村川 庸子
(むらかわ・ようこ)
敬愛大学国際学部教授。津田塾大学国際関係学研究科博士課程修了。学術博士(国際関係学)。専門は日米関係史、日米比較文化論、日系アメリカ人史。主要著書・論文:『アメリカの風が吹いた村』(愛媛県文化振興財団、1987年)、「境界線上の市民権」『移民研究年報』第7号(2001年)『境界線上の市民権.日米戦争と日系アメリカ人』(御茶の水書房、2006年)祖父母が戦前にアリゾナにいたことから、日系アメリカ人の歴史に興味を持つ。
(2010年9月 更新)
この執筆者によるストーリー
「北針」研究会
2010年10月7日 • 村川 庸子
大正初年、現在の愛媛県八幡浜市から近海漁業用の船でアメリカへの密航を図った人びとがいた。外務省外交史料館所蔵の「本邦人海外へ密航関係雑件」綴の中に米国移民局における取調調書や、サンフランシスコ総領事館から外務大臣に宛てた報告書、現地の新聞の切り抜き、船や乗組員の写真が残されていた。生命の危険をおかす特殊な形の移民だけに、背景にはよほど強い移民送出の要因があるに違いない。数年がかりの愛媛での現地調査を踏まえて、1987年に『アメリカの風が吹いた村:打瀬船物語』を上梓した。 外…
シアトル・タコマ今昔
2010年10月1日 • 村川 庸子
シアトルとタコマはアメリカ西北部に位置するワシントン州の、州内第一・第三の都市である(州都はオリンピア)。シアトルはイチロー、マイクロソフト、スターバックスなどで日本にも馴染みが深く観光客も多い。アメリカでも一、二といわれる良港をもつタコマと共に、初期の日本人移民が多く移り住んだ地域でもあった。両市共に天然資源に恵まれ、19世紀半ばからは製材所が林立し、1887年のアラスカのクロンダイクのゴールドラッシュで人口は急増し、鉄道交通や東洋貿易で潤った。その後も第一次世界大戦を絶…
アメリカの戦後補償(リドレス)
2010年9月17日 • 村川 庸子
1988年8月10日、レーガン大統領が市民の自由法(Civil Liberties Act of 1988)に署名した。日米戦争中に強制立ち退き・収容された日本人移民および日系アメリカ人に対し公式に謝罪し、各自に2万ドルを支払うというものであった。軍事的必要性と日系アメリカ人の保護を名目とした強制収容が、実はアメリカが掲げる自由と公正の侵害であったと公式に認められた日であった。リドレス(redress)という耳慣れない言葉が使われた。金銭による補償(reparation/c…