僕の出生証明書にはJimmy Seiji(ジミーセイジ)と記載されています。多くの友人から、「君の名前はジミーなのかそれともハイメなのか」と聞かれるのですが、僕は「俺の名前はジミーで、出生証明書がそうなってるんだ!」と答えてきました。
両親に自分の名前についてその由来について聞いたことがあります。僕が生まれたとき、両親はとにかく僕が無事に産まれてくれるかどうかが心配で、名前を事前に考える余裕があまりなかったそうです。僕が産まれたとき、どんな名前をつけるか考えてなかったので、他でもなく名付け親(パドリーノ)たちに何か「いい名前」はないかと聞いたそうです。するとパドリーノは、アメリカ合衆国大統領だったジミー・カーター(Jimmy Carter)の名前にちなんでジミーといういう名を提案したらしいのです。
ただ皮肉にも、笑い話にもなるのですが、当時の大統領はカーターではなくて、ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)でした。まあロナルドが親の好みではなかったのか、僕も後から気に入っていたかは分かりませんが、本来ならば、ロナルド・アメミアになっていてもおかしくなかったのです。
ファーストネームにはこうした経緯があったのですが、もっとおもしろいのはミドルネームであるセイジの由来です。
これは、祖父母が、僕が産まれたときに付けてくれた名前です。祖父のことは記憶にないのですが、この名前を選んでくれたことをとてもありがたく思っています。このセイジという名前は現在ほとんと使っていないのですが。両親によると、僕が産まれたとき、祖父はすでにかなり高齢で、この名前をつけてくれた後、病気になり亡くなりました。祖父母が選んだ名前を両親に伝えたのを最後に、祖父は外出できなくなったようです。
数年前のことですが、この日本名についてどのような意味があるのか調べてみました。僕は日本語がほとんど理解できないので、辞書でちょっと調べてみたのです。予想に反し僕の名前は、政治または政府の意味を持っているということに少し驚きを感じました。この漢字が私の名前と同じかは分かりませんが。でも、僕のこれまで生きてきた環境や学校、職場等は政治とはまったく関係がなく、自分自身も政治のことは好きではありません。人間関係も、裏表のない、プラグマチックで直接的なのが好きなのです。
祖父母がこの名前を選んだのは、僕のファーストネームがアメリカの政治家の名前にちなんだものだったからかもしれません。そして、その名前の意味が一人の人間の性格や将来にも影響するというのであれば、僕のセイジはリーダーシップということと関連していることは否定できません。大学ではとても活発に行動していますが、国レベルの政治はとても嫌で、僕は関わりたくはありません。
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このエッセイは、「ニッケイ人の名前」シリーズの編集委員によるお気に入り作品に選ばれました。こちらが編集委員のコメントです。
ハビエル・ガルシアさんからのコメント
サントス池田吉川さんの「出稼ぎとしての体験」では、同氏の身分上の書類問題を物語っておりそれが日系人にとってどれだけ多くの民事上の問題を起こし、そのことがいかに精神的または社会的なトラウマになるかを指摘しています。しかし、ジミーセイジさんのエッセイは、本件シリーズの趣旨にもっとも近く、名前を付ける際いかにそれが自分の文化や、アイデンティティに関わる理由やそのときの状況等、そして家族の背景が影響するかを述べています。先祖の思いや自分のルーツも考察しており、月日が経っても、世代交代が進んでもいかに名前を付けるというのは非常に重要なことであることを、自分の体験にもとづいて描いているのがよかったです。
アルベルト・松本さんからのコメント
日本人一世は、子供たちの名前を付ける際その漢字で様々な思いや期待を込めています。先祖の名前の一文字や何らかの重要な出来事、有名人の名前に由来して付けることも多いのです。今回のSEIJIも多分祖父母の思いが込められており、政治の“政治”とは限りません。
余談ですが、アルゼンチンのような国では法律によって外国人名を付けられないことになっており名字のみが許されています。日系人の中には、そうした日本語名がついていることで恥ずかしいと思ったこともあるかもしれないが、でも祖父母や両親の強い思いが反映されておりそして公式な出生証明書にも記載されていることはすばらしいことなのです。
著者もこうした歴史的背景を思い出し、まだその名前の漢字がどれなのか分かってなくても、彼がこのことを思い出すことで祖先やルーツを再確認しているのです。大統領にならなくとも、家族か付けてくれた名前に恥じない生き方をしていれば、その祖父母もきっと彼を誇りに思っているに違いない。
© 2014 Jimmy Seiji Amemiya Siu
ニマ会によるお気に入り
特別企画「ニッケイ物語」シリーズへの投稿文は、コミュニティによるお気に入り投票の対象作品でした。投票してくださったみなさん、ありがとうございました。
