ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2016/4/1/newspapers-ja-incarceration/

第二次世界大戦の収容所に関する「貴重な新情報の宝庫」

1973年から1988年の間に、カリフォルニア州立大学フラートン校(CSUF)のオーラル・ヒストリー・プログラム(OHP)の日系アメリカ人オーラル・ヒストリー・プロジェクト(JAOHP)に所属する私の学部生と大学院生の進取の気性に富んだ数名のおかげで、米国戦時移住局(WRA)が管理し、強制退去させられた日系アメリカ人を収容していた4つの強制収容所(カリフォルニア州のマンザナールとトゥーリー・レイク、アリゾナ州のポストン、アーカンソー州のジェローム)の近くにある小さな町の第二次世界大戦時の住民に対するオーラル・ヒストリー・インタビューのアーカイブがまとめられました。これらのインタビューはすべて、主に CSUF の歴史学科の学生が編集した出版物、ジェシー・ギャレットとロナルド・ラーソンの「キャンプとコミュニティ: マンザナーとオーエンズ渓谷」(1977 年)、および 1993 年にノーラ・ジェッシュ (私と共同編集) が「日系アメリカ人第二次世界大戦避難口述歴史プロジェクト」(1991 ~ 1995 年) で録音された「警備員と町民」の回想録をまとめた 2 冊の本を通じて、研究者に公開されました。アーカイブ内の JAOHP インタビューは、戦時中、近隣のキャンプに対する近隣のコミュニティのあらゆる階層の住民の視点を捉えようとしたものです。

ここでレビューする本『コミュニティ新聞と日系アメリカ人収容所』は、どちらもフラートンの研究モデルを補完しながらも、それとは大きく異なっている。第一に、この本もWRA収容所に焦点を当てているが、その範囲は合計10施設のうち9施設に及び、ポストンの施設のみが調査されていない。第二に、この本の制作責任者(ドレクセル大学教授のロナルド・ビショップと彼の元学生3人、モーガン・ダドケウィッツ、アリサ・ファルコーネ、レニー・ダゲット)は、名目上はジャーナリズムの歴史家であるが、現在は(あるいはかつては)フィラデルフィアにあるドレクセル大学の広報学部に組織的に所属している。第三に、この本の4人の著者はインタビューを情報収集の研究ツールとして採用しているが、洞察を集め、章ごとおよび全体的な物語を構築し、さまざまな結論を導くための集約データについては、コミュニティベースの口述歴史のフィールドワークにあまり依存していない。第四に、そして最も重要なのは、ドレクセル大学の研究が、WRAキャンプの建設とその後の日系人収容所の建設を含む戦時中を、地元のジャーナリスト(および、それほどではないが広報専門家)がどのように報道したかを分析するという、明確に定義された目的を徹底的に追求していることである。

ロナルド・ビショップによる素晴らしい序文が明らかにしているように、この本の各章は共通の調査方法を体現しており、主に共有されている一連の研究結論を強調している。前者に関して、ビショップは、彼と他の3人の著者を導いた次の質問を詳述している。収容所の収容と建設について、それぞれの地元新聞が強調した主なテーマは何だったのか。地元のジャーナリストは、WRA収容所に到着したとき、そして収容所内での初期定住期間中に、収容された人々をどのように描写したのか。地元新聞による、投獄された日系アメリカ人に関する報道は肯定的だったか、否定的だったか。監禁された日系人に対する地元ジャーナリズムの扱いは、「西海岸の大手日刊紙で見られる偏見に満ちた報道を反映していたか」。記事をまとめるにあたり、地元記者は主にどのような情報源を利用したのか。これらの記者は、「収容者に対する公民権侵害」に注意を払ったのか。

私の考えでは、これらのガイドラインに最も忠実かつ完全に従順な (したがって全体的な効果が高い) 支部は、カリフォルニア州のマンザナーとトゥーレ湖の 2 つのキャンプ、およびワイオミング州とユタ州のハート マウンテンとトパーズのキャンプを扱っている支部です。おそらくこの質的な違いは、ビショップがこれら 4 つの模範的な支部すべてに関与していることと、ヒラ リバー (アリゾナ州)、ミニドカ (アイダホ州)、アマチ (コロラド州)、およびアーカンソー州のローワーとジェロームの 2 つのキャンプに比べて、これらの場所に関する歴史的文書と解釈がかなり豊富であることという 2 つの要因の組み合わせによるものです。

