ディスカバー・ニッケイ

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シアトル・宇和島屋物語 ~ The Uwajimaya Story


2017年12月8日 - 2018年10月12日

アメリカ・ワシントン州シアトルを拠点に店舗を展開、いまや知らない人はいない食品スーパーマーケットの「Uwajimaya(宇和島屋)」。1928(昭和3)年に家族経営の小さな店としてはじまり2018年には創業90周年を迎える。かつてあった多くの日系の商店が時代とともに姿を消してきたなかで、モリグチ・ファミリーの結束によって継続、発展してきたその歴史と秘訣を探る。

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シアトル ワシントン 宇和島屋(食料品店) モリグチ家 家族 食料品店

このシリーズのストーリー

第15回 復興と日本に戻った長女

2018年7月13日 • 川井 龍介

「米國日系人百年史」(新日米新聞社、1961年)によれば、シアトルでは戦後、まちに帰還した一世たちが競うようにしてホテル、アパートやオフィスビルを購入し、従来のリースによる事業を別の形で発展させた。日系人によるさまざまな商売や事業も復活してきた。 1948年末までの市内の日系の事業者を種別にみると以下の通りである。 団体5、教会16、医院・歯科医眼鏡医・治療院19、事務所・新聞社30、貿易商9、食料品卸商5、商店8、家具・器具・金物店10、醤油製造・豆腐店・魚店10…

第14回 戦後、シアトルで店を再開  

2018年6月22日 • 川井 龍介

戦時中、10ヵ所に設けられた日系人収容所のなかで、カリフォルニアのトゥーリレイク(Tule Lake)収容所には、地理的な理由から当初収容された日系人に加えて、アメリカに対して忠誠心がないとされた人たちがその後集められた。一方で政府によって忠誠心があるとされたものは他の収容所に転出して行った。 忠誠、不忠誠の問題は、一個人としても割り切れない人は多く、また外部からそれを見極めるのは簡単ではなかった。モリグチ一家はタコマに住んでいたのでトゥーリレイクに入ることになったが、そ…

第13回 開戦、そして収容所へ

2018年6月8日 • 川井 龍介

三人の子供を抱えて、森口富士松、貞子夫妻が切り盛りする宇和島屋には、商店ということもあって、いつも日本人が出入りしていた。子供たちはこうした大人たちにかわいがられ、面倒をみてもらうなど、日本の田舎のコミュニティーのような暮らしの中で育っていった。人々が気軽に集まってきたのは、同じ日本人で困っている人がいると、親身になって世話した貞子の人柄に負うところが大きかった。 富士松が愛媛県の郷里から呼び寄せられた弟の才助は、まもなくして体を壊して亡くなってしまったが、商売はそれなり…

第12回 タコマでの商売

2018年5月25日 • 川井 龍介

シアトルの南50キロほどのところに位置する海沿いのタコマは、貿易の拠点として、工業都市として早くから発展してきた。1907年には人口は9万人に達していた。森口富士松が店を開いたのは1928年だが、日本人の数は20年代が最も多くなり、タコマ市内に約1600人が在留していたといわれる。 さかのぼれば、日本人が初めてタコマに足跡を残したのは1885年とされ、98年4月には熊本一二三という人物が会社を設立し、ノーザン・パシフィック鉄道に日本人工夫を斡旋、800人の労働者がその後就…

第11回 シアトルからタコマへ

2018年5月11日 • 川井 龍介

ワシントン州のシアトルやタコマが日本人移民の町として栄えたのは、サンフランシスコやロサンゼルス同様に、日本からの定期航路が開けた地であったことがその大きな理由である。 日本から北米への航路は1896(明治29)年、日本郵船が香港—日本—シアトル間に定期航路を開いたのがはじまりだった。同年8月1日に神戸を出港した三池丸が横浜を経由して、途中臨時でホノルルに寄り、8月31日にシアトルに入港した。 シアトルへの航路を開いたのは、シアトルを起点にした大陸…

第10回 ルーツと同郷の成功者

2018年4月27日 • 川井 龍介

日本人の場合、自分のルーツをたどろうとするならば、一般的には役所に行って戸籍をたどるのが一番だろう。また、菩提寺があれば寺が保管している先祖代々の記録である過去帳などを確かめるのもひとつの手だてである。 宇和島屋の創業家である森口家の墓のある八幡浜市の堯範寺(臨済宗)にも、代々の記録は残っている。しかし、森口家の場合、その昔の養子縁組などを含めた複雑な親族関係は、戸籍をたどってみてはじめて明らかになるようだ。 創業者である森口富士松は、1898(明治31)年、旧川上村川…

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このシリーズの執筆者

ジャーナリスト、ノンフィクションライター。神奈川県出身。慶応大学法学部卒、毎日新聞記者を経て独立。著書に「大和コロニー フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)などがある。日系アメリカ文学の金字塔「ノーノー・ボーイ」(同)を翻訳。「大和コロニー」の英語版「Yamato Colony」は、「the 2021 Harry T. and Harriette V. Moore Award for the best book on ethnic groups or social issues from the Florida Historical Society.」を受賞。

(2021年11月 更新)