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アメリカの日本語媒体

第7回 1903年創刊『羅府新報』- ロサンゼルスの有料日系紙

英語と日本語の両輪 

羅府新報日本語セクションの1面。

1903年に創刊された『羅府新報』は今も週に4日、有料紙として発行されている(パンデミック中は週に3日発行)。フリーペーパーなどなかった時代からロサンゼルスの日系社会のために地元のニュース、日本のニュース、そして生活情報を届けてきた同紙には、筆者も渡米直後からお世話になってきた。車がないとどこにも行けないこの土地で、ロサンゼルス生活が長い知り合いから「クラシファイドで車を探せるよ」と羅府新報を渡された。そして、中古車ディーラーの広告を見て、公衆電話から問い合わせを入れたことを今も覚えている。携帯などなかった29年前の話だ。そして、私はその真っ赤なマツダの中古車を無事に購入することができた。

現在の羅府新報は10ページ、郵送による購読者は約8000人、電子版の購読者は約3000人。2020年から日本語部編集長を務める、同社勤続21年の永田潤さんに、同紙の歴史を説明してもらった。「羅府新報を1903年に創刊したのは、日本からUSC(南カリフォルニア大学)に留学していた3人の学生でした。日本のメディアがゼロという時代、日本語の情報を日本人のコミュニティーに届けるために創刊されたのです。当時は1世の時代でしたから、紙面は全て日本語でした。その後、2世が成長するとともに、1926年、英語部ができました。現在はすでに5世の時代ですが、英語と日本語のセクションの両輪で続けています」。

日本語セクションの1面は配信記事、2面は独自取材によるコミュニティーのページだ。パンデミック前は、イベントの取材に来てほしいとの要請が絶えず、永田さんと他の2名の記者で取材に回っていた。取材要請が来るということはそれだけ人々に読まれているという証拠だが、「もっとコミュニティーに必要だと感じてもらえるように、独自取材によるオリジナリティーを強くしていかなければなりません」と永田さんは話す。

そして、オリジナリティーを打ち出すための一案は、日系人社会の実情や取り組みを日本語にして伝えることだと言う。「ロサンゼルスの日系社会は、日系人社会と日本語を話す社会に分かれています。日本語を話す邦人社会の団体は親睦団体である一方、日系人たちは全米日系人博物館、日米文化会館といった、経営面でもしっかりした組織を作り、プロフェッショナルなスタッフを雇って運営しています。このような日系人の取り組みを、日本語に翻訳して日本語を母語とする読者に伝えていく使命を実感しています。もっと日系人から、私たち日本人が学べることは多いし、彼らの社会のことを知ってほしいと思うのです」。

また、日本語セクションの課題は購読者の減少にいかに歯止めをかけ、増加に転じさせるかということだ。「新聞そのものを購読するには郵送費がかかるために割高になりますし、購読者の手元に新聞が届くのが発行の翌日になり、時間もかかります。しかし、オンラインだと即時に読んでいただけるし、郵送費も不要なので月の購読料は50ドルです」。

オンライン化促進に活路

電子版の購読者を増やし、新聞の購読者をはるか超えるところまで持っていければ未来は明るい。さらに、電子版以外に、オンライン独自のコンテンツを充実させるプロジェクトにも着手している。

「7月中旬にはウェブサイトのデザインを刷新しました。今後は、サイト独自のコンテンツを充実させていきます。オリジナルストーリーを掲載して、それを売りにしてサイト上の広告をより多く取っていければ、という狙いです」。

さて、2000年に羅府新報に入社した永田さんに、渡米理由と入社の経緯を聞くと次のように振り返ってくれた。「もともとアメリカへの憧れがあって、日本の大学を卒業した後に英語学校に留学しに来ました。1年ちょっと過ごして、日本に帰ろうかなと思っていたんですが、コミュニティーカレッジへのトランスファーという道があることを知り、経営学を専攻して卒業。OPT(オプショナルトレーニング)のビザが出たので、アメリカでも経験を積みたいと日系企業への就職活動をしてみたのですが、なかなか縁がなかったんです。そこで好きな写真を羅府新報主催のフォトコンテストに応募したところ、入選したので(羅府新報に)賞品をもらいに行ったのです。そうしたら、そこで僕が仕事を探しているというのを聞いた会社に採用され、最初は英語部の紙面のネガを作ることから始めました。その後、デジタル化で仕事がなくなったので、今度は日本語部に異動になり、記者に転身しました。会社が専門職ビザ、永住権とスポンサーしてくれて今に至ります」。

ロサンゼルスで歴史ある日系新聞で働くやりがいを聞いた。「日本語で記事を届けているので、日本人社会に喜ばれているという実感を得られることですね。多くの人々との出会いもこの仕事で生まれました。それが財産です。また、羅府新報で初めて仕事として文章を書いたわけですが、人に届ける文章に責任を持つことが重要だと認識しています。真実だけを伝えることが使命であり、最近言われるフェイクニュースは許されません。ニュースメディアとしての責任感は、前の編集長の長島さんや石原さんたちの姿勢から学ばせていただきました。そして、自分のために働くのではなくて、あくまで情報を届ける読者のために働くのがこの仕事なんだと思います」。

「コミュニティーの人に喜ばれることがこの仕事のやりがい」と語る永田さん。

今後は電子版の読者をより多く獲得し、「羅府新報」という伝統のブランドを残してほしいと筆者も心から願っている。

 

『羅府新報』公式サイト:https://rafu.com/ja

 

© 2021 Keiko Fukuda

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このシリーズについて

アメリカ各地で発行されている有料紙、無料紙、新聞、雑誌などの日本語媒体の歴史、特徴、読者層、課題、今後のビジョンについて現場を担う編集者に聞くシリーズ。