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https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2018/10/22/yonsei-visa-6/

第6回 四世ビザ、査証発給の厳しい条件

コメント

7月5日に文協で講演した下地議員

第5回を読む>>

他の外国人労働者には緩くなるのに、日系人に厳しいのはなぜ?

【永井】あと、1990年とかパトリシア先生が行かれた95年とかもそうですが、日本とブラジルの一人当たりのGDPの差が10倍くらいあって、何年か日本で働けばこっちでアパート買えるとか、車買えるとか、会社開けるとかできた。だからデカセギに行く意味があったわけですよね。

ところが最近3倍から4倍くらいに格差が縮小した。ブラジルの不況とか為替の関係で毎年変動してはいるんですけど、収縮して来ている。

そうすると一人で行って何年か働いても、こっちで何も出来ない。こっちの不動産も高くなってますし。だからデカセギに行く人って最近いない。むしろ「家族で移住したい」という需要をみたすために日本に行く人が増えてるんですよね。

【深沢】家族で移住したくて日本に行くというのはどんなケースですか?

【永井】要するに「一人で行って働いてお金をこっちに送る」んじゃなくて、「みんなで行って向こうに住んで、もう帰ってくるつもりはありません」と。

実際は何年かしたら帰って来たいって言う人もいると思います。けれども行くときはそういうつもりでいく人が増えているのだと思います。

【深沢】永井さん、やっぱり今の四世ビザの制度のままでは、そういう意味で、四世問題の解決にはならないと。

【永井】独身だけ行けるいうのは、今の行きたい人のトレンドとも違う。

【深沢】その一方で、日本の安倍政権は50万人の外国人労働者を受け入れる「骨太の方針」を発表みたいな…。

【永井】まあその「骨太の方針」の用件を見ると、四世ビザよりもゆるい部分もあってですね(笑)。だったら、もっと四世を緩やかに受け入れてくれても良かったんじゃないかと。

【深沢】どこか、ちぐはぐなんですよね。「日系人は日本の宝です」とか言いながらね。

【永井】四世ビザの方がむしろ、外国人労働者受け入れのテストケースになっているというか。

【深沢】だいたい、なんでワーキングホリデー(以下、WH)をベースにしなきゃいけないのかも良くわからない。三世までに与えられてきた「特別定住ビザ」っていう方向があるのに何でまた突然、全く別の方向へ。

【永井】しかも、本来WHにはサポーターとかいらないのに四世ビザには要件として付けている。

【深沢】そうですよね。関係ないですよね。

【島野】「働きながら観光する」という文化に触れ合う感覚でもない。四世ビザはなんかズレているような感じですよね。

【永井】ほんとのワーキングホリデー(WH)にするなら、それはそれでよかった。でもズレちゃっている。「5年の制限」がついていて、しかも「サポーターが必要」。誰かサポーターがなってくれないといけないわけですよね。

サポーター制度は、日本での生活をサポートするのが本来の役割なんでしょうが、逆に職場に縛り付ける役割をする可能性がある。例えば会社の人がサポーターになって、「仕事辞めたら、私サポーターやめますよ」と言うようなケースですね。

そうすると介護だとか、相対的にきつくて給料が安くて、自由に転職できるブラジルの方だったらあんまり就職しないところに縛り付けるための役割になっちゃう可能性があるわけですよね。

【深沢】下地議員は、「50人の会社で社員みながサポーターになってくれれば、100人まで受入れできる」みたいなことを言っていましたよね。つまりサポーター一人当たり、2人まで四世を引き受けられると。会社ぐるみでサポーターになった場合、「会社を替える」ことは「サポーターを替える」ことですよね。

議員は「サポーターを変えても良い」と言っていましたけど、スムーズに変えられるんでしょうか? まあ、全てはやってみないと分からないことですが。

日本にいる外国人の中で、自由に仕事を変えられる人と、サポーターのおかげで縛られる人との格差が生まれていく可能性がありますね。

【永井】そうです。自由な転職ができずに職場に縛られちゃうと、ブラジル人の間でも在留資格によって格差が生まれていく可能性があります。

他のブラジルの方と結婚したり、日本の方と結婚したりすれば、在留資格を変更できるみたいではあります。そうしない限りは職場に縛り付けられちゃう。かわいそうなことになるのではないかと心配しています。

建前としてはサポーターと言うのは、そういう悪いところが出てこないように見張る立場なんだってことになっていますし、職場に縛り付けてはいけないというルールになってはいるんですが。

【深沢】それ以前にサポーターを見つけるのが現実的に難しい感じですよね。

【永井】サポーターを見つける人たちは結局、雇う人たちということになっちゃって、そうすると仕事を変えられないった問題が出てくるんじゃないかと。

続く >>

 

* 本稿は、ニッケイ新聞(2018年8月24日28日付)からの転載です。

 

© 2018 Masayuki Fukasawa / Nikkey Shimbun

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このシリーズについて

四世ビザが成功して五世、六世まで訪日就労しながら日本文化を学べるようになるならば、この査証制度は日系社会の将来を左右する大事な制度ではないか――そんな問題認識に基づいて、元デカセギ子弟で帰伯後にブラジルで弁護士になった島野パトリシアさん、デカセギ対応の最前線にいる国外就労者情報援護センター(CIATE)の専務理事・永井康之さんを迎えて、ニッケイ新聞の深沢正雪編集長と座談会を行った。

(※この座談会は2018年6月に実施され、その後の事情の変化を反映するために加筆訂正したもの。ニッケイ新聞からの転載。)

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執筆者について

1965年11月22日、静岡県沼津市生まれ。92年にブラジル初渡航し、邦字紙パウリスタ新聞で研修記者。95年にいったん帰国し、群馬県大泉町でブラジル人と共に工場労働を体験、その知見をまとめたものが99年の潮ノンフィクション賞を受賞、『パラレル・ワールド』(潮出版)として出版。99年から再渡伯。01年からニッケイ新聞に勤務、04年から編集長。2022年からブラジル日報編集長。

(2022年1月 更新)

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