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https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2024/9/25/nova-vita-foundation/

新世代の育成を目的に活動中 — Nova Vita Foundation

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子どもたちにリーダーシップを

ロサンゼルス南郊のオレンジ・カウンティーを拠点に、地域に住む高校生を中心に、彼らの育成を目的にコミュニティー活動に取り組んでいる団体がある。名称はNova Vita Foundation(ノヴァ・ヴィタ・ファンデーション、通称ノバビタ)。ラテン語で「New Life」の意味を持つ同団体のメンバーである生徒・学生たちの多くは、親が日本にルーツがある日系人だ。

2019年12月に創設され、2020年から活動を開始しようとしたところにコロナ禍を理由に、活動休止に追い込まれたというノバビタ、創設時の理由は若者の育成というよりも、ホームレスの人々などを対象にした社会貢献だった。創設者の一人であるミワコ・シションさんは振り返って次のように語る。

「当初は大人がメインのメンバーでした。私たちはホームレスの人々に物やお金を寄付するのではなく、彼らにスキルを身につけてもらって自立につながるような『教育』を行うことを目的として(ノバビタを)立ち上げました。しかし、コロナ禍で活動が難しくなったために、組織を閉じることも検討に入れ始めていた頃、コロナ禍で学校に行けなくなった周囲の子どもたちが精神的に追い込まれているのを目にするようになりました。そこで、活動の目的を子どもたちのリーダーシップの育成に変えて、活動を通して子どもたち自身が大きく成長できることを目指すことにしました」。

メンバーの多くが日系であることから、2024年の夏にはオレンジ・カウンティーのタナカ・ファームを会場に、日本式の盛大な夏祭りを主催、多くの来場者を集め、協力スポンサーは数十社にのぼった。

毎年、夏祭りを開催

UCLA陸上部で活躍中のカホ・シションさん  

ミワコさんの娘で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)3年生のカホ・シションさんは同団体の活動を通して成長し、現在では高校生メンバーたちを牽引する存在だ。

「夏祭りは過去4年間開催しています。最初の頃は小規模でしたが、今年はコラボレーションしてくれる企業の数も増え、年を経るごとに規模が大きくなっています。(ブースなどの)売上金は、今後の私たちの活動、優秀な高校生の大学進学の奨学金などに充てる予定です」。

カホさんは、今はオレンジ・カウンティーである活動拠点を、もっと広い地域に拡大していくため、彼女の言葉を借りれば「ノバビタのコミュニティーを大きくするため」に、大学卒業後も末長く同団体に関与していきたいと語る。

では、カホさんにとっての活動のモチベーションとは何だろうか。「高校生たちの成長です。今年のMVPに選ばれた高校生が、初めて参加した時はお母さんの背後に隠れているようなシャイな人でした。ところが活動を通してリーダーシップを発揮するようになり、自信を得たのです。人は1年、2年といった短い期間でもこんなに変わることができるのだ、ということが目に見えて分かり、私自身、大きなやりがいを感じています」。

新しいメンバーはどのような経緯で入会してくるのかも聞いてみた。「知り合いの紹介で自分から希望する人もいれば、ボランティアの現場で出会った人で『この人は大きな戦力になる』と感じると、私たちからリクルートすることもあります」。

このように自分の成長を望み、後輩の成長を積極的に手助けするノバビタの有志たちは、今年の夏祭りで100人近い数に達したそうだ。

日本文化を知ってほしい

続いて、アメリカ人の父、日本人の母を持つカホさん自身のアイデンティティーや日本語力について質問した。最初はアイデンティティーについて。

毎年夏休みには鹿児島の学校に通っていたカホさん(右)  

「何人かと聞かれたら?ジャパニーズアメリカンと答えます。もしくはアジアンアメリカンですね。実は私、6歳からコロナ禍に入るまで、夏休みになると母の実家の鹿児島の学校に通っていたのです。それで自分は日本人だという意識が強く、人から何人かと聞かれたら普通に『日本人』と答えていました。でも、コロナ禍中にはアジア人に対するヘイトクライムがあり、自分は日系を含むアジア系だということを堂々と表明できていませんでした。実際に白人から『中国へ帰れ』と言われたこともありました。

しかし、そんな気持ちもノバビタの活動を経て、胸を張って『自分は日系アメリカ人』と言えるプライドと自信が身についたのだと思います。また、以前のように日本人でなく日系アメリカ人と言うようになったのは、少し前に日本に滞在した時に、自分が所属するカリフォルニアの大学を代表していたために、(日本人ではなく)アメリカ人という意識をより強く持つようになったからだと分析しています」。

また、母親のミワコさんは、カホさんを日本の小学校に通わせ始めた理由を次のように語っている。

「日本語は日本語の補修校で身に付くはずだと思い込んでいました。ところが、娘の日本語力が十分でなかったために、日本語の補修校に入学することすらできませんでした。日本人である私の娘が日本語を話せなくなるかもしれないと思った私は、日本国内の学校に毎夏、彼女を通わせることにしたのです。日本語の語彙が増えただけでなく、協調性といった日本的な習慣も身に付けて毎回戻ってきました」。

こうして、カホさんは日本の言葉と日本の文化を習得した。「ノバビタで共に活動することで、自分のルーツである日本という国の文化も知ってほしい」と、カホさんは話している。そして、この秋、ノバビタは、オレンジ・カウンティーの公立校で、日本式の運動会を運営する予定。このイベントに広く一般の人々への参加を呼びかけることで、運動会という日本文化をアメリカ人に知ってもらうことも開催目的の一つに位置付けられている。

 

公式サイト: Nova Vita Foundation

 

© 2024 Keiko Fukuda

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執筆者について

国際基督教大学を卒業後、東京の情報誌出版社勤務を経て1992年渡米。ロサンゼルスの日本語情報誌の編集長を2003年まで務めた後、同年フリーランスとして活動開始。人物取材、アメリカの教育事情、日本食事情などをテーマに取材を続け、2024年に郷里の大分に活動拠点を移す。その後もオンラインを通じて取材執筆活動に従事。ウェブサイト: https://angeleno.net



(2024年10月 更新)

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