ディスカバー・ニッケイ

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一世の記録を拾い集めた男 ~加藤新一の足跡をたどって~


2020年11月13日 - 2022年1月28日

1960年前後全米を自動車で駆けめぐり、日本人移民一世の足跡を訪ね「米國日系人百年史~発展人士録」にまとめた加藤新一。広島出身でカリフォルニアへ渡り、太平洋戦争前後は日米で記者となった。自身は原爆の難を逃れながらも弟と妹を失い、晩年は平和運動に邁進。日米をまたにかけたその精力的な人生行路を追ってみる。

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このシリーズのストーリー

第29回(最終回) 連載を終えて

2022年1月28日 • 川井 龍介

およそ1年間にわたり日米をまたにかけて活動した加藤新一という人物の生涯と業績を追ってきました。1900年に広島市で生まれ、1982年に故郷で亡くなった加藤は、戦争を間に挟みまさに20世紀を力いっぱい生き抜いた行動する人物でした。 繰り返しになりますが、私が加藤に興味を持ったのは、彼が執筆・編集した「米國日系人百年史」を知ったからでした。1961年に出版されたこの本には、アメリカ本土のほぼ全域にわたる日本人・日系人の足跡が記録されています。加藤はこの情報を得るため、車で全米…

第28回 終わりなき世界平和の旅

2022年1月14日 • 川井 龍介

国連事務総長に手紙を書く 「世界連邦」と「地球市民」を訴え世界各地を回る加藤新一は1975年7月、サンフランシスコで開かれた第一回地球市民世界大会へ出席した。その翌年の1月、加藤は当時のワルトハイム国連事務総長にあてて書状をおくった。このあたりも行動家、加藤の真骨頂が表われている。  書状は、1976年1月20日、広島から出されたものだ。 「PLEASE ASSIST NOT TO WASTE THE PEOPLE'S TAX MONEY-FOR-WORLD PEAC…

第27回 日本から世界へ

2021年12月24日 • 川井 龍介

よく 牛にひかれて善光寺詣り というが、私はこのたび善光寺詣りならぬ世界秘境「ネパール」詣りができた。それも「牛」ならぬ「地球市民」のお蔭であった。 カナダのオッタワ、北欧のブラッセル、そのほか世界連邦世界大会など、お祭りさわぎに終わりがちな大会には興味を持たなかった私が、去る一月中旬から一週間、インドの首都ニューデリーで開いた第十六回世界大会にでかけたのは、実はアーメド印度大統領やガンジー首相が地球市民登録に署名したし、来る七月末にサンフランシスコで開く第一回地球市…

第26回 地球市民となる

2021年12月10日 • 川井 龍介

1900年生まれの加藤に直接会っている人は、日本で私が取材した範囲では加藤の甥にあたる吉田さんと加藤の実家近くに住む二人だけで、アメリカではロサンゼルスの広島県人会にひとりいるだけだった。 加藤が晩年精力的に関わった平和運動の関係者で加藤を知る者はいないものかとおもっていたところ、広島市役所で偶然手掛かりがつかめた。原爆で亡くなった加藤の妹や弟のことを調べようと広島市健康福祉局原爆被害対策部援護課を訪ねたとき、「原爆被害者対策事業概要」(2019年版)というものを入手した…

第25回 世界連邦建設への訴え

2021年11月26日 • 川井 龍介

行動するジャーナリストである加藤新一は、書き残したものはすくない。少しでも本人の書き残したものがないか、故郷広島の「広島平和記念資料館」の「平和データベース」で「加藤新一」で調べてみた。すると本と雑誌のなかからいくつか加藤の書いたものがでてきた。 その一つに「平和競存の創造」という出版物がある。「著者 加藤新一著編」、「出版者 地球友の会」、「出版年 1971年12月20日」、「頁数47」となっている。それ以上はわからないので、同資料館内の情報資料室を訪ね、実物を見せ…

第24回 「広島北米クラブ」に尽力

2021年11月12日 • 川井 龍介

最期は日本で迎えたい  二度目のアメリカ滞在で、新日米新聞社の主幹として1961年に「米國日系人百年史」をまとめた加藤新一は、まもなく新日米新聞社を離れ、1970年日本に帰国する。ふりかえれば、1900年に広島で生まれ、18歳で父親に呼ぼ寄せられカリフォルニアに渡った加藤は、日米開戦直後に帰国、1953年に再渡米、そして1970年再び日本にもどってきた。日米二往復の人生である。 ひとり息子はロサンゼルスの東京銀行で働き、孫もアメリカ生まれのアメリカ人である。一方日本には…

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このシリーズの執筆者

ジャーナリスト、ノンフィクションライター。神奈川県出身。慶応大学法学部卒、毎日新聞記者を経て独立。著書に「大和コロニー フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)などがある。日系アメリカ文学の金字塔「ノーノー・ボーイ」(同)を翻訳。「大和コロニー」の英語版「Yamato Colony」は、「the 2021 Harry T. and Harriette V. Moore Award for the best book on ethnic groups or social issues from the Florida Historical Society.」を受賞。

(2021年11月 更新)