粂井 輝子

(くめい・てるこ)

白百合女子大学、英語英文学科教授。アメリカはいろいろな国から新天地を求めてやってきた人たちによって作られた「移民の国」。「日系移民」という切り口で、アメリカ文化を研究。シラキュース大学マックスウェル大学院歴史学科アメリカ史専攻修士課程を修了。専門はアメリカ史アメリカ研究、特に「日系アメリカ人史」、最近は日系日本語文学の作品発掘保存分析を行っている。『外国人をめぐる社会史:近代アメ リカと日本人移民』でアメリカ学会清水博賞を受賞。共編著に『アメリカ合衆国とは何か:歴史と現在』、『読み継がれるアメリカ』、『アメリカ文化への招待 テーマと資料で学ぶ多様なアメリカ』などがある。

(2013年8月 更新)

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Speaking Up! Democracy, Justice, Dignity

記録文学としての短歌、俳句、川柳:一世が詠んだ民主主義、正義、尊厳 - その2/2

その1を読む>>3.アメリカ民主義:排日からリドレスまで排日 1907年のニューヨークタイムズの記事には、「白人の世界の日本人の侵略」と書かれています。やがて紳士協約が結ばれ、1913年カリフォルニア州外国人土地法、1920年の写真花嫁への旅券発給停止、1922年小澤孝雄判決による帰化不能外国人の決定、1924年移民法による日本人移民の停止と続きます。 短歌から三つばかり拾ってみました。法律とは別に、家を借りることができない社会的差別や、市民権がないばかりに泣き寝入りしなければならない経済的損失が詠まれています。 憤り心には燃ゆ貸家札 貼りたる家も我等には貸さず          (井上渭城 『新世界』1923年6月24日) とつくにの民とし指紋押すここち 國辱めらるる思ひにてありき          (臼井千曲 『新世界朝日』1940年10月7日) 汗みづを流して稼ぐはらからの なまちをすする地主なるかな          (馬可文夫 『新世界』1926年5月23日) ここからは川柳を中心に作品を見て行きます。市民権を得ることのできないために差別を甘受しなければならない現実を嘆いています。これらの句から…

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Speaking Up! Democracy, Justice, Dignity

記録文学としての短歌、俳句、川柳:一世が詠んだ民主主義、正義、尊厳 - その1/2

本日は、「短歌、俳句、川柳が詠む民主主義」と題して、最初に、「民衆の文学」として初期の作品を、つぎに「生活の記録、感情の詩」としてアメリカの生活を詠み込んだ作品を、最後に「アメリカ民主義 排日からリドレスまで」と題して、作品をいくつか取り上げます。 1. 民衆の文学 俳句や短歌、川柳は日本の「国民の文学」とでもいうべき文学形態で、一般の人々の生活に根ざしていました。当然、アメリカに行っても、生活の一部として作っていたものと考えられます。移民史などの史料を総合しますと、1904年ころには俳句や短歌の会がサンフランシスコ、オークランド、シアトル、ポートランドに生まれています。 サンフランシスコの日本語新聞であった『新世界』では、1906年から紙面がマイクロフィルムで残っています。その文芸欄のようなものを見ますと、下記の作品のようにバカビルという小さな村でも、日本人労働者が集まって同好会をつくり活動していたことがわかります。 ほたる火や 祭過ぎたる 宇治の里     (遊舟 『新世界』1906年7月29日 バカビル通信 懸賞募集俳句 天) 下の句の作者は1903年に渡米した下山逸蒼で、1910年代から30年代にかけてロサンゼルスやサンフランシスコを中心に活動した自由律の俳人です。多数のペンネームを用いて、童謡や短歌なども発表していたようです。 ロビン…

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ドラマ『99年の愛』-学生の反応

(編集者注:本稿は、シアトルで行われた全米日系人博物館による全米カンフェレンス『Speaking Up! Democracy, Justice, Dignity』での日本語セッション「99年の愛/憎しみ(99 Years of Love / Hate)」(2013年7月6日)で発表された原稿です。同セッションの飯野正子先生(作成の背景)、島田法子先生(時代考証)の発表もご覧ください。) 『99年の愛~Japanese Americans~』は、東京ドラマアウォード2011の「単発ドラマ部門」で受賞しました。受賞を記念して再放送も行ったようです。視聴率は、第一夜は12%程度でしたが、徐々に上がって、最終夜は20%に迫り、瞬間最高視聴率は、23.8%。毎回2時間、5夜連続、高い視聴率を獲得するには不利だと思える放映形式ながら、かなり高い視聴率を獲得したといえます。TBSは「TBS開局60周年 5夜連続特別企画 『99年の愛〜JAPANESE AMERICANS〜』最終夜に19.1%の高視聴率を獲得!! 11時間にも及ぶ5日間の平均視聴率も15.4%!!」と総括しました。そして、「テレビ史上かつて例のない規模で放送し、大きな感動を呼んだ」作品であり、「記憶にも記録にも残ることになったこのドラマは、今後のドラマ界の大きな指針になるであろう」と自画自賛しています。 グーグルで「99…

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この筆者が寄稿しているシリーズ