デカセギ・ストーリー

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。

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第四十四話(前編)「ただいま帰りました」

パウロは中学生のときから心に決めていた。「高校卒業後は、神学校へ入学し、宣教師になる」と。

両親はクリスチャンではなかったが、父方のおばあさんの影響で、パウロはクリスチャンの教育を受けた。

日曜日の朝は、バスに30分乗っておばあさんの家に行き、そこからおばあさんと2人のいとこと一緒に教会へ通った。礼拝は、大人の礼拝と子供の礼拝に分かれていたが、正午になると、皆、食堂に集まり、食事を共にして、楽しい時間を過ごした。特に、パウロは皆と話しをするのが大好きだった。

パウロは、サンパウロの郊外に家族と住んでいた。自宅のある地域は、あまり安全な地域ではなかったが、サンパウロ市内へ家を購入するのは難しかった。

父親はサンパウ…

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第四十三話 朋美もナルトも夢を追う

日本人の父親と日系ブラジル人の母親を持つ朋美は19歳。

デカセギとして日本へ行った朋美の母親は、はじめは名古屋のパン屋さんで働いていた。そのとき近所の自転車修理店のオーナーに誘われパン屋さんを辞めて自転車修理店で働くようになった。その後すぐに2人は恋に落ち、一緒に暮らすようになった。それから、朋美が生まれて、生活は充実、安定していた。

4年前、とても残念なことに、朋美の父親が肺がんで亡くなってしまった。親子の生活は一変した。両親は正式に結婚していなかったので、自転車修理店は父親の兄夫婦が経営を引き継ぐことになり、朋美と母親は住まいをも失い、ブラジルに戻らざるを得なくなった。

「勝手に日本に行って、20歳も年上のマリ…

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第四十二話 バチャンが日本にやってくる!

僕の名前は竜馬・レオナルド、11歳です。「竜馬」は大河ドラマを見て坂本竜馬のファンになったブラジル人のパパイ1が選びました。パパイは日本名だけで良いと思ってましたが、日系三世のママエ2はレオナルド・ディカプリオの大ファンで「レオナルド」という名前をどうしても付けたいと、最終的にこの名前になったそうです。面白いことに、皆は「レオナルド」ではなく「竜馬」と僕を呼びます。僕はこの名前が大好きなので、とてもうれしいです。

両親は2007年に日本に来て、僕は2011 年、愛知県豊橋市で生まれました。

僕は3歳のとき、はじめてブラジルへ行きましたが、よく覚えていません。ママエのお父さん、つまり僕のジッチャンが病気になったからです…

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第四十一話 生き別れになったユゴと母親

ユゴが4歳のとき、両親は別れ、母のエネイダは一人で生まれ育ったポルト・セグロに戻った。

ユゴの父親は、このような別れ方をするだろうと思っていたからそんなに驚かなかった。

「エネイダは、テレビドラマで見るサンパウロの暮らしに憧れてただけだよ」

「そんなエネイダに一目ぼれなんて、本当にアホ息子だ」

「赤ちゃんのユゴの面倒も見ずに街に遊びに行くなんて、信じられない!」

と、親戚は最初からいろいろと言った。

父親が朝市で働いている間、ユゴはいつも近所に住む父の姉ティア1はるみに預けられた。母親が居なくなった後も、同じだった。

小学生になると、ユゴは家で父親とゲームをしてよく遊んだ。父親は、ユゴの勉強も見てくれた。父…

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第四十話 日本を目指す4姉妹

内山家の4姉妹はいつも一緒だった。子供のころは、おばあちゃんの庭でままごと遊び、思春期には映画やコンサート、旅行へと、いつも一緒だった。

しかし、大人になると、それぞれが別の道を選び、離れて行った。

長女のユキは大手銀行の公募に合格し、有望なキャリアを積み上げていった。

次女のユリは仕事場で知り合ったカナダ人と結婚し、バンクーバーへ渡った。

三女のマリは幼なじみのケンちゃんと結婚し、二人は日本へ出稼ぎに行った。

四女のミナは大学卒業後、ブラジリアの新聞社に勤めていた。

そして、5年ぶりにマリは里帰りした。「小さいときから日焼けしてたけど、今は色白になったね!」「ジンーズしか履かなかった活発な女の子が、今はレデ…

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