アメリカの日本語媒体

アメリカ各地で発行されている有料紙、無料紙、新聞、雑誌などの日本語媒体の歴史、特徴、読者層、課題、今後のビジョンについて現場を担う編集者に聞くシリーズ。 

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第12回 全米に行き渡るインターネットラジオ『さくらRADIO』

コミュニティーをつなぐ

ニューヨークからインターネットで配信している『さくらRADIO』は2017年10月にスタートしたのち、数年かけてじわじわと全米の日系コミュニティーに浸透してきた。同ラジオが異色な点は、メディアとは異業種である人材会社インテレッセによって運営されていることだ。

インテレッセ社長の藤原昌人さんはラジオ開設の経緯を次のように語る。

「人材ビジネスで全米各地をまわっていると、ニューヨーク、カリフォルニア、ハワイ以外のエリアでは、ほぼ日本語の媒体が存在しないということを知り、そのようなエリアの皆さんが求めるメディア、全米のコミュニティーをつなげるものを作りたいと思いました。その場合、今の時代、新聞…

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第11回 世代をつなぐ日本語テレビ 『Japan Hollywood Network』

視聴者の最大母数は85万人

30年前に日本からロサンゼルスに移り住んだ時、新しい習慣が生まれた。それは日曜の夜、現地で放送されている日本のテレビドラマを見ることだ。ロサンゼルスに来るまでは出版社で忙しい日々を送っていたので、テレビドラマを見ることなどほとんどなかったし、何より日本のドラマよりハリウッド映画を見る方がずっと楽しかった。しかし、いざ日本を離れるとそれまで見たこともなかった『渡る世間は鬼ばかり』といったドラマを楽しみに日曜を迎えるようになった。それは自分でも驚くほどの劇的変化だった。しかも日本語の台詞はそのままで英語字幕まで付いている。「この日本語はこう訳すのか」と勉強になったりもした。

私の記憶では、日本…

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第10回 1975年から2010年まで発行・日系文化を育む雑誌『TV FAN』

日本語テレビ番組を紹介

私が初めてフリーランスのライターとして活動を開始したのは2003年、原稿を書かせてもらった雑誌の名前は『TV FAN』だ。以降、同誌の最後の発行人となった竹内浩さんが2010年に発行を止めるまで原稿を書かせてもらった。そして休刊後、日系のイベントに行くと、「『TV FAN』はもう発行されないのですか?」と読者から度々質問された。あれから11年経ち、今はもうさすがに聞かれることはなくなったが、質問されていた頃は「『TV FAN』は随分と熱心な読者に支持されていたのだ」と改めて実感したものだ。

竹内さんを「最後の発行人」と書いたのは、彼の前に2名の発行人がいたからだ。創刊は1975年。故塚原孝…

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第9回 2000年開設『びびなび』全米33カ所、世界展開のオンラインメディア

参加型の媒体 

これまで本シリーズでは、全米各地で発行されている新聞や雑誌など紙媒体の編集責任者に取材してきた。しかし、インターネット社会の今、紙媒体以外に、オンラインのみで運営している「日本語媒体」にも焦点を当てるべきだろう。この原稿を書いている『Discover Nikkei』自体もまたオンライン媒体だ。オンライン媒体は、世界中どこからでも見られること、修正が必要な時にすぐに対応できること、さらには情報を見ている側もコメント欄に書き込むことで双方的なやりとりが可能なことがメリットとして挙げられる。その特性を生かし、2000年5月にローンチしたロサンゼルス版を皮切りに、現在全米33エリアに「あなたの街のオン…

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第8回 1984年発行『日刊サン』—LAのコアな読者に支持される新聞

ドジャース野茂旋風が転機に

私がロサンゼルスで暮らし始めた1992年当時、日本語新聞『日刊サン』は有料だった。その後、無料紙になったこと、さらにトルネード旋風を巻き起こした、ロサンゼルス・ドジャースの野茂選手の登場で、まだインターネットから情報を取ることが一般的ではなかった90年代半ばに、一気に同紙が身近な存在になったように記憶している。野茂選手がいかに『日刊サン』の救世主だったかを熱く語ってくれたのは、創業者の牧野泰さんから2012年に事業を譲り受けた現発行人の冨山敏正さんだ。

「1984年、ロサンゼルス・オリンピックの年に創刊した『日刊サン』は、10年間、25セントで販売されていました。私が入社した94年に無…

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