第五章 戦後の新たな出発:1945年以降(1)
そうです。青木祥子さんが前号(「子どもと本」第136号)の表紙に書かれたように、収容所を出た日系人は、長い間、負った傷をだれにも話さずに来ました。日系人には何の落ち度もなかったのですが、収容所に入れられたことで、何か自分たちに落ち度があったのかも知れないとの恥や罪の思い。話すことによって、心の底に埋めた怒りや痛みが吹き出してくることへの不安。済んだことは済んだこと、しかたがなかったとの諦め。子どもに食べさせるだけで精一杯で、他のことは考えられなかった日々。
ワシントン大学のテツデン・カシマ教授はこのような思いを「社会的記憶喪失」と呼び、次のように説明を続けます。精神的な病ではなく、集団で、あ…