ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2015/12/28/kyle-honma/

カイル・ホンマさん

カイル・ホンマさんは全米日系人博物館のヒラサキ・ナショナル・リソースセンターでボランティアをしている。彼がボランティアを始めたのは、博物館の開館当初から16年間ボランティアを続けた父方の祖父母、ヒデオさんとジューンさんの影響だ。

カイルさんは日系アメリカ人四世であるとともにメキシコ系アメリカ人の四世でもある。彼が祖父母に連れられて全米日系人博物館を初めて訪れたのは1997年、彼が小学一年生のときだった。「リトル・トーキョーの存在さえ知りませんでしたよ」と彼は話す。当時の彼は、自分が後に博物館でボランティアをすることになるなど思いもしなかったのだ。

インタビュー当時25歳で学生のカイルさんは、博物館で最もエネルギッシュなボランティアの一人だ。学業、アルバイト、そしてボランティアを全てをうまくこなしている。「平日は特に時間をしっかり管理しないといけません」とカイルさんは言う。このやる気は、1990年代に初期のボランティアとして活動した祖父母から受け継いだそうだ。

「祖父母が私を博物館に引き込んだんです」と彼は微笑みながら言う。「日系アメリカ人であることに関して言えば、祖父母のおかげで全く異なる見方をすることができるようになりました。自分の文化とアイデンティティについて多くを学ぶことができました。またより積極的に携わるようになると、日系アメリカ人としての経験について更なる発見をすることができました。そして今では自分のルーツについてもっと知りたいと思っています」

折り紙を教えるカイルさん
(写真提供:全米日系人博物館)
ヒラサキ・ナショナル・リソースセンターにて
(写真提供:日刊サン)

カイルさんの学びたいという意欲が衰えることはなく、長年ボランティアをしているロイ・サカモトさんからもいろいろと教わった。彼は親日派と見られた人々が収容されたツールレイク収容所に入った経験もある。「多くの人はツールレイクについてよく知りません。ロイさんは膨大な時間と労力を費やして研究を行い、博物館に貢献しています」

日系人であると同時にメキシコ系でもあるカイルさんは、独特な視点を持っている。ハパではあるが、日系人であるという自覚の方が強い。彼はこれも子供のころ近くに住んでいた祖父母の影響だと考えている。

カイルさんは家族で日本食を食べることはめったにないと言うが、お正月やお盆のような日本の伝統を祝い、食卓にはほぼ毎食お米があるという。しかし日本食を食べに行く機会は、家族とよりも友人と外出した時の方が多い。

左から、祖父ヒデオ、弟アアロン、祖母ジューン 
(写真提供:カイル・ホンマ)

カイルさんは祖父母が進んで彼らの話をしてくれたことを幸運だと感じている。「祖母ジューンは、特に彼女の収容所での生活や戦後の話などをよくしてくれました」

祖母のジューンさんはハワイで生まれ育った。第二次世界大戦が始まったとき、柔道の指導者であった父が米連邦調査局(FBI)に逮捕された。逮捕された1500人のほとんどが一世で、ジューンさんの父もその一人であった。当時ジューンさんはまだ6歳か7歳で、その後一家はアーカンソー州のジェローム収容所に送られた。

一方、祖父ヒデオさんは戦時中ハワイに残ったが、「敵国の日本人と同じ顔をしているため」いじめられたという。朝鮮戦争が終わるころ、ヒデオさんはアメリカ軍に徴兵された。

ヒデオさんとジューンさんはカイルさんにこう話すという。「私たち日系人のために活動を続けるんだよ」。カイルさんにはその覚悟ができており、ボランティアをすることは「祖父母との架け橋」になると考えている。

ロイス & エルマン・パディヤ学生賞を受賞(写真提供:全米日系人博物館)

「来館者にはぜひコモングラウンドの展示を見てほしいんです」とカイルさんは言う。「アメリカの歴史の裏には誰も知らない物語があるということを皆さんにはぜひ知ってほしい。そしてこれはその一つなのです」。

ホンマ一家、博物館の前にて(写真提供:カイル・ホンマ)

 

* 本稿は、 日刊サンの金丸智美氏がインタビューをし、そのインタビューを元に、ニットータイヤが出資し、羅府新報が発行した『Voices of the Volunteers: The Building Blocks of the Japanese American National Museum (ボランティアの声:全米日系人博物館を支える人々)』へエレン・エンドウ氏が執筆したものです。また、ディスカバーニッケイへの掲載にあたり、オリジナルの原稿を編集して転載させていただきました。

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© 2015 The Rafu Shimpo

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このシリーズについて

このシリーズでは、ニットータイヤからの資金提供を受け『羅府新報』が出版した冊子「ボランティアの声:全米日系人博物館を支える人々 (Voices of the Volunteers: The Building Blocks of the Japanese American National Museum)」から、全米日系人博物館ボランティアの体験談をご紹介します。

数年前、ニット―タイヤはロサンゼルスの邦字新聞『日刊サン』と共同で全米日系人博物館(JANM)のボランティアをインタビューしました。2014年末、これらのインタビューを小冊子にまとめるべく、ニットータイヤから私たち『羅府新報』に声がかかり、私たちは喜んで引き受けることにしました。JANMインターン経験者の私は、ボランティアの重要性や彼らがいかに献身的に活動しているか、そしてその存在がどれほど日系人の歴史に人間性を与えているか、実感していました。

冊子の編集にあたり、私は体験談ひとつひとつを何度も読み返しました。それは夢に出てくるほどでした。彼らの体験談に夢中になるのは私だけではありません。読んだ人は皆彼らの体験にひきこまれ、その魅力に取りつかれました。これが体験者本人の生の声を聞く醍醐味です。JANMのガイドツアーに参加する来館者が、ボランティアガイドに一気に親近感を抱く感覚と似ています。ボランティアへの親近感がJANMの常設展『コモン・グラウンド』を生き生きとさせるのです。