第18回 (最終回)『僕はアメリカ人のはずだった』

1952年生まれの日系アメリカ人3世の詩人、デイヴィッド・ムラは、自分がいったいなにものなのかという問いをずっと抱えてきた。自分を百パーセントアメリカ人と考えたことはなかった。
新宮(和歌山県)をルーツにする祖父母と高知をルーツにするもう一組の祖父母を持ち、父方の祖父は、日露戦争の徴兵を忌避してアメリカにやってきた。2世の父は、アメリカ人として育ち、戦時中は収容所に入れられるが、戦後はアメリカ社会のなかで成功する。その過程で、もともとはカツジ・ウエムラだった名前を、トム・ムラに変えた。完全なアメリカ人となるためでもある。
イリノイ州のユダヤ人が多いまちで育ち、大学卒業後はミネアポリスで暮らしてきたデイビッド・ムラ…