ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2024/1/8/alissa-miki/

海藻から作ったキャンディーを世界市場へ — NY生まれ日本育ちの三木アリッサさん

  単身渡米後、起業4年半。ロサンゼルスで奮闘中のアリッサさん

「日本のいいものを世界へ」

在ロサンゼルス総領事の公邸で開催されたイベントで、海藻で作られているというキャンディーのブースを出展し、その商品に関するプレゼンテーションを行ったCashi Cake Inc.のファウンダーでありCEOの三木アリッサさん。まるで宝石のような華麗な見た目目の商品にも魅力を感じたが、「ビーガンである」「グルテンフリー」「添加物不使用」という、その健康的な菓子について明快な英語で紹介する彼女自身にもおおいに興味を惹かれた。

その後、約1カ月後にオンラインで取材が実現した。彼女がなぜ、そのような商品を手がけることになったのか、それ以前に彼女がどういうバックグランドを持つ人なのかについて聞いた。

「私はニューヨークで生まれ、同時多発テロが発生した9歳までは日本とニューヨークを行き来して育ちました。ところがあのテロをきっかけにアメリカから完全に撤退することになり、横浜で暮らし始めました。でも、そこでアイデンティークライシスに陥りました。うまく日本に適応することができず、また同時に日本人とは何者なのだろうと考えるようにもなりました。そんな私が(家と学校に次いで)第三の居場所のように通ったのが、横浜駅近くの高島屋(デパート)の催事場だったのです。そこでは日本のモノづくりに勤しむ職人さんの作業を、間近に見ることができました。足繁く通うほど、職人さんの仕事に惹かれた私は、日本のいいものを世界に広めたいと漠然と考えるようになりました」。

「日本のいいものを世界へ」という夢を形にするために、アリッサさんは大学時代から行動を起こした。「フローリストの方の作品をブランド化して、そのお花のブランドが楽天のランキングで1位を獲得することができました」。そのブランドの仕掛け人として実績を残した後、大学を卒業すると日本ネスレに就職した。

日本独特の新卒という制度を利用して、企業での経験を積むことが目的だった。その後、日本酒ベンチャー企業にて果実酒専門ブランドの立ち上げ責任者に転身。さらにイスラエルの専門商社で新規事業の開発責任者として従事した後、27歳でついに渡米を決行した。

スーツケース2個携えて渡米

「私の目標はあくまで『日本のいいものを世界へ』ということでした。では、最初にどこに出るか、と考えた時に、マーケットの大きなところにしようと思いました。私が参考にしたのはイスラエルの方式です。イスラエルはGDP27位という小さな国ですが、スタートアップの資金調達力はめざましく、それは広大なマーケットに狙いを定めているからです。私も(イスラエルの)ユダヤ人の方法に倣って、広大な市場、アメリカで挑戦しようと決めました。

さまざまな場所で海藻で作られたキャンディーの宣伝を行う

当社の商品は海藻から作られた和菓子ですが、それをオーストラリアでテスト的に販売し、手応えを得た後、たった1人でスーツケース2個を携えてアメリカにやってきました。1個には私の服などの私物、もう1個のスーツケースには和菓子作りの道具を詰め込みました。拠点とする都市にはサンフランシスコやニューヨークも考えましたが、ロサンゼルスにしたのは食品関係のスタートアップの環境が活性化されていること、この街が持つダイバーシティーが魅力だったからです」。

それから4年半、現在はロサンゼルス市内に工場を構え、従業員は50名を数えるまでになった。しかも、ソーシャルメディアでのマーケティングに力を入れた結果、同社のTikTokのフォロワー数は140万に、再生回数は6億5000万回に上るという。そして、TikTokを見たインフルエンサーのキム・カーダシアンからコラボレーションを申し込まれ、彼女のフレグランスのブランドの8種類の香りに合わせた和菓子を製造、それをキムがソーシャルメディアで説明してくれたことで、ブランド「MISAKY.TOKYO」の認知度が絶大にアップした。
 

地球の皆の幸せのために戦う「ゴジラ」

たった1人で渡米し、これまでのビジネス成長を成し遂げたのは驚異的だが、過去4年半でどのように足元を固めてきたのだろうか。

「最初は飛び込み営業でした。また、トーランスのファーマーズマーケットに最初お店を出した時は、そこに出しているヴェンダーさんと仲良くなって、自分の会社のために推薦状を書いてもらいました。従業員には、LinkedInを見て1人ひとりに声をかけていきました。突破口になったのは、業界で経験がある人材をCIO(Chief Innovation Officer)として迎えることができたことです。彼が入社してくれたことがゲームチェンジになりました。

また、アジア系企業は顧客もアジア人のみをターゲットにすることが多いのですが、当社はまだまだ小さな会社ではありますが、4割が白人の顧客と、顧客層を限定しないことが強みになっていると思います」。

次に過去に感じた挫折について聞いた。

「今も闘っている最中ですが、やはり食品業界の中でマイノリティーのアジア系女性として、正直、差別的な扱いを受けることが多いです。日本に本社がなく、食品業界のスタートアップの経営者である日本人は私が知る限り、私も含めて2人しかいません。それから商品を郵便で送る際に実に30%も盗まれたり、またクリスタルに見えるお菓子はパクリだと意地悪されたりしたこともあります。それでも、まだまだ苦労は続くんだろうなと覚悟をしていますし、私には守らなければいけない従業員がいますから頑張ります」。

最後にアメリカで生まれ、日本で育ち、今またアメリカを舞台に挑戦を続けるアリッサさんに、「あなたは何人ですか」と聞くと、答えは次のようなものだった。

「宇宙人ですね(笑)。日本やアメリカにとって、と言うより、今は私たちが住む地球にとって皆が幸せになるように頑張っていると自負しています。でも、実は社員には『ゴジラ』って言われているんですよね(笑)」。

もしかしたらゴジラも降参するのでは、と思うほどの力強いエネルギーを感じさせてくれるアリッサさん。同じ日本人女性として誇らしい限りだ。

 

© 2024 Keiko Fukuda

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執筆者について

大分県出身。国際基督教大学を卒業後、東京の情報誌出版社に勤務。1992年単身渡米。日本語のコミュニティー誌の編集長を 11年。2003年フリーランスとなり、人物取材を中心に、日米の雑誌に執筆。共著書に「日本に生まれて」(阪急コミュニケーションズ刊)がある。ウェブサイト: https://angeleno.net 

(2020年7月 更新)

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