アメリカでは、フォーチュンクッキーの起源についての関心が高い。フィッツアーマン・ブルーの研究に拠れば、アメリカ全域で行われるフォーチュンクッキーサービスの端緒は、第二次世界大戦直後のチャプスイレストランにあるとされる。
チャプスイはアメリカ風中華料理で、豚や鶏肉といった肉類と野菜類を炒め、スープを加えて煮た後にとろみをつけた料理だ。1945年、サンフランシスコの海軍基地に帰還したアメリカ人兵士達は、中国系チャプスイレストランでサービスに出されたフォーチュンクッキーを初めて味わった。すっかりそれを気に入った兵士達は、帰郷後に地元の中華料理店で同じ物を注文し、それが次第にカリフォルニア全体へのクッキーサービスに発展したとされる。
このエピソードは、中国系チャプスイレストランで1945年にサービスが行われているため、それが中国でのフォーチュンクッキーの考案を示唆し、クッキーのサービスをも定着させた根拠として提示されるのだが、この点、再考の余地がある。なぜなら、カリフォルニアでは既に戦前において、日本人製造のフォーチュンクッキーが、日本人が経営するチャプスイレストランへ流通していた経緯が認められるからである。
筆者は、フォーチュンクッキーの起源は江戸時代後期に遡る起源を持つ「辻占煎餅」であるとの調査成果を得ており、明治期にサンフランシスコに渡った萩原眞氏が現地で製造していた説を支持…