。

community ja es

父のアルゼンチンでの64年間 ー その2

その1を読む >>

里帰りと日本にいる我々

父が初めて里帰りしたのは1970年の大阪万博の年である。この時日本のあまりの成長と発展を目にしびっくりしたようである。父は、ブラジルのサンパウロで日本航空の便に乗り換え、機内では当時ブエノスアイレスでは入手困難なウィスキー「ジョニーウォーカー」を飲み、羽田空港に到着後新幹線で四国の香川県に向かった(岡山乗換え)そうだ。

この時の様子を綴った父の葉書を母が何度も読んでくれたので今でもよく覚えている。当時まだ小学校2年生だった私は、たくさんのお土産(玩具)を楽しみにしていた。特に、日本語学校で野球をやっていたので、野球のグラブをお土産で持って帰ってもらえるのを待ち遠しくしてい…

続きを読む

community ja es

父のアルゼンチンでの64年間 ー その1

これまで中南米と日本の日系人について、この「ディスカバーニッケイ」というこのサイトへ多くの記事を書いてきた。その中には私が生まれ育ったブエノスアイレス郊外にある「花の都:エスコバール」についてや、自分がマルビーナス戦争に従軍したことなど、記録すべきストーリーを綴らせてもらったことには感謝の言葉しかない。しかし、今回でこのシリーズも最後を迎える。最後の記事として、亡き父の「海外移住」という生き様を紹介したい。

父松本毅(つよし)は、戦後外務省海外農業実習生第1号として1957年に22歳で「あめりか丸」でアルゼンチンへ渡った。初めの3年はブエノスアイレス市郊外南東部にあった東江(あがりえ)新一氏の野菜農場で働き、移住前に農…

続きを読む

community ja es

日本在住の日系人も老後の時期にきたのか

コロナ禍になって1年半が過ぎたが、日本国内では最近外国人の高齢化問題をテーマにしたセミナーが増えている。今年の3月末に名古屋市で開催されたシンポジウムは対面とオンラインのハイブリッド型で、私は「在日南米コミュニティーの高齢者の老後」について話をするためスピーカーとして招かれた。このシンポジウムでは、韓国人や中国人オールドカマーの事例やフィリピン人たちの試みなどが紹介され、とても興味深いものだった。

特に、我々南米の人間とフィリピン人は「老後」や「終活」という概念についてあまり深く考える機会をもたず、文化的にあまり馴染みがないことが分かった。主催団体の代表である木下貴雄(王榮) 氏によると、中国系のコミュニティーでは、老…

続きを読む

community ja es

ウルグアイ日系社会の111年の足跡 — 第2部 花卉栽培とブエノスアイレスとの繋がり、そして次世代の日系ウルグアイ人

第1部を読む >>

ウルグアイの日系人が最も多く従事した業種は花卉栽培で、40年ぐらい前までは花卉事業で十分な利益を得ることが可能だったようである。私の生まれ育ったブエノスアイレス郊外のエスコバール市も「花の都」として知られており、戦前から花卉栽培が盛んであった。エスコバールは首都ブエノスから北50キロ離れたところにあり、早い時期から鉄道も敷かれており、土壌が花の栽培に適していた。1940年ごろ、首都ブエノスアイレス郊外には100軒以上の花卉栽培者が存在しており、当時の記録によると、合計所有地が48ヘクタールで、借地が325ヘクタールにも及んでおり、切磋琢磨かつ熾烈な競争だったようである。2019年には、エスコバールは…

続きを読む

community ja es

ウルグアイ日系社会の111年の足跡 — 第1部 日本人移住の特徴

南米にあるウルグアイ(正式名称:ウルグアイ東方共和国)は、面積は17万平方キロメートル(日本の約半分)ほどの小さな国で、人口は横浜市とほぼ同じ350万人である。この国が最近日本で話題になったのは、2016年にホセ・ムヒカ元大統領が来日したときであろう。この時ムヒカ元大統領は、東京外国語大学で講演をし1、テレビで「世界でいちばん貧しい大統領2」としてとても質素で気さくなところを紹介された。また最近では、赤身の「ウルグアイ産牛肉」が焼肉チェーン店や肉専門店に提供されていることでも注目を浴びている3。 

しかしこの国にも、現在350人前後の小さな日系社会が存在していることはあまり知られていない。しかも日本人が最初に…

続きを読む

タグ

argentine Argentine family floriculture history Issei Japan Kimono Project migration Migration Naomi Morimoto Ano Nikkei in Japan pention retirement social security Uruguay