2008年は日本人のブラジル移民100周年を祝う年であったため、日本でも各地で様々な関連行事が開催された。日本に在住している日系人によるイベントもあれば日本政府をはじめ、地方自治体や大学等が主催したものもあった。セミナー、シンポジウム、文化交流イベント、ミスコン、展示会等多岐にわたって、多くの日本人がこの一世紀にわたって海外に移住し、その経緯や過程、移住先での苦難と功績、そして現状と展望等を日本社会にアピールした。メディアでもかなり取り上げられたが、それでもこの移民という現象がどこまで日本社会に理解されているのかというと、いささか疑問に思えてならない。若い世代ほど日本の近代史をあまり把握しておらず、海外移住が始まった明治維新頃の世界状勢や日本の国際的立場や切羽詰まった状況を知らないことが多い。
同じような現象が、世代交替が進む日系人にも見られる。筆者は、ここ10数年前から中南米から来日するJICA研修員の受入業務の一部に関わっており、「日本人移民史」と「日本の教育制度」について毎回レクチャーする機会を得ている。様々な分野の研修生と会い、彼らの年代も20代から50代に及ぶ。最近は、日本での就労を経験した若者もかなりいるが、彼らは幼い頃に親と共に又は呼寄せによって来日した子弟であり、日本の公教育を一部又は全部受けている者である。そして、その家庭の事情で親の本国に戻り、現地で教育…