ニッケイとして育つ:私の中の日本

ニッケイ物語 #12
ニッケイとして育つ:私の中の日本

「ニッケイとして育つ:私の中の日本」をテーマとしたニッケイ物語12は、参加者のみなさんに次の3つを含むいくつかの質問を投げかけ、今回のテーマについて思いを巡らしていただきました。「どのようなニッケイコミュニティのイベントに参加したことがありますか?」、「どのようなニッケイの食にまつわる幼少期のエピソードがありますか?」、「子供の頃、どうやって日本語を学びましたか?」

ディスカバー・ニッケイでは、2023年6月から10月までニッケイ物語への投稿を受け付け、11月30日にお気に入り作品への読者投票を締め切りました。今回、ブラジル、ペルー、米国から合計14編(英語7編、スペイン語3編、ポルトガル語5編、日本語0編)の作品が寄せられ、そのうち1編は複数言語で投稿されました。

「ニッケイとして育つ:私の中の日本」に投稿してくださったみなさん、どうもありがとうございました!

ディスカバー・ニッケイでは、編集委員によってお気に入り作品を選出してもらいました。また、ニマ会コミュニティにもお気に入り作品に投票していただきました。今回選出された作品は、次の通りです。


編集委員によるお気に入り

英語 | スペイン語 | ポルトガル語

英語:

  • アルバカーキの子ども時代
    エドナ・ホリウチ

    オールデン・M・ハヤシさんのコメント
    「ニッケイとして育つ:私の中の日本」をテーマとしたエッセイは、全てとてもよく書かれていました。感動的で心に残る思い出で満たされたもの、美しく素敵に書かれたもの、また中には辛辣で悲痛なものもありました。英語作品の中で私が個人的に好きだったのは、エドナ・ホリウチさんの「アルバカーキの子ども時代」でした。エドナの両親のように、私の両親も二人ともハワイ育ちだったので、このエッセイは私の心に本当に響きました。しかし、本土に移住したエドナの両親とは違い、私の両親は地元で家庭を持ちました。自分の両親が、どんな理由であれ本土に移住していたら、私の人生はどんなに違っていただろうかと、彼女の思慮深く示唆に富むエッセイを読みながら、考えずにはいられませんでした。

    エドナは、ハワイを離れた別の人生の詳細を、たっぷりと見せてくれました。(弟が入学するまで)小学校では唯一のニッケイ生徒だったこと、クラスメイトから鬱陶しい質問(床で寝て、低いテーブルで食事しているの?)をされたこと、醤油や味噌などの食品をまとめ買いするために、町の反対側にある小さな日系の商店まで行かなければならなかったこと、お正月を家族同様に付き合っていた人たちと祝ったこと。私は特に、彼女が家族旅行でホノルルへ行き、アラモアナ・ショッピングセンターを訪れた思い出に心を動かされました。そこで彼女は、混み合う野外モールでショッピングに繰り出す大勢のアジア系の人たちに驚嘆していました。私は、そこにいた多くのアジア系のひとりだったかもしれません。エドナの明快かつ鮮やかな筆跡は私に、他の人の視点でその日の自分自身を見ていたら、どんな感じだっただろうかと思わせるのです。

スペイン語:

  • 人生の秋
    ロベルト・オオシロ・テルヤ

    ハルミ・ナコ・フエンテスさんのコメント
    日系人として育ち、継承してきたものはどのような意味を持つのでしょうか?この答えは一つではありません。世界中の日系人にとって自分のルーツとのつながりは千差万別であって、今回の各エッセイが示しているようにその多様性はとても豊かです。幼少期の体験や、芸術による様々な学び等、そして自分のアイデンティティーに対する発見と再発見についても描かれています。

    今回選んだ「人生の秋」という作品は、その家族の伝統やしきたりが垣間見られますが、そこには悲しみも希望もあり、この家族だけのことであってもやはり多くの日系人がそれに共感すると思われます。

    この物語を読んで著者も指摘しているように、私も「懐かしい」と思いました。自分の過去の体験を忘れないために遠い記憶をたどり、読者と共有しているのです。だから読んでいて感動しましたし、ノスタルジックな気持ちになったのでしょう。60歳は人生の秋とよく言われますが、思い出や過去が蘇ることで春にもなりえます。その物語の特徴などは日系コミュニティーの大事な記憶をもっと豊かにしてくれます。

ポルトガル語:

  • ありがたい!!!
    エドナ・ヒロミ・オギハラ・カルドゾ

    ラウラ・ホンダ=ハセガワさんのコメント
    「ニッケイとして育つ」に参加したのは、5人の日系ブラジル人女性でした。彼女たちは日頃から日本文化や伝統が自分たちの人生に与えた影響を感じており、日系人としてのアイデンティティについての思いや、認識、疑問などを、エッセイを通じ見事に表現していました。これらのエッセイには、インパクトのあるものや、興味深いエピソードに富んだものなどがあり、お気に入り作品を選ぶのは至難の業でした。しかし、今回のテーマに一番ふさわしいものとして、「ありがたい!!!」をお気に入り作品に選ばせてもらいました。

    著者のエドナ・ヒロミ・オギハラ・カルドゾさんは子どもの頃から日本の料理、会話、漫画、雑誌、そして芸術などに触れ、コミュニティのイベントにも参加してきました。受け継いだ日本の文化や伝統を、二十代の娘さんと分かち合いながら、恵まれた環境を「ありがたい」と、家族と共に感謝しています。


