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日本人移民を授業で教えることへの取り組み

「グローバル化」や「ディアスポラ」といった言葉が使われるようになって久しいが、そうした枠組みの中で日本人移民について学校教育ではどのように 教えられているのか。私自身日系アメリカ人研究に携わり、アメリカ社会の中で彼らがどのように位置づけられてきたのか、そしてそれは教科書の中でどのよう に反映されているのかといったことへの興味を持っていた。そして、大学でアメリカ史やアメリカ文化を教えるようになって日系アメリカ人を授業の中でどのよ うに取り込めばよいのかということに関心を持つようになった。2006年及び2007年の夏に、日本の各学校レベル(小学校から大学まで)での日本人移民 教育への取り組みについての日本移民学会主催のワークショップに参加する機会を得た。ここでは、ワークショップおよび私の日本人移民の授業への取り組みに ついての雑感を述べたい。

ワークショップを通してまず感じたことは、日本人移民について生徒や学生はほとんど知識がないこと、そしてそれをふまえたうえで各教育現場において 何とか日本人移民を自分たちとはかけ離れた存在ではなく、つながりのあるもの、関係のあるものとして教えていこうという姿勢である。従来の教科書などでは あまり取り上げてこられなかった日本人移民というテーマにもかかわらず、教育の場で工夫をこらし、わかりやすい学習活動を目指している。その根底には、多 様化する日本社会において生徒や学生たちの視野を広め、異なる文化に対する理解や自分たちと異なる人たちの受容の重要性を伝えようとしていることがわか る。

この夏JICA横浜の海外移住資料館で開かれたワークショップでは、日本の外国人登録者数が208万人(2006年末現在)にものぼる状況下で多文 化共生に向けて行動できる市民の育成、移民教育の重要性が訴えられた。移民教育の教材開発として、「グローバル教育と多文化教育をつなぐ」「多文化社会の シティズンシップを育てる」「国際理解教育における本質主義を乗り越える」を考慮して収集した移民の生活用品をつめた「ニッケイ移民トランク」が作られて いる。この教材は実際にモノに触れ、体感することで理解を促そうとしている。(1)具体的な教育実践例として、ハワイの盆ダンス、 写真を通して見るハワイのベントウ、演劇、レシテーション、携帯電話を使っての日系カルタの作成などが紹介された。小学校、中学校、高校などでそれぞれ実 際に行われていることであるが、どれも生徒が身体を動かし、ある意味追体験することで移民についての理解を深めるという点で共通していた。私は写真を通し て見るハワイのベントウの模擬授業に参加してみた。ハワイで食べられているものを通して多様な人種・民族が共生している多文化社会を知るというものであ る。日本の照り焼き、韓国の焼肉、ハワイ先住民のロミロミ・サーモン、フィリピンの炒め煮料理アドボ、さらにはハワイで発展したロコモコやスパムむすびな どの写真を短時間見てそれぞれの絵や文字をワークシートに書き込むという作業をした。(2)豊かな食文化を持つ多様な民族がハワイ にいること、そして彼らの文化が取り込まれてハワイ独自の文化が出来上がっていることを楽しみながら理解していく過程を実感した。さらには「ミックス・プ レート」と呼ばれる様々な民族の食べ物が一つの皿にならぶ料理ができるに至ったハワイにおける移民の歴史を知ることにもつながっていくことがわかりやすく 説明されていた。短時間の模擬授業にもかかわらず、非常に中身が濃く、食べ物という身近なものを通しての異文化理解することの楽しさを私自身感じた。模擬 授業を一つしか体験できなかったが、各ワークショップからの報告を聞くと、どの模擬授業でも楽しみながら何らかの作業を通して移民の体験を理解していくも のであった。さらには、こうした教育実践は海外移住資料館などの博物館の活用で、より広がりのある学習の可能性を示していた。

昨年のワークショップでは大学の授業で移民をどのように教えるかということがテーマになっていたが、ここでも移民を自分たちの生活に身近な存在とし て捉えることに重点が置かれていた。ビデオやインターネットを使用しており、大学レベルでも体感することで理解につながることが示されていた。ただし、学 生の関心が内向化し、実学重視になっており、移民を今現在自分たちの身の回りで起きていることとして理解させることの難しさも指摘された。しかし、現実に は移民事象は日本でも起こっていることであり、異文化理解、多文化共生を理解するうえで重要なテーマとなっている。

私自身の日本人移民の授業を振り返ると、上記のワークショップで指摘されていることが多く思い当たる。アメリカ史やアメリカ文化(各四単位)の授業 で日本人移民を教える時間は二~三時間であるが、その中で日系人の体験を記した史料を読んだり、ビデオを見せたりしている。学生たちの感想やレポートを読 むと、今まで日系人の存在そのものを知らなかったことや戦時中の強制立ち退きや人種差別に対する驚きや怒りなどが記されたものが多い。日系人に対する理解 や共感の現われであろう。その一方で、それらはアメリカという海の向こうの出来事として捉えられており、海外から多様な文化的背景を持つ人が増加しつつあ る日本での差別や偏見といった問題にはあまり結びついていないように思われる。しかし、「近くの農家の働き手が中国やモンゴルからやってきている」、 「スーパーのレジの人の多くが外国人である」、「日本は昔から海外の文化を上手に取り入れており、外国人が増えてもうまくやっていけると思う」といった多 様な人びとの存在への気づきや共生への可能性を感じている学生もいる。海外の日本人移民をテーマにするときに、学生たちが日常生活で感じていることを活用 し、日本国内の多文化的状況との関連をうまく授業で取り込まなければならないと感じている。海外と日本の状況との比較の視点、日本から出て行くだけでなく 日本に入ってくる人びとへの理解など移民研究の可能性を感じるとともに、移民研究の利点を授業に反映させなければならないと考えている。

注釈:
(1) 森茂岳雄、中山京子「移民学習の視点と教材開発」2007年日本移民学会ワークショップ配布資料 2007年8月5日。
(2) 織田雪絵「日系移民をテーマにした国際理解教育の単元開発と実践(3)-中学校選択社会で多文化共生社会を考える-」2007年日本移民学会ワークショップ配布資料 2007年8月5日。

* 本稿は、移民研究会(ディスカバー・ニッケイの協賛団体)が協賛団体の活動のひとつとして、当サイトへ寄稿したものです。

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