移民は誇れるものが常に必要であるアメリカや南米諸国は、19世紀末から20世紀初頭に多くの欧州移民を受入れることで、国づくりをした。当時の世界情勢とヨーロッパ諸国の行き詰まった状況、そして新大陸の大量の人手不足が海外移民を促進させたのである。
筆者の生まれ育ったアルゼンチンも、その期間約50年の間に600万人という外国人を受入れ、その半分が実際に定着し、国の土台となった。当初は他 の国と同様、非常に徹底した同化政策が取られ義務教育と兵役義務によって、ナショナル・アイデンティティというものが形成された。当然、これらが行き過ぎ た時期もあり、隣国との紛争や領土問題が多発し、今もそうした課題が未解決状態にある国がこの地域にもたくさんある。
肝心の移民は、生きるためにひたすら働き、送金をして家族を養った。はじめは出稼ぎであっても次第に家族を呼び寄せ、又は移民先で家庭を築き、自身 の道を切り開くようになった。移民の一世代目は祖国が恋しく、祖国への思いが強い。海外に移民した日本人と同様に母語継承の学校をつくったり、同胞の会 (県人会のような出身地や州別の会もある)を形成したり、自分たちの文化的アイデンティティ維持に努める。いかなる状況の中で移民していても、多くの場 合、自身の国を誇りに思い、そのプライドを支えに苦難を乗り越える。そして移民の二世代目になると、移住先の国の教育を受け、新し…