サンディエゴ発 日本食スーパーの創業
現在、アメリカには日本食品を扱うスーパーがいくつかあり、特に大都市であれば、日本の魚介類、精肉、調味料、お菓子など様々な日本食品を手に入れるのは、さほど難しくはなくなった。特に、日系のスーパーマーケットに行けば、日本にいるのと変わらず、様々な種類の商品を手に入れることができる。その中の一つに、現在カリフォルニアを中心に展開するアメリカの日系スーパーマーケット、ニジヤマーケットがある。
1986年、ニジヤマーケットは、サンディエゴの1号店よりスタートした。現在では、カリフォルニアだけではなく、ニューヨーク、ハワイに合計13店舗を展開している。
創業当時のアメリカでは、日本人にとって、まだ日本の食品の品揃えが充分ではなく、そして、この素晴らしい日本の味を世界中の人々にも伝えたい、という熱い思いからの出発だった。
ニジヤマーケットの食育活動の歴史
〜ごちそうマガジンによる日本食文化継承〜
ニジヤマーケットでは、年4回、季刊誌である“ごちそうマガジン”を発行している。これは、創業当初からの取り組みで、自社で扱っている商品の紹介だけではなく、日本料理のレシピや、日本食文化の歴史についても取り上げている。
例えば、日本の和菓子についての特集記事。日本の抹茶について、その成分と健康への効果について、そして、抹茶と共に白玉粉やあんこを使った和菓子デザートレシピについて、詳しく紹介している。また、お正月の時期には、おせち料理について特集し、どうしておせちがお正月に食べられるのか、その意味や歴史について紹介することで、日本食についての知識を提供している。
つまり、ニジヤマーケットでは、創業当初から「日本食は世界に誇れるもの」と信じ、このような取り組みを通して、日本食を世界に広めるという日本食についての“食育“活動を進めてきた。その結果、多くの日系人、アメリカ在住の日本人にとって、重要な情報源として、愛されてきたのである。
ニジヤオーガニックファームにかける思い
〜ニジヤマーケットの展開する新しいSHOKUIKU〜
現在、ニジヤマーケットでは、これまでの日本食文化継承を通した食育活動だけではなく、新しい形での食育活動を展開している。具体的には、“オーガニック”野菜の栽培、販売を中心とした食育活動である。
ニジヤマーケットでは、サンディエゴにある独自の農園で、できるだけ体に害を与える農薬などを使用しないオーガニックの野菜を栽培し、実際に店舗販売している。また、ニジヤファームで収穫された野菜や果物を使った日本食スイーツ等のオリジナル商品を自社開発し、販売することで、日本食文化継承としての食育活動だけではなく、健康によい栽培方法や、食品として紹介する新しい形での”SHOKUIKU”活動を展開している。
というのも、ニジヤマーケットでは、サンディエゴの1号店の創業時に掲げた「美味しく、健康的な日本の「食」を通して地域の方々に貢献したい」という創業者の熱い思いから、過去10年に渡って、このような活動を積極的に取り組んできた経緯があるからだ。
また、これまでのアメリカでの店舗経営を通して、現在では、日系人だけではなく、中国、韓国を中心としたアジア各国をはじめ、世界中の人々に、日本食についての認知度は高まっているという。そのため、このような新しい形でのSHOKUIKUは、アメリカという多人種、多国籍、多言語の環境で、地域住民の健康や、食に対するケアを通して、地域に貢献する活動なのである。
ニジヤマーケットの取り組みは、日系スーパーマーケットだからこそできる言語、伝統、人種を超えて受け入れられる新しい“食育活動”として今後も期待されるであろう。これまでの日本食文化を継承するという意味での食育活動からさらに一歩進んで、日本食を通して、地域住民の健康をサポートすることができる素晴らしい取り組みであり、今後も続けてほしいと願う。
© 2013 Asami Goto
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