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日系料理とは? ロン・エルマレ シェフとの会話

ロン・エルマレ  ©写真撮影: Duane Cheung

カナダの日系料理とは、いったいどんな物でどんな味をしているのでしょう。この質問に答えられる唯一の人物と言えば、コバチ日本食レストランのオーナーシェフ、ロン・エルマレさんでしょう。日本人とモロッコ人を両親に持つ彼は、イスラエルで生まれ、日本で育ちました。その後アメリカの大学に通い、今はカナダのアルバータ州に住んでいます。ロンさんの育ってきた環境や食生活は、日系料理への理解や楽しみ方など、独特な「味方」を提供してくれるのではないでしょうか。ここでは、コバチ日本食レストランの料理を紹介しながら、「日系料理」について考えていきたいと思います。

コバチ(住所:200 Festival Ln #125, Sherwood Park, AB T8A 4Y8, Canada)

アルバータ州シャーウッドパークという静かな町にあるコバチは、Festival Laneのプラザにあるこじんまりとした居心地の良いレストランです。環境に配慮した食材を使ったバランスのとれた食事を提供することをモットーとするこのレストランでは、シンプルで上品な料理を味わうことができ、地元のお客さんに高く評価されています。

私がアルバータ―大学で研究していた頃は、よく友人とコバチで食事をしました。新型コロナウイルスが発生する前の話です。あの頃はロンさんの料理を食べて力をもらっていました。時間に余裕のある週末は、特にコバチに行くのを楽しみにしていました。鴨寿司や和牛のたたき、ホタテバターを美味しいお酒と一緒に味わうのはもちろんですが、ロンさんの食に対するこだわりや情熱を聞く事も楽しみの一つでした。ちなみに、ロンさんのお勧めの一品は、グルテンフリーの鶏の竜田揚げです。竜田揚げに添えられたレモン・アイオリ(レモンオイル)との相性は抜群です。

2019年のオープン以来、私のお気に入りのメニュー(鴨寿司、帆立バター、梅酒)。コバチは、日本酒や梅酒、地元のビールを提供しています。料理に合ったお酒を選んでもらってはいかがでしょう。

当時ロンさんとの会話の中で「本物の日本料理」が度々話題になりました。

私は幼い頃、「スシ」は気持ち悪くて粗末な食べ物だと言われたり、生の魚を食べる文化の人だと差別を受けたこともあります。しかし最近では「スシ」と言う食べ物は大勢の人に受け入れられるようになり、ここカナダでは(?)スシ食べ放題の店が、まるでコーヒーショップのように街のいたるところに出来ています。スシに限らず様々な国の食文化が、国際化のお陰であらゆる人達に受け入れられるようになったことは、大変嬉しいことです。

寿司をはじめとする日本料理の国際化により、「正真正銘、本物の日本料理」とは何なのかと言う疑問が湧いてきます。実は、私の父も日本料理店のオーナーシェフで、日本で板前修行を積んできました。そんな父にとって、チーズやマヨネーズの入った寿司は”日本食”ではなく、メニューに加えるのをかたくなに拒み、許される事ではありませんでした。

この「本物の日本料理」については、立場の違いなどにより意見が分かれ、答えは一つではないとも思います。料理を作る人、生まれ育った国の歴史や環境、経験などが積み重なり、基本を保ちながら「日本料理」から「日系料理」へと変化するのだと私は思います。

ロンさんは、本物の日本料理にこだわるのでは無く、最終的には料理人として、誰と一緒にそして誰のために料理するのかが、大事なのだと話してくれました。

当初はあれだけかたくなに拒んでいた父も、お客さんの要望に応え徐々に自分の知る「日本料理」を変えていき、今では楽しく料理を作っています。やはり「日系料理」とはその時々に手に入る食材を使い、調理技術と日本食本来の味を残しつつ、顧客の為に斬新なアイデアで新しい物を作り出していくもので、それは料理人が囲まれたコミュニティに大きく影響されるのだと思います。とは言え、恐らく父の影響で私はまだ、イチゴやマンゴーを使った巻き寿司をスシ、スシと呼ぶことに少々抵抗があります。

ロンさんは、豊富な食材が揃うカリフォルニアとカナダのアルバータ州シャーウッドパークでは日本料理における背景は全く異なっていると言います。それでもロンさんは、かかんに挑戦しています。子供の頃両親のキッチンから始まった料理への世界が、イスラエルから日本、アメリカ、カナダ、また世界中のシェフとの交流、プロとしての経験を通して、彼の料理に大きく影響したのは言うまでもありません。

アルバータ州エドモントンにある三店の異なる日本食レストランで働いてきたロンさんは、たくさんの衣が付いた揚げ物や見栄えが良いだけの料理ではなく、地元のオーガニック食材を取り入れ、グルテンフリーの料理を提供することにこだわってます。コバチには、タピオカティー、ラーメン、天ぷらはありません。時にはこのような判断も必要だとロンさんは考えています。

風味豊かな温かみのあるボリュームたっぷりのカレー。週替わりの特別メニューにもご期待ください。

ロンさんの創造性と創意工夫は、通常のメニューと週替わりの特別メニューを見れば分かります。彼の料理一品一品に、今まで培った経験と才能を見る事が出来ます。例えば、シャックシューカと言う料理は、カリカリのおこげライスチップを添えて、モロッコと日本のルーツを融合させています。また、牛ひき肉カレーもしかりです。やはり、これらも日系料理と言えるものでしょう。残念ながら、これらの料理は現在提供していないようですが、さらにモロッコ料理を開拓し、近い将来日本料理と出会えるよう準備中のようです。

最後にロンさんは、こんな事も言っていました。

「日本料理と日系料理は、根本的にはよく似ています。しかし、日系料理は新しい環境に適応しています。その土地で求められ、手に入る食材を使用することで、その変化が受け入れられるようになる。それはまるで、祖国と私たちをつなぐ架け橋のようです」と。

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コバチ日本食レストランの営業時間やメニューについての最新情報は、インスタグラムフェイスブックウェブサイトをご参照ください。

*「コバチ」は日本語で「小鉢」または「小蜂」と二つの意味があります。これはレストランのコンセプトを示しており、ロゴにもこれが表現されています。

 

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© 2022 Mimi Okabe

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