キャンプに関するさまざまな章の主要な研究結論については、多少の違いはあるものの、著者らは驚くほど似た傾向で記述している。つまり、コミュニティ ジャーナリスト (および広報担当者) はキャンプの設置場所の選択と設立について適切に報告したが、その方法は、社会秩序を強化し、運営精神を構築して維持し、市民および経済部門を促進し、「不快な出来事」や物議を醸す問題を避けることで、奉仕するコミュニティを支援することを可能にするものだった。根本的に、この地方志向は、ジャーナリストを、対立よりも合意、建設的な批判よりも緊張の管理、客観的な真実よりも受け入れやすいフィクションに関心を持つ、恥ずかしげもなくコミュニティを後押しする存在にしてしまった。この手法によって生じた付随的な被害は、地元のジャーナリストと広報担当者が「収容者の公民権の侵害についてほとんど書かなくなった」ことであった (p. 8)。

本書は、その方法論や結論だけでなく、WRA キャンプが置かれ、地元新聞が発行されていた僻地の農村地域に関する貴重な新情報の宝庫でもあります。また、これらの新聞の発行者、編集者、著名な記者たちの豊かな人生史も読者に提供しています。この根拠のある情報により、この話題の分野を研究する学術研究者や一般のキャンプ研究者は、これまで「地元の知識」として認められてきた浅はかな固定観念をついに超えることが可能になりました。

コミュニティ新聞と日系アメリカ人強制収容所のような野心的な取り組みには、当然ながらいくつかの欠陥が見られます。ほとんどの場合、「悪魔は細部に宿る」ことがわかります。収容所の研究のいくつか(たとえば、ヒラ川とミニドカの章)は、情報が過剰で混乱しているために欠陥があります。また、名前と場所の不正確な指定(たとえば、「ダーウィン」ではなく「ダーウィン」)、事実の誤り(たとえば、ジェローム収容所は「1942年6月30日」ではなく「1944年6月30日」に閉鎖された、アマチは非連邦政府の土地に設置された唯一の収容所ではなく、マンザナーは米国政府がロサンゼルス水道電力局から借り受けた土地にあった)、編集手順の不規則性(たとえば、2人の著名なジャーナリスト、トッド・ワトキンスとヘンリー・ドウォーシャクのファーストネームは本文のどこにも記載されておらず、索引にのみ記載されている)による問題もあります。そして、出典の記載が間違っている(例えば、この著者は、マンザナーに関する学術的評価を反駁したとされているが、実際には反駁していない。さらに、この主張に関連する章末の注は、私の研究ではなく、別のマンザナー研究者であるカレン・パイパーの研究に言及している)。より重大な懸念は、作為ではなく省略であるが、この長くて綿密に論じられた本には、読者がその非常に有用な内容を消化し理解するのに役立つ写真、地図、イラストがまったくないことである。

このような比較的小さな欠点にもかかわらず、ここで最も評価されるべきなのは、この本の顕著な成果であり、その中でも特に重要なのは、この本が、著名な大学教授と熱心な学生たちとの真に協力的なパートナーシップから生まれた研究であるという点である。この取り決めは、理論的にはしばしば称賛されるものの、実際には大きな過小評価を受けている。

コミュニティ新聞と日系アメリカ人強制収容所:論争ではなくコミュニティ
ロナルド・ビショップ、モーガン・ダドケウィッツ、アリサ・ファルコーネ、レニー・ダゲット共著
(メリーランド州ランハム:レキシントンブックス、2015年、372ページ、110ドル、ハードカバー)

※この記事は2016年1月1日に日米ウィークリーに掲載されたものです。

© 2016 Arthur A. Hansen / Nichi Bei Weekly

書評 コミュニティ 投獄 監禁 日系アメリカ人 ジャーナリズム ジャーナリスト 新聞 レビュー 第二次世界大戦 第二次世界大戦下の収容所
執筆者について

アート・ハンセンはカリフォルニア州立大学フラートン校の歴史学およびアジア系アメリカ人研究の名誉教授で、2008年に同大学口述および公衆史センターの所長を退官。2001年から2005年にかけては、全米日系人博物館の上級歴史家を務めた。2018年以降、第二次世界大戦中の米国政府による不当な弾圧に対する日系アメリカ人の抵抗をテーマにした4冊の本を執筆または編集している。

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