ディスカバー・ニッケイ

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日本時間 ~日本語ラジオ放送史~ 《バンクーバー・戦前編》


2023年2月20日 - 2023年3月13日

カナダへの日本人移民の歴史は1877年に永野萬蔵が渡航したことから始まるとされる。19世紀末頃よりバンクーバーのパウエル街に日本人町が徐々に形成されていった。在留邦人数の増加に伴い、日本人社会の動静を伝える重要なメディアとして邦字新聞の大陸日報が1907年に創刊された。一方で、新しいメディアであるラジオ放送についてはバンクーバーでは1922年3月にプロビンス紙がニュースを流すテスト放送を開始したのが嚆矢とされる(後のCKCD局)。これに続き、同年に4局が立て続けに開局し、1920年代には現在のラジオ局のルーツとなる局が出そろった。しかしラジオで日本語番組が流されるまでには十数年の年月を要した。それまで在留邦人はシアトル等で行われていた日本語放送や、不安定ながらも日本からの中波や短波の放送を受信していた。本シリーズでは戦前にバンクーバーで行われていたラジオ日本語放送および日本音楽番組の歴史を4回にわたって紹介する。

*本シリーズは、平原哲也氏の著書『日本時間(Japan Hour)』からの抜粋で、月間『ふれいざー』からの転載です。

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シリーズ「日本時間 ~日本語ラジオ放送史~」



このシリーズのストーリー

第4回 その他の番組

2023年3月13日 • 平原 哲也

最終回はその他の日本語放送および二世が出演する音楽番組について紹介する。 大正堂 パウエル街301番地に店を構える大正堂(北村賢二郎、北村勝、滋賀県出身)はもともと薬屋であったが、ラインナップを拡大してラジオや日本レコードも取り扱うようになっていた。 1935年8月19日の大陸日報に「C.K.M.O. 1400K.C. 毎週月、金曜日午後五時より開始 流行の尖端を切るビクターレコードの放送をお聞き下さい」との広告を掲載した。 1936年1月11日に掲載された番組…

第3回 新見商会「流行歌放送」

2023年3月6日 • 平原 哲也

第3回目は日本唄放送と双璧をなす新見商会の「流行歌放送」について記す。 新見商会は新見虎五郎(徳島県出身、1910年渡航)の経営する薬屋、写真屋で、1919年にパウエル街331番地に開業した。邦字紙の『大陸日報』には毎日のように広告を出していた。その後日本レコードや蓄音機、ラジオの販売も行うようになる。電源を必要としないゼンマイ式の蓄音機は漁船に積み込まれ、漁の合間の娯楽として漁師に人気があったという。 1935年7月19日付の『大陸日報』の広告で「祝=晩市日本人放…

第2回 新光社「日本唄放送」

2023年2月27日 • 平原 哲也

第2回目として日本語放送の先駆けとなった新光社の「日本唄放送」を紹介する。 1935年3月にある放送局から日本語番組を放送したいとの話が加奈陀日本人会に寄せられた。日本人会では番組編成や広告集めは出来ないとのことで、経験者の露木海蔵(神奈川県出身)に白羽の矢が立てられた。「経験者」と書かれているものの、露木にラジオ放送の経験があるということではない。露木は映画巡業会社「新光社」を設立し、日本から無声映画フィルムを輸入し、それを持ってカナダは勿論のこと、国境を越えてワシント…

第1回 日本語放送前史

2023年2月20日 • 平原 哲也

カナダで初めて日本音楽がラジオで流されたのは、1925年2月のことと考えられる。当時日本の帝国海軍は毎年のように練習艦隊を海外に派遣し、遠洋航海の実地訓練をしながら、寄港地においては親善活動を行っていた。1924年11月に横須賀を出港した八雲、浅間、出雲の三艦はメキシコとアメリカを経て翌年2月にバンクーバーに投錨した。2月11日の20時からドリル・ホールで、内藤清五楽長が率いる軍楽隊とカナダ第七大隊軍楽隊が参加した演奏会が開催された。この模様がCFYC局より生中継され、「カ…

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このシリーズの執筆者

中学生の頃から外国の短波放送を受信する趣味を始める。ラジオ全般の歴史にも興味を持ち、近年は南北アメリカ大陸で放送されていた日系移民向けラジオ番組の歴史について調査している。2020年に北米大陸で戦前に行われていた番組を紹介する『日本時間(Japan Hour)』を自費出版。

(2022年 9月更新)