私が6歳の頃から、両親は毎年、姉と私をロサンゼルスのダウンタウンにあるリトル東京で開催される二世ウィーク祭に連れて行ってくれました。日本村プラザに連なるたくさんのお店のなかのひとつで、作りたてのお団子とコロッケを初めて買ってもらった時のことを覚えています。甘いたれのかかったお団子と、その後に食べた香ばしいとんかつソースのかかったコロッケがよく合って、二世ウィーク祭での私達家族の毎年恒例のおやつとなりました。
日本村プラザの光景や匂いを楽しみながら家族みんなでプラザ内を歩き回っていると、父がたくさんの知らない人達に挨拶しているのに気付きました。私はいつもその人たちが誰なのか疑問に思い、きっと父の職場の友達なのだろうと思っていました。後に私の予想の半分当たっていたことが分かりました。何人かは父の仕事仲間でしたが、その多くは父がリトル東京で働いていたときに作った友達でした。日本人または日系アメリカ人コミュニティの人は皆フレンドリーで、お互いが家族のように接していることに気が付きました。
開会式のパレードは、毎年二世ウィーク祭が始まる最初の週の日曜日に行われました。大人、子供、お年寄りがみな1番通りと2番通りの歩道に沿って集まるので、警察は夕方からのパレードのために道を閉鎖しなくてはなりませんでした。私はいつも警察が警護にあたっているのを見て、これはそんなにも大事なパレードなのかと思ったのを覚えています。私達家族は、少なくとも姉と私だけは座れるよう空いているスペースを探しました。(2、3時間立ちっぱなしだと文句を言い始めるのが分かっていたからです。)
パレードはいつも、ダウンタウンロサンゼルスの警察がオートバイで走行して開幕します。そして、重要な日系市議会の役員とその家族ら乗ったピカピカに輝く車が後に続きます。
私はいつも、二つのフロートが気になっていました。。そのひとつは、地元の日系アメリカ人のバスケットボールチームのもので、もうひとつは二世ウィーク祭のクイーンとプリンセスが乗ったフロートです。パスケットボールチームはいつもバスケットのゴールを持って移動し、観客がリングめがけてシュートしました。私はまだ幼く、シャイだったのでそれまで一度も試したことはなかったのですが、ある時メンバーのひとりが私の目の輝きに気づいてボールを手渡してくれました。私は躊躇していたのですが、みんながやってみるよう勧めるので、トライしました。失敗した私は、姉にからかわれ、とても恥ずかしい思いをしましたが、周りのみんなが拍手をして「頑張ったね」、「大丈夫」と声をかけて慰めてくれました。その瞬間、私は直ちに気分が戻り、コミュニティに受け入れられている気がしました。
また、花で飾り付けられた二世ウィーク祭のフロートでは、クイーンとプリンセス達が座って観客に手を振っていました。私はそれを見て、いつか彼女たちみたいになりたいなと思いました。いつも私が手を振り返すと、プリンセスのひとりが私に気づいて手を振り返してくれました。私は有名人が気づいてくれたかのように感じ、バスケットボールの出し物と同じように、コミュニティーに歓迎されているような気がしました。
パレードのあとはいつも家族と大政レストランで食事をし、姉と私はいつもお弁当箱のような入れ物に入った鶏の照焼き定食を分けて食べました。父はテーブルいっぱいの寿司と刺身の舟盛りを頼んでいたのを覚えています。舟盛りは、いつも花と笹の葉で繊細に飾り付けしてあり、可愛らしい花の形に形作られたショウガが乗せてありました。
子供の頃、二世ウィークパレードが日本側の家族との繋がりを感じられる唯一の時間でした。(母が台湾人でアメリカに家族がいたので、母方の親族と過ごすことのほうが多かったからです。) 年々、自分のアイデンティティに加え、日系アメリカ人コミュニティとのルーツについて学びました。大きくなるにつれて、日系アメリカ人コミュニティーの特徴として、地域社会の結びつきの強さを実感しました。たとえ知らない者同士でもお互い家族のように接し合い、どうゆうわけかお互いのことを分かり合っていました。父を観察することで、私はそのことに気が付きました。父はいつも私を父の友達に紹介してくれていたので、たとえ父と一緒じゃないときでも、リトル東京へ来るとみんな私のことを覚えてくれていました。
リトル東京の二世ウィーク祭は、自分の日本サイドのアイデンティティへの興味を促し、さらにもっと深く知りたいと思うきっかけを与えてくれました。私は今、現在通っている大学で日本学と日本語のクラスをとりながら、日系の学生が集まるクラブに参加し、日系アメリカ人としての体験談を共有できるコミュニティ作りに励んでいます。私達がルーツを忘れないようにするにするためには、二世、三世、そしてその後に続く若い世代の人たちが上の世代から学び、それをまた自分たちの後の世代に伝えていくことが大事なことだと思います。
© 2018 Kate Iio
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