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https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2025/3/21/yakult/

第27回 「健腸長寿」を合言葉に=海外最多のラインナップ誇るブラジルヤクルト商工株式会社

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根本篤社長

本連載の第27回目は、ブラジルヤクルト商工株式会社(以下BY社)の根本篤社長(53)に話を聞いた。

サンパウロ市内を歩いていると町中で見かけることのあるヤクルトレディ。「健腸長寿」を合言葉に、Yakultのロゴマークがプリントされた手押し車(保冷機付き)でヤクルトを配達しながら、近所の人と立ち話をする風景はサンパウロでも住宅街の一風物詩になっている。


海外進出2番目の国だったブラジル

1966年に設立されたBY社は現在、「人も地球も健康に」をコーポレート・スローガンに、世界の一人でも多くの人々に健康を届けるべく、日本を含めた世界40の国と地域で事業展開している。オフィスの受付カウンターの背後には、世界各地で生産・販売されているヤクルト社の製品パッケージがアーティスティックなデザインで飾られているのがユニークだ。

ヤクルト社が最初に果たした海外進出は1964年の台湾で、二番目がブラジルだった。1968年にサンベルナルド・ド・カンポ市に工場を開設し、主力商品の乳酸菌製品ヤクルトの製造・販売を開始。1979年には、日本人移民がリンゴ生産をするようになったサンタカタリーナ州サンジョアキンから約100km離れたラージェスに工場を設置。「ふじ」をベースとした砂糖不使用の濃縮リンゴジュースを生産し、1984年に発売を開始した。

ロレーナ工場

以後、ヤクルト40(日本では400)、ヤクルト40ライト、ヨーグルトのソフール、タフマンEX、ハイラインF、果汁入り大豆飲料TONYU、果汁入り乳性飲料ヨーデルなど、BY社はヤクルト社の海外事業の中で最も多種類の製品ラインナップのある会社となっている。

ヤクルトは2001年、ANVISA(国家衛生監督庁)によってブラジルの発酵乳では初めて保健機能食品として承認された。同年に、ハイラインもビタミン、ミネラル、高繊維、鉄分など必須栄養素を含むブラジルで唯一の女性向け栄養補給飲料として賞を受賞した。

半世紀以上のヤクルトレディの活躍

ヤクルトのロゴマーク

2023年の1月~9月期のBY社の乳製品販売本数は、ウルグアイを含めて一日約139万9千本だった。その流通チャネルの構成は、ブラジル全体(宅配35%、店頭65%)、大サンパウロ圏(宅配53%、店頭47%)である。

同社は創設以来、宅配独立事業主であるヤクルトレディとともに成長してきた。日本で構築されたヤクルトレディを通じた独自の宅配システムをブラジルでも同じ仕組みで実践し、昨年9月時点で4362人(同社直轄4015人)のヤクルト宅配独立事業主が活躍している。

女性が経済的に自立できる事業機会を提供するために生まれたヤクルトレディだが、ブラジルでも55年以上にわたり、「健康に利益をもたらす生きた微生物」の乳酸菌シロタ株で腸内環境を維持し、「病気を予防する」という健康増進の啓発活動を行ってきた。

その結果、サンパウロの消費者の間では、ヤクルトブランドは発酵乳(Leite Fermentado)の同義語にもなるほど代表的なブランドと認知され、発酵乳を購入・消費を検討する際のトップブランドとしての地位を維持している。

ブラジルヤクルトの製品ラインナップ

ヤクルトレディを獲得するのは容易でなく、社員が一軒一軒の門をたたき、契約した女性に一カ月以上付き添って仕事を伝授する。ブラジルは地域・経済・人種等の違いが大きく、消費市場を細分化して考える必要があるが、地域に根差したヤクルトレディのおかげで地域性に沿うこともできた。現在の取引店舗・取引先法人数は、ブラジル各地で6万3906店に上る。

 

ブラジルでも野球や世界水泳大会を支援

1999年、BY社はサンパウロ州イビウーナにヤクルトスポーツセンターと野球場を落成した。毎年定期的にブラジルの青少年野球チーム大会が開催されており、同時にブラジル野球連盟による野球アカデミーが運営され、将来有望な野球選手の育成にも力を入れてきた。日本のヤクルト本社は世界水泳大会に、BY社はブラジルウォータースポーツ連盟に協賛しており、継続的なスポンサー活動も行っている。

ヤクルト和牛の直売終了、飼育は引き続き

1995年にブラジル和牛生産者協会が設立されて以来、ブラガンサ・パウリスタのヤクルト農場では乳牛と和牛が飼育されてきた。販売業者への直売で消費者まで届けられ好評を得てきたが、在庫切れにより、今後は精肉販売を終了する。根強いファンの消費者たちの間で惜しむ声が上がっているが、引き続き飼育は続けられる。

ブラガンサ・パウリスタもヤクルト農場で飼育される和牛

 

ブラジルヤクルト商工株式会社の概要
正式名称:Yakult S/A Indústria e Comércio
所在地:サンパウロ市、製造拠点3カ所(工場:サンパウロ州ロレーナとサンタカタリーナ州ラージェス、農場:サンパウロ州ブラガンサ・パウリスタ)、営業拠点76か所(うちサンパウロ州57か所、販売代理店29社
設立年月:1966年
従業員数:全社員1931人(2023年9月)
事業内容:乳酸菌製品及び飲料製造販売事業
サイト: https://www.yakult.com.br/

 

*本稿は、『ブラジル日報』(2024年4月27日)からの転載です。

 

© 2024 Tomoko Oura

このシリーズについて

パンデミックの厳しい環境の中でも事業を継続してきたブラジルの日系企業。コロナ禍も落ち着き始め、サステナビリティを目標とした新しい価値基準が求められる中、本連載では「ブラジルで活躍する日系企業の今」をご紹介する。ブラジル日本商工会議所協賛企画。『ブラジル日報』からの転載。

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執筆者について

1979年兵庫県生まれ、高校卒業まで神戸市で育つ。大学卒業後、2001年からブラジル・サンパウロ在住。フリーランスで現地の日本人向けマスコミを中心に取材・執筆活動ほか、編集業務に携わっている。

(2023年9月 更新)

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