ディスカバー・ニッケイ

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シアトル・宇和島屋物語 ~ The Uwajimaya Story


2017年12月8日 - 2018年10月12日

アメリカ・ワシントン州シアトルを拠点に店舗を展開、いまや知らない人はいない食品スーパーマーケットの「Uwajimaya(宇和島屋)」。1928(昭和3)年に家族経営の小さな店としてはじまり2018年には創業90周年を迎える。かつてあった多くの日系の商店が時代とともに姿を消してきたなかで、モリグチ・ファミリーの結束によって継続、発展してきたその歴史と秘訣を探る。

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家族 食料品店 モリグチ家 シアトル 宇和島屋(食料品店) ワシントン

このシリーズのストーリー

第9回 だんだん畑の集落から大志をもって

2018年4月13日 • 川井 龍介

四国・愛媛県の西部、宇和海に面した八幡浜市。南北に走る国道378号を南に下っていくと、やがて西に折れて、その行きつく先が小さな舌間湾になる。ここで国道は海岸線に沿ってカーブを描きながら南へとつづく。 右手には穏やかな宇和海が見え隠れし、左手には家が立ち並んでいるが、その裏手はすぐに斜面になっていてだんだん畑が広がっている。のどかな海と山の間をゆくこの道は、近年サイクリングロードとしても人気があるようだ。  愛媛といえばみかんだが、だんだん畑のなかには山の上まで農道が走り…

第8回 成功者のあとを追って

2018年3月23日 • 川井 龍介

宇和島屋(Uwajimaya)を立ち上げた森口富士松は、そもそもなぜアメリカにわたったのか、なにかきっかけがあったのか、具体的なことはわかっていない。しかし、彼が生まれ育ち、また修行をしたという愛媛県の西南部の当時の環境とは無関係ではないだろう。 富士松の生まれた西宇和郡川上村を含む地域(現在の八幡浜市)の周辺では、明治時代からアメリカへの移民熱・渡航熱が高まり、時には命懸けでアメリカへわたった男たちが数多くいた。ある時は漁に使われた打瀬船と呼ばれた帆掛け船で、太平洋横断…

第7回 日本・愛媛・西宇和郡

2018年3月9日 • 川井 龍介

明治時代になって日本が開国すると、堰を切ったように日本人の海外への渡航がはじまる。勉学のため、生活のため、あるいは一獲千金を夢見てアメリカ、カナダ、ブラジル、メキシコ、ペルー、オーストラリア、東南アジアなど、さまざまな国へと人々は出て行った。 アメリカ、ハワイへの渡航をみると、江戸時代末期に漂流の果てなどに偶然アメリカで暮らすことになった例としては、有名なジョン・万次郎やジョセフ彦蔵がいる。明治元年(1868年)にはハワイのサトウキビ農場で働くために153人が集団で移住し…

第6回 ルーツの宇和島市、八幡浜市

2018年2月23日 • 川井 龍介

シアトルのUwajiamaya(宇和島屋)の店名は、愛媛県の西南部に位置する宇和島市の「宇和島」から由来する。Uwajiamaya創業者、森口富士松はこの宇和島市より車で北に約40キロのところに位置する同県西宇和郡川上村(現在の八幡浜市川上町)の出身だが、大正時代の若いころ宇和島で水産加工の仕事についていたため、宇和島の名前を屋号にしたのだった。 どういういきさつで、富士松が宇和島に修行にでたのかは、はっきりしないが、その当時、宇和島がかまぼこやじゃこ天などの水産加工品で…

第5回 90年の歴史をふりかえる

2018年2月9日 • 川井 龍介

四国・愛媛県にルーツのあるモリグチ家が経営してきたUwajimaya(宇和島屋)は、昨年、創業者である森口富士松の孫にあたるデニス・モリグチがCEOとなり、新たな一歩を踏み出した。 Uwajimayaは、これまでシアトル店をはじめとする4店舗を展開してきたが、これに加えて昨春にはシアトルの中心部から3キロほど北に位置するサウス・レイクユニオン地区のオフィスビルのなかに「カイ・マーケット(Kai Market)」という店舗をオープンした。 また、同じく昨春インターナショナ…

第4回 日本から研究の対象にも

2018年1月26日 • 川井 龍介

小さな食料品店から出発して90年の歴史をもつシアトルの食品スーパーUwajimaya(宇和島屋)は、愛媛県にルーツをもつモリグチ・ファミリーによって経営されてきた。日系で、かつ一貫したファミリー経営で成功したUwajimayaについて、地元メディアではしばしばとりあげられるが、その成功、発展の理由などについては、日本の大学からも注目されいま調査・研究の対象となっている。 取り組んでいるのは愛媛大学の地域創成研究センター、法文学部人文社会学科の佐藤亮子准教授を代表とするグル…

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このシリーズの執筆者

ジャーナリスト、ノンフィクションライター。神奈川県出身。慶応大学法学部卒、毎日新聞記者を経て独立。著書に「大和コロニー フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)などがある。日系アメリカ文学の金字塔「ノーノー・ボーイ」(同)を翻訳。「大和コロニー」の英語版「Yamato Colony」は、「the 2021 Harry T. and Harriette V. Moore Award for the best book on ethnic groups or social issues from the Florida Historical Society.」を受賞。

(2021年11月 更新)