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第9回 増え続ける外国人労働者

コメント

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 日本のコンビニに日本人が働いていない? 

永井さん

【永井】日本の外国人統計を見ればわかりますけれど、私が日本からブラジルに来たときに、ベトナムの方って10万人くらいだったんですよ。それがこの3年でもう26万人になっている。16万人も増えちゃってるんですよ。だから、たまに一時帰国した人と話すと「日本のコンビニエンスストアにいっても、日本人なんか一人も働いていない」と。

【島野】中国人ですね。

【永井】中国の人とベトナムのひと。

【島野】インドとか。

【永井】インドと言うかネパールの人だと思いますね。だから、すごく増えてるんですよね。移民社会になってるんです、どんどん。

で、この前の新聞の報道なんかであったのとかも2025年までに50万人くらい増やすんだって言う話ですけども、そんなこと改めて宣言しなくても、ここ3年で16万人も増えていますよね。

毎年ベトナムから来る人の数もちょっとずつ増えていて、入れる年限が当初は3年だったんで、そろそろ今年あたりから帰り始める人が出てくるという予定ではあったんですけど、それが5年に変更しますとかですね。まあ最初3年から5年になって、5年から10年に変更になって。10年いたらもう帰る人いないと思うんですよね。

というか、多くの人は帰れないですよね。10年も住んで元のところに戻っても、人間関係も様変わりしてますから。

【深沢】そっちばっかりどんどん敷居を低くしていって日系四世の入国制限は妙に厳しい。もしかしたら何年か経ったら見直して、ゆるくするとか、良く分からない。

【永井】日系四世についても、まあ、三世と同じ「定住者」資格でいいって意見もあったんじゃないかと思うんですよね。

【深沢】四世もそれがある意味、理想ですよね。でも、下地議員が「三世までのビザにもいろいろな問題が起きていた。だから四世ビザではそんなことが再発しないように変えた」「丁寧に受け入れたいから」と熱く語っていたのには、心底ありがたいと感じました。

というのは、日系社会側にも矛盾があると思うんです。僕ら邦字紙は、三世までの現行制度には「こんな欠陥がある」とか、「派遣会社に搾取されて可哀想」とか、「日本語でもポ語でもまともな読み書きができないセミリンガル世代が何万人も生まれてしまった。まず在日日系子弟の教育問題を解決したうえで新制度を」などいろいろな注文を延々と付けてきた。

それらを考慮して日本政府が「丁寧な対応」を始めたら、こんどは日系代表団体が「三世までの制度と同じ様にしろ!」とか言い始めている。(笑)

「誰でも日本に働きに行ければいい」ってものではない訳ですよね。三世世代までと同じ問題が、四世に起きたら最悪ですよね、実際。その意味で「条件を易しくしてほしいけど、手厚く対応もしてほしい」みたいな贅沢な対応を、日本政府にお願いをしているのかもしれませんね。


ブラジル人が外国に住んだときの特徴

【永井】ただし、あんまり外国の人をいっぱい入れたくないという考えの人たちも、日本の日本人にはかなりいる。ブラジルの人がすごく増えて2006年くらいに犯罪がすごく多くなった悪い思い出が、まだ残っているような人もいます。

あとは逆に、来てほしいと思っている人の中にも、「定住者」みたいに自由に転職されちゃうと、来てほしい職場に定着してくれない。だから、職場が変われない技能実習生みたいに安く安定して働いてもらえる形ならいいとか思う人たちもいる。

そういう思惑がごっちゃに混じっちゃって、今の制度になっちゃったんじゃないかなって気がしますけど。

【深沢】よく、日本は人口が減っているから外国人を入れなくてはいけないという議論をする人がいますよね。

【永井】はい。

【深沢】そうであれば、ちゃんと日本人と同じような待遇で受け入れなくてはいけないと思うんですよね。「外国人は下層労働のみ」みたいな受け入れ方をしていると、後々恨まれて、もしも在日ブラジル人が移住100周年とかやる時代になった時、「移住当時は日本政府から差別された」とか言いそうですよね。

それに、日本の新聞で「日系人1万人が毎年失踪」とか大々的に書かれる状況になったら最悪ですよね。まあそんなにひどかったら、それ以前に行かないでしょうけど。

やっぱりその、日本人優位があからさまな感じがどこかある。グローバル社会の中では胸をはれないものがあるんじゃないかと思いますね。

【永井】それだけじゃなくて社会があんまり階層的に分かれちゃうと犯罪とかも多くなりますし、いろんな問題が出てくるんじゃないかな。

【深沢】そこで、日系人受け入れをひとつにテストケースにしたらどうかと思うんです。上手に日系人を受け入れて在日2代目になったら、メンタリティは「ほぼ日本人」になるんじゃないかという気がします。

【島野】帰化した人じゃなくて、たぶん次の世代から、たぶん。

【深沢】そうそう。6月に映画監督の山崎千津薫さんの記者会見があって、となりにその州立移民史料館のジレトーラが座って一緒に話してたんです。このジレトーラが面白いこと言ってたんです。「ブラジルの日系人は100年、110年経っても、まだ日本文化の伝統とか一生懸命残そうとしてるけど、ブラジル人はアメリカやヨーロッパに行ったら、その子供はもうその国の人間になっている。何にも抵抗無く溶け込むんだ」と。むしろ「それがブラジル人の特徴だ」みたいなことを言っていた。

「なるほどー」と納得しましたね。新しい移民大国ゆえに、人種的に多様で、国民性が固まっていない。だからほかの国に移住した場合、適応しやすい、と。

続く >>

 

* 本稿は、ニッケイ新聞(2018年8月30日31日付)からの転載です。

 

© 2018 Masayuki Fukasawa / Nikkey Shimbun

ブラジル 世代 日本 移住 (migration) 在日日系人 ビザ 四世
このシリーズについて

四世ビザが成功して五世、六世まで訪日就労しながら日本文化を学べるようになるならば、この査証制度は日系社会の将来を左右する大事な制度ではないか――そんな問題認識に基づいて、元デカセギ子弟で帰伯後にブラジルで弁護士になった島野パトリシアさん、デカセギ対応の最前線にいる国外就労者情報援護センター(CIATE)の専務理事・永井康之さんを迎えて、ニッケイ新聞の深沢正雪編集長と座談会を行った。

(※この座談会は2018年6月に実施され、その後の事情の変化を反映するために加筆訂正したもの。ニッケイ新聞からの転載。)

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執筆者について

1965年11月22日、静岡県沼津市生まれ。92年にブラジル初渡航し、邦字紙パウリスタ新聞で研修記者。95年にいったん帰国し、群馬県大泉町でブラジル人と共に工場労働を体験、その知見をまとめたものが99年の潮ノンフィクション賞を受賞、『パラレル・ワールド』(潮出版)として出版。99年から再渡伯。01年からニッケイ新聞に勤務、04年から編集長。2022年からブラジル日報編集長。

(2022年1月 更新)

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