パウロは中学生のときから心に決めていた。「高校卒業後は、神学校へ入学し、宣教師になる」と。
両親はクリスチャンではなかったが、父方のおばあさんの影響で、パウロはクリスチャンの教育を受けた。
日曜日の朝は、バスに30分乗っておばあさんの家に行き、そこからおばあさんと2人のいとこと一緒に教会へ通った。礼拝は、大人の礼拝と子供の礼拝に分かれていたが、正午になると、皆、食堂に集まり、食事を共にして、楽しい時間を過ごした。特に、パウロは皆と話しをするのが大好きだった。
パウロは、サンパウロの郊外に家族と住んでいた。自宅のある地域は、あまり安全な地域ではなかったが、サンパウロ市内へ家を購入するのは難しかった。
父親はサンパウロ市内にある印刷会社を経営していたので、毎朝早く、車に乗って家を出た。パウロが念願のサンパウロの神学校へ通い始めると、父親と一緒に朝早くに車で学校へ向かった。
ある朝、いつものように車で家を出た二人は、バイクに乗った2人組に襲われた。父親がバイクを振り切ろうと角を曲ると、もう1人の男が突然現れ、父に銃を向けた。父とパウロは抵抗をせずに、すぐに車から降りたが、父は足を撃たれ、3人組は車を奪って逃走した。
パウロは父親をすぐに病院へ連れて行ったが、父の足は完全には回復せず、一人で歩くことができなくなってしまった。以後、家族の生活は一変してしまった。
結局盗まれた…