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https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2015/4/1/washoku-cmpetition-seattle/

海外で認知される日本食 - シアトルで和食コンペ・レベルの高さをアピール

和食ワールドチャレンジ2015シアトル予選で競い合うアーロン・ペイトさん(左)と中島正太さん

テレビなどでも人気を博している料理人たちによる競い合い。シアトルのパイオニアスクエアで2014年12月11日、当地和食料理人による料理コンペティション「和食ワールドチャレンジ2015シアトル予選」があった。近年、世界で広がりを見せる日本料理、またその最前線で腕を振る料理人の熱、思いの一端が込められた行事となった。

日本の農林水産省、日経BP社が主催する同大会は、日本以外の出身地と国籍を持つ日本食料理人がそれぞれのオリジナリティーにあふれる和食を作りあう。欧・米・アジアの3地域から都市を選出、欧州がロンドン、アジアがジャカルタ、米国をシアトルに選定、そこから日本国外出身で同国籍を持たない和食料理人が選ばれた。

アーロン・ペイトさんによる豆乳海鮮しゃぶしゃぶ
中島正太さんによる初雪八寸 

シアトルでの予選は地元シェフや記者ら審査員により選ばれたShiro's Sushiのアーロン・ペイトさん、和食ケータリング「Kappo Kitchen」の中島正太さんの2人によって行われた。

制限時間はそれぞれ30分。3分のプレゼンテーションと地元シェフや記者ら5人による審査員からの10分の質疑応答がある。日本からの最大の日本酒輸出先となる米国での大会だけに「日本酒に合う和食」をテーマにした料理が作られ、盛り付け、料理テーマとの合致度、日本料理への理解、おいしさ、オリジナリティの5項目で競われた。

ハワイ出身で日本でも修行を積んだペイトさんは、海産物をふんだんに使った「豆乳海鮮しゃぶしゃぶ」を紹介。地元出身で同じく日本で修業を積んだ中島さんは「初雪八寸」と題し、地元の季節の食材を選び「和食の色々」を楽しめる料理を作り上げた。

「いただきますデー」と題したイベントには約150人が出席。日本料理への貢献を讃えて両者への表彰も行われた。審査では中島さんがシアトル代表に選ばれ、1月末、京都で開かれる本大会に臨み、他の2都市の代表者と料理を競う。

「やったことのないステップ、これからのキャリアにもつながる」との思いから参加した中島さんは、本大会ではシアトル代表としての期待を一身に背負う。「自分が習ったことを見せたい」と笑顔で意気込みを見せた。ペイトさんも「とても良い経験になりました。成長してまた挑戦したい」と語り、中島さんへエールを送った。

中島さん(右)とペイトさん(左) 


和食のパワー、ローカルでレベル上げる 

大会主催者によると、日本国外にある日本料理店数は約5万5千店に達し、3年間で倍増するなど伸びを見せている。和食が2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されて以来、当地でも和食関連行事が開かれるなど、日本にとっても海外への大きなアピール分野となる。また海外での認知の高まりを受け、日本でも改めて日本食を見直す動きにつながる。

審査員の1人で日経BP社の戸田顕司編集長は「ちゃんとした日本食を伝えている海外の方がいるなかで、埋もれた人材を発掘したい」と語る。成熟しきった地域よりも今後さらに日本食が広がる可能性のある都市を候補先に選定したという。

日本から見ると、シアトルは気候面に加え、港に近いことから食材が豊富なこともあり、日本食が伸びている印象があるという。「特に現地の人が楽しんでおり、日本食の熱はすごいものを感じる」と戸田さんは語る。「日本には知られていない。これだけのパワーがあるのだと知らせるチャンスだと思います」

地域社会に定着し、ユニークさを見出しながら発展してきた好例でもある。当日の審査員の1人で「Sushi Kappo Tamura 田むら」の北村太一さんは、「ローカルな人、米国人が本当の日本食を食べている。米国人のお客さんがシアトルの日本食のレベルを上げている」と当地の食の独自性を強調。旬の食材を使った食事に注目、料理人、客、それぞれの食への貢献を指摘する。

「食の楽しみは人生にとって大きい」と語る中島さんも現在はケータリング業が主だが、将来は自分で店を構えることも目標に置く。「(和食の)新しいものを見せていきたい。キッチンで和食の良さを小さな部分から説明しながら、楽しめるものを作りたいですね」


海外日系人大会でも和食文化に焦点

10月に東京で開催された第55回海外日系人大会は、海外に広まる日本文化をテーマとする中で和食に焦点をあてた。初日の講演会、2日目のオプションツアーでは、日本と海外における日本食事情を紹介する機会となった。

最終日に発表された大会宣言では最初の項目に「日本文化の継承に努めている私たちは、なかでも海外で受け入れられ進化を続ける和食文化を誇りに、創造性を磨いていきます」と言及。

「食べ慣れた日本食(和食)は忘れられない故郷の味です。海外移住者の生活の中で食事は最大の関心事の一つです。移住の先人は日本の食材を手に入れるのに苦労し、工夫を重ねて日本食を再現してきました。しかし徐々に移住先の人たちの興味を集め、日本食が日本文化を理解してもらう優れたツールとなりました。現在『日本料理』は違和感なく受け入れられ世界各地で高く評価されています。

私たち海外日系人の立場は、移住の過程で培われてきた『日本料理』を日本の和食に近づけようとするものでは必ずしもありません。むしろ『日本料理』が、日々の食事のなかでさまざまな工夫を施されながら、地元に定着し、日本祭りや家庭でのお祝いの場を通じ日本文化の理解・普及に役立ってきたことをアピールすることです。昨年、日本食文化がユネスコの無形文化遺産に登録されたことは、海外に住む私たちにとっても誇りとなりました。私たちは『和食』の文化を尊重し活かしながら、それぞれの国での日本食の発展に反映された創造力をこれからも発揮していきます」と記されている。

ワールド和食チャレンジ2015のシアトル予選の審査委員と出場者

編注:
和食ワールドチャレンジ2015の決勝大会へは、資格の関係でShiro's Sushiのアーロン・ペイトさんが出場した。

* 本稿は、2015年1月1日『北米報知』(Vol. 70, issue 1&2)からの転載になります。写真提供:http://suzi-pratt.com

 

© 2015 The North American post

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執筆者について

北米報知』は米ワシントン州シアトルで発行されている邦字新聞。ノースウエスト地域の日系コミュニティーを広くカバー、同地域の邦字新聞として最古の歴史を誇る。現在は日本語、英語のバイリンガル紙として週刊で発行。日本語情報誌の姉妹紙『ソイソース』も発行。
(2014年12月 更新)

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