第1回 日本人のオアシスとして
「ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく」
石川啄木の有名なこの歌は、1908年東京へ出てきた啄木が、懐かしいふるさとの言葉を聴きに、東北から人びとが集まってくる上野駅へ足を運んだという、寂しい気持ちをあらわしている。
これをもじって、1980年代のニューヨークでは、在留日本人のなかで「ふるさとの 訛り懐かし エンパイアステートビル」とよく言われていたとかつてきいたことがある。当時のニューヨーク観光のシンボルでもあるエンパイアステートビルは、それほど多くの日本人観光客でにぎわっていたということだが、同時に日本語が恋しくなったらそこに行けばいいという意味もあったようだ。
日本国内ですら…