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https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2024/8/16/sukiya/

第21回 安全かつ美味で手軽な日本食提供のゼンショー・ド・ブラジル社

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すき家のロゴマーク

本連載の第21回目は、ゼンショー・ド・ブラジル社の青山昇弘(のりひろ)社長(43、静岡県出身)に話を聞いた。同社が運営するのが、2010年にサンパウロ市の東洋人街に位置するメトロ・サンジョアキン駅側で一号店をオープンしたブラジルの『すき家』である。

オープンから14年、現在はブラジル国内で27店舗に拡大し、牛丼やカレーを中心とする日本を代表する外食チェーンによる食のインフラが構築されている。

すき家の牛丼

「日本の味をそのまま提供」をモットーとするブラジルの『すき家』は、日本のゼンショーホールディングスの直営店である。同社の外食事業はクライアントに「選べる楽しさ」を提供するため、牛丼、寿司、ハンバーグ、うどん、コーヒーショップなど、日本国内で約30のチェーン店ブランドを展開し、すき家はその一つである。

日本の風景が描かれたすき家1号店の店内

外食チェーンでは日本最大、海外店舗数は2024年3月期に1万店舗を超える見込みで、世界の外食業界のチェーン店舗数ではトップ10に入る規模である。

現在、すき家だけで日本国内1900店舗以上、日本の国民食を世界へ広げるべく海外(中国、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、台湾、香港、メキシコなど)では670店舗を展開している(2023年12月末時点)。

青山昇弘社長

青山社長が2003年にゼンショーホールディングスに入社した当時、日本国内のすき家は400店舗ほどだった。当時からゼンショーの創業者である小川賢太郎CEOがフード業界で世界一になることを目指していたが、それが確実に現実となっていくのを見ながら、実際にその成長にも携わってきた。

すき家がまだない地域で出店を広げることなどに興味があったことから、「海外でも日本と同じようにすき家を成長させ、日本食をもっと身近に、気軽に召し上がって楽しんでいただけるお店づくりをしたい」と思いを語る。


より豊富な日本の国民食をメニューに

世界中で、基本的に日本のすき家の味を展開している。ブラジルでは料理を作るスタッフが本来の日本の味を知らないことが多いため、最初に正しい味の確認を日本以上に丁寧に行っている。

 ブラジルでは日本人よりも味の濃いものが好まれる印象があるため、若干濃い目の味付けの商品も用意されている。ブラジルの人に人気があるのは、しめじ牛丼やカツカレー、ブラジルならではのバーベキュー・ベーコン・チーズ丼など、日本の人にはネギ玉牛丼や各種定食が人気だ。

すき家の牛丼(左)とカツカレー

ブラジル店はオープン以来、牛丼に加え、知名度の高い日本食をメニューに揃えることで、まずはすき家に関心を持ってもらうことに努めてきた。日本のすき家にはないラーメンやトンカツの丼物、定食なども主力メニューである。

すき家のネギ玉焼肉丼

毎年、定期的に日本から商品開発者が訪れ、日本で定番の商品とブラジルで需要のある商品を考慮し、現地向けの新メニューの開発が行われている。一昨年には近年のアンガスビーフ人気を受けて、ブラジル産アンガスビーフを100%使用した「焼肉丼」もメニューに加えられた。

日本の料理を通じて様々な食べ方を提案できるように、現在は毎月のキャンペーンメニュー導入と年4回のメニュー更新を行っている。今年2月には新メニューに期間限定「テリヤキ・サーモン丼」、キャンペーンメニューとして「牛丼キング(通常の5倍の肉と3倍のご飯)」と「カレーキング(通常の3倍のカレーと2倍のご飯)」がサービスされる。

商品・外観・内装も含め、多くの人々にもっと日本を体感してもらいたいと、各店舗では日本的なデザインに改装も進めている。

安全安心な食を世界へ

同社のグローバル展開における使命は、世界中の人々に安全でおいしい食を手軽な価格で提供することだ。その活動を通じて世界から飢餓と貧困を撲滅し、人類社会に安定と発展をもたらしていくことを目指している。

全店で仕入から販売まで食の安全や品質に一貫して責任を持つのはブラジルでも同じで、肉の生産工場も常に入念に視察している。

すき家にとって重要な牛肉に関して、ブラジルは生産量が世界第2位、輸出量は世界第1位である。近年は量だけでなく、更に質を上げるために、飼育法にフィードロット(放牧で育成した牛を出荷前に1〜3カ月囲いに入れ、高エネルギー飼料を与えて十分肥育する)やセミフィードロットを取り入れるパッカー(食品包装業者)も増えた。

審査の厳しい海外への輸出に照準を合わせ、ブラジルの生産者の意識も急速に変化しており、トレーサビリティ(生産流通過程の追跡)や牛の品種を重視するようにもなった。「より安全でおいしいもの」を提供できる環境に加え、料理に必要な食材の豊富さ、また人口増加の続くブラジル市場は同社にとっても大きな魅力である。

ゼンショー・ド・ブラジル社の概要
正式名称:Zensho do Brasil Comercio de Alimentos Ltda.
所在地:(事務所)サンパウロ市;(店舗)サンパウロ市、グアルーリョス、サン・ベルナルド・ド・カンポ、モジ・ダス・クルーゼス、サン・ジョゼ・ドス・カンポス
設立年月:2008年8月
従業員数:374人(2023年12月末時点)
事業内容:外食サービス
サイト:https://www.sukiya-brasil.com.br/

 

*本稿は、『ブラジル日報』(2024年2月3日)からの転載です。

 

© 2024 Tomoko Oura

ブラジル 食品 日系企業 すき家(レストラン)
このシリーズについて

パンデミックの厳しい環境の中でも事業を継続してきたブラジルの日系企業。コロナ禍も落ち着き始め、サステナビリティを目標とした新しい価値基準が求められる中、本連載では「ブラジルで活躍する日系企業の今」をご紹介する。ブラジル日本商工会議所協賛企画。『ブラジル日報』からの転載。

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執筆者について

1979年兵庫県生まれ、高校卒業まで神戸市で育つ。大学卒業後、2001年からブラジル・サンパウロ在住。フリーランスで現地の日本人向けマスコミを中心に取材・執筆活動ほか、編集業務に携わっている。

(2023年9月 更新)

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