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ブラジルで活躍する日系企業の今

第4回 庶民の食生活に浸透したブラジル味の素社

味の素ブラジル社が取り扱っている商品

第4回目はブラジル味の素社の中村茂雄社長に話を聞いた。1953年にブラジルへの日本人戦後移住が再開し、その3年後にブラジル進出を果たした味の素社。当地での67年の歩みを通じて、人々の食生活を支え続けてきた。

リトル味の素社の挑戦

中村茂雄社長

「リトル味の素社」とは、ブラジル味の素社に付けられた異名だ。グローバル展開する味の素グループの海外法人の中で、日本国内と同様にフードとアミノサイエンス(アミノ酸のはたらきから得られる多様な素材・機能・技術・サービスの総称)の2事業および製造拠点を有するのはブラジル味の素社のみという事実に由来する。


昨年、日本本社社長に就任した藤江太郎氏は、2015年にブラジル味の素社社長を任された。ブラジルの小さな味の素で鍛えられ、大きな味の素へと回帰した。

同社の基幹商品となっているのがミックスシーズニング(混合調味料)の「Sazón」だ。1988年の発売以来、ブラジルにおける調味料トップブランドとして人々の食生活を支え、販売量は年間4億パックに及ぶ。〝アモール(愛)〟の代名詞に使われるほどの人気だ。

「Sazón」を始めとする製品開発では、人種の多様性や所得格差など、国民の幅広いニーズを理解、尊重し最適な方法を求め続けてきた。ブラジルならではの食材を取り入れた多様な製品は美味しく、調理も手軽で、日常用のみならず外国のお土産としても人気がある。

人々の栄養と健康にサスティナブルに貢献

「アミノサイエンスで人・社会・地球の Well-Being に貢献する」との目標を掲げ、2030年までに、10億人の健康寿命を延伸、事業成長を維持しながら環境負荷50%削減を目指し、ブラジル発の製品開発や社会活動に取り組んでいる。

人気上昇のブラジル流節約レシピ

ブラジル社会の経済状況や食品ロス問題に対応し、豆などの安価な素材を使用した節約レシピや、普通なら捨ててしまうバナナやパイナップル、ジャガイモの皮を活かしたレシピを開発し、同社サイトで紹介し、好評を得ている。

海外のお土産にも人気のプラントベースミート

昨年8月に販売スタートしたプラントベースミート(PBM、植物性の原料を使って作る代替肉)「Terrano Veggie Burger」は、100%植物性原料を使用し、タンパク質や食物繊維を手軽に摂取できるゼロコレステロール食品。おいしく、水を加えるだけで多様な調理が可能だ。

海外のお土産にも人気のプラントベースミート

近年、家畜の飼育によって生じる環境負荷問題が世界的に顕在化している。世界的な人口増加に伴い、国連推計では、将来的に食肉を主とするタンパク質源は、供給不足に陥る可能性が示唆され、食肉の代替として植物由来のタンパク源に関心が高まっている。

欧米を中心に環境保護の意識から急拡大するPBM市場に対応し、味もオリジナル、牛肉、鶏肉の3種類がある。ブラジル限定商品だ。


環境に優しいアミノ酸系洗浄剤

石油系洗浄剤の代替として植物油が原料のアミノ酸系洗浄剤の需要が拡大している。同社が有するアミノ酸技術を生かした洗浄剤「AMISOFT」、湿潤剤「AJIDEW」の製造販売も行っている。これらは生分解性と安全性が高いことから、化粧品やハンドソープ、台所用洗剤などの商品に使用されている。


植物素材の製品吊り下げ器具で就労支援

植物素材を使った製品吊り下げ器具

ブラジル北東部の低所得者層地域で、現地の女性たちの就労支援として、植物素材の製品吊り下げ器具の制作を支援している。完成品は従来のプラスチック製器具よりも店から喜ばれ、目立つ場所に置いてくれるケースも多い。


「味の素」製造における持続可能なエコシステム

世界的な気候変動の課題に対し、同社もライフサイクル全体での負荷低減を目指し、省エネ活動や再生可能エネルギー電力の利用を進めている。2022年度末にCO2排出量は2018年度比でほぼ半減。今後も環境負荷の少ないアミノ酸の新製法導入等でCO2削減を目指す。

「味の素」はサトウキビなどの農作物原料から生産され、コプロ(発酵液などの副生物、アミノ酸をはじめとした栄養素を豊富に含む)を再び農作物の液体肥料として循環活用している。同社が「バイオサイクル」と呼ぶこのエコシステムは、化学肥料からコプロ肥料へ置き換え、農業生産を向上させるとともに、CO2削減にも貢献する。

味の素の生産におけるエコシステムの図


異文化交流で新しい価値を見出す

「現地生産・現地販売」を志向している同社は、ブラジル内向け商品はもとより、味の素グループの他法人への輸出拠点の一つでもある。また、他の海外拠点との人財交流も進んでおり、現在、ブラジル味の素社から6人の従業員が国外で活躍し(日本3人、タイ1人、ペルー2人)、当社もペルー味の素社から1人を受け入れるなど、人財のダイバーシティ&インクルージョン(多様な人材を活かし、その能力が発揮できるようにする取り組み)を進めている。リトル味の素社はブラジル発の様々な挑戦で世界の食生活にイノベーションを生み出し続けている。 

ブラジル味の素社
正式名称:Ajinomoto do Brasil
所在地:本社 - サンパウロ、工場 - リメイラ、ラランジャルパウリスタ、バルパライソ、ペデルネイラス、支店 - コロンビア、アルゼンチン
設立年月:1956年
従業員数:3087人(2023年3月末現在)
事業内容:食品、アミノ酸、化成品、液体肥料の製造・販売

 

*本稿は、『ブラジル日報』(2023年5月20日)からの転載です。

 

© 2023 Tomoko Oura

Ajinomoto Brazil business food business Japanese companies São Paulo

このシリーズについて

パンデミックの厳しい環境の中でも事業を継続してきたブラジルの日系企業。コロナ禍も落ち着き始め、サステナビリティを目標とした新しい価値基準が求められる中、本連載では「ブラジルで活躍する日系企業の今」をご紹介する。ブラジル日本商工会議所協賛企画。『ブラジル日報』からの転載。