第四十四話(前編)「ただいま帰りました」

パウロは中学生のときから心に決めていた。「高校卒業後は、神学校へ入学し、宣教師になる」と。
両親はクリスチャンではなかったが、父方のおばあさんの影響で、パウロはクリスチャンの教育を受けた。
日曜日の朝は、バスに30分乗っておばあさんの家に行き、そこからおばあさんと2人のいとこと一緒に教会へ通った。礼拝は、大人の礼拝と子供の礼拝に分かれていたが、正午になると、皆、食堂に集まり、食事を共にして、楽しい時間を過ごした。特に、パウロは皆と話しをするのが大好きだった。
パウロは、サンパウロの郊外に家族と住んでいた。自宅のある地域は、あまり安全な地域ではなかったが、サンパウロ市内へ家を購入するのは難しかった。
父親はサンパウ…