「ニッケイとして育つ」シリーズへの他の投稿作品を読む >>

「ニッケイとして育つ」シリーズへの投稿は締め切りましたが、ディスカバー・ニッケイのジャーナルセクションへの投稿は引き続き受け付けています。ジャーナルの投稿ガイドラインに従って、あなたのストーリーをお寄せください。


編集委員

編集委員の皆さんのご協力に、心より感謝申し上げます。

  • 日本語
    エミリー・アンダーソン: 全米日系人博物館プロジェクト・キュレーター、専門は近代日本史。2010年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で近代日本史の博士号を取得後、2010年から2014年までワシントン州立大学(ワシントン州プルマン)で助教として日本史を教え、2014年にはオークランド大学で博士研究員を務めた。著書には『Christianity in Modern Japan: Empire for God』(2014年、ブルームスベリー)があり、『Belief and Practice in Imperial Japan and Colonial Korea』(2017年、パルグレイブ・マクミラン)の編集を手掛けた他、日本および太平洋地域における宗教と帝国主義に関する多くの記事や本の章を執筆した。展覧会の企画者としても幅広い経験を持ち、「Boyle Heights: Power of Place」(2002―2003年、全米日系人博物館)、「Cannibals: Myth and Reality」(2015年―、サンディエゴ人類博物館)、「Sutra and Bible: Faith and Japanese American World War II Incarceration」(2022―2023年、全米日系人博物館)などのキュレーターを務めた。

  • 英語
    オールデン・M・ハヤシ: ホノルル出身の日系3世で現在はボストン在住。30年以上にわたり科学、技術、ビジネスの分野で執筆を行っていたが、近年は日系人の体験を保持するため、フィクション小説の執筆を始めた。処女作は、2021年にBlack Rose Writingから出版された「Two Nails, One Love」。オールデンの公式サイトはこちら

  • スペイン語
    ハルミ・ナコ・フエンテス: ソーシャルコミュニケーター。リマ大学でジャーナリストを専攻。教職、メディアアナリスト、様々な出版物へ執筆または編集者など、公的・私的機関で働いた経験を持つ。ブランドイメージやマーケティングにおける特殊コースを取得し、文化マネージメントにおける学位を持っている。現在は、ペルー日系人協会(APJ)のコミュニケーション部門の部長を務め、会誌「KAIKAN」の編集者及びAPJ編集基金の編集理事のメンバーでもある。

  • ポルトガル語
    ラウラ・ホンダ=ハセガワ: 1947年サンパウロ生まれ。2009年まで教育の分野に携わる。以後、執筆活動に専念。エッセイ、短編小説、小説などを日系人の視点から描く。子どものころ、母親が話してくれた日本の童話、中学生のころ読んだ「少女クラブ」、小津監督の数々の映画を見て、日本文化への憧れを育んだ。

コミュニティパートナー

  • ペルー日系人協会

  • ペルー日系人協会 ペルー日系人協会(APJ—Asociación Peruano Japonesa)は、ペルーの日系社会とその関係機関を代表する非営利団体。1917年11月3日に設立されたAPJは、日本人移民とその子孫の記憶を保存し、文化振興と福祉支援の活動を展開する他、教育と保健サービスの提供を行っている。また、ペルーと日本の文化、科学、技術交流を促進し、両国の友好関係を強化するための活動も行っている。
  • オレゴン日系アメリカ人博物館

  • オレゴン日系アメリカ人博物館 オレゴン日系アメリカ人博物館(Japanese American Museum of Oregon)は、太平洋岸北西部の日系アメリカ人の歴史と文化を保存して称え、第二次世界大戦中の日系人の経験について広く市民を教育し、すべてのアメリカ人の公民権保護を提唱することを使命としています。オレゴン日系レガシーセンターを前身とする本博物館は、文化とリサーチの場であり、オレゴンの多文化コミュニティにおけるニッケイの経験と役割を探求するための極めて貴重な資源でもあります。常設展示スペースでは、移民としてやってきた一世や、オレゴンの日本町での初期の暮らし、第二次世界大戦から現在までのニッケイ人の経験や生活を紹介しています。
  • 日系文化会館

  • 日系文化会館 1963年設立の日系文化会館(JCCC)は、日系カナダ人特有の文化と歴史、遺産を、すべてのカナダ人の利益のために称える非営利団体であり、ニッケイ社会の歴史と国づくりへの貢献に敬意を表しています。多文化センターであるJCCCは、有意義かつ活気あるコミュニティ機関として世界中で知られており、現在5,200人に上る会員の約半数を非日系人が占めています。JCCCで開催されるフェスティバルやコンサート、武道トーナメントや特別イベントには年間21万人以上が訪れ、主催イベントであるディスカバージャパン教育プログラムには年間15,000人の児童が参加しています。JCCCは、天皇皇后両陛下、高円宮妃殿下をはじめ、多くの来賓や要人をお迎えしています。

今シリーズのロゴをデザインしてくれたジェイ・ホリノウチさん、提出原稿の校正、編集、掲載、当企画の宣伝活動などをサポートしてくださっている素晴らしいボランティアの方々や協力団体の方々のご尽力に感謝いたします。本当にどうもありがとうございます!

免責条項:提出された作品(画像なども含む)に関しては、DiscoverNikkei.org および本企画と連携する他の出版物(電子または印刷)に掲載・出版する権利を、ディスカバー・ニッケイおよび全米日系人博物館に許諾することになります。これにはディスカバー・ニッケイによる翻訳文書も含まれます。ただし、著作権がディスカバーニッケイへ譲渡することはありません。詳しくは、ディスカバーニッケイの利用規約 または プライバシー・ポリシーをご参照ください。