デカセギ・ストーリー

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・
1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」
デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。
このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。
このシリーズのストーリー

第四十九話(後編):日本での新生活!
2025年6月3日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ
第49話(中編)を読む カオリが日本で暮らし始めてから一年半が経った。 彼女自身、新しい生活にとても満足していた。これまで以上に人生は良くなり、新しいことを学ぶ機会が増え、様々な人と交流し、まるで夢を見ているようだった。 仕事場はレストランの二階の一室で、住まいはそこから歩いて10分ほどの静かな住宅街にある小さな家だった。 ある朝、出勤前に玄関の植木鉢の手入れをしていると、「おはようございます!」と、学校へ向かう子供たちが挨拶して通って行った。 「なんて礼儀正しく…

第四十九話(中編):日本での新生活!
2025年5月27日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ
第49話(前編を読む) エミリー・メイは6歳のとき、夫と別れたばかりの母親に連れられて日本へやってきた。エミリーはブラジル人学校に通い、母親はコンビニエンスストア向けの食品工場で働いていた。 しかし、そのブラジル人学校には高校課程がなかったため、中学を卒業した後、日本の学校に適応するのは難しいと考え、エミリーはブラジルへ帰国した。彼女は母のいとこの家族と暮らしながら高校に通い、英語とコンピューターの授業も受けた。そして4年後、日本に戻ってきた。 エミリーがブラジルにい…

第四十九話(前編):日本での新生活!
2025年5月20日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ
カオリには3人の弟がいて、兄弟で唯一の女の子でした。 母親は病気がちだったため、カオリは幼い頃から家事をこなし、弟たちの面倒を見ながら学校に通っていました。毎日とても忙しく過ごしていましたが、人助けをしたり、何よりも母親が幸せそうにしているのを見るのが好きだった。 そんなある日、母親が病状を悪化して入院し、心臓の手術を受けましたが、手術に耐えられず亡くなってしまいました。 その時カオリは、しっかりしなければならないと悟りました。父親、弟たち、近くに住む祖母も、皆…

第四十八話 まいちゃんの夢
2024年12月10日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ
まいちゃんは小学3年生。お父さんのルカスは、父親のタケシに連れられ9歳のときブラジルから来日した。お母さんのあゆみは、両親がブラジルからデカセギで日本に来て、日本で生まれ育った まいちゃんは日本生まれで、日本の学校に通い、友達は皆日本人の子どもだ。また、お母さんの親戚は、日本に長く暮らしている人が多いので、皆日本語がわかる。だから、まいちゃんは、ポルトガル語を使う機会がほとんどない。 本を読むのが大好きなまいちゃんは「世界の童話」を夏休みの宿題として選んだ。両親に話すと…

第四十七話(後編) 「帰りたくても 帰れない」
2024年7月23日 •
前編を読む エイジが帰国してから一週間が経ち、家族は複雑な気持ちで、どのように彼と接しようかと、大いに惑い、両親とふたりの姉は猛省していた。 「日本で働くように勧めたのは私たちだ 。エイジには悪いことをした」 「一度も働いたことがなかったのに、デカセギは、どんなに辛かったことだろう」 「早く治るように、協力しなくちゃ」 しかし、エイジと言えば、長旅から戻って来たかのように、皆にお土産を配ったり、日本の話をいろいろしたりと、楽しそうだった。その後、自ら医者に行き、…

第四十七話(前編)「帰りたくても 帰れない」
2024年4月18日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ
2人の姉を持つ末っ子長男のエイジは、親に将来は医師になるよう言われ育った。姉たちは家事や両親が営むスーパーの手伝いをさせられたが、エイジだけは手伝いではなく勉強に集中するよういつも言われていた。 高校三年生になると、学校が終わるとすぐに塾へ行き、夜は自宅で勉強、週末も塾に通いテスト勉強に励むのが日課だった。 ある土曜日、遊びに来ていた3人のいとこに誘われ、エイジは塾をさぼって、リベルダーデの東洋街に行った。まるで魔法の世界に入り込んだようだった。見る物、聞く物、何もかも…
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1947年サンパウロ生まれ。2009年まで教育の分野に携わる。以後、執筆活動に専念。エッセイ、短編小説、小説などを日系人の視点から描く。
子どものころ、母親が話してくれた日本の童話、中学生のころ読んだ「少女クラブ」、小津監督の数々の映画を見て、日本文化への憧れを育んだ。
(2023年5月 更新)
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