DC・ポーター
(DC Palter)
ポーターDCは、ハイテク起業家、投資家。『Colloquial Kansai Japanese』(関西弁を学ぶ本)の著者、Japonica(日本文化雑誌)のエディター。サンノゼの日本町を舞台にした彼の初の小説『To Kill a Unicorn』は、2023年アメリカン・フィクション・アワードのベスト・ミステリーとベスト・デビュー小説のファイナリストに選ばれた。続編の『Countdown to Decryption』は、6月下旬に出版予定。現在はロサンゼルス郊外のマービスタ在住。
(2024年5月 更新)
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第10回 イマジン・リトル東京ショートストーリー・コンテスト
ダンディライオンの最後の日々
2023年5月28日 • DC・ポーター
賑やかな寿司屋と明るい照明のお土産屋の上の2階にある「ザ・ダンディ・ライオン」は、見逃しやすい場所だった。階段の唯一の目印は、入り口の上に揺れる木彫りの看板だけだった。店名を囲んでいた黄色いタンポポは、ずっと前に剥がれ落ちていた。雨から中に入って、ぐらぐらする階段を上る前に傘を振った。金属の柵のドアを開けるとすぐに、京子ちゃんが「いらっしゃいませ」と挨拶した。中は、煮えたぎるスープ、豚の脂、朽ちかけた木の匂いで熱気を帯び、子供の頃の家を思い出させた。 「おい、小野君」巨大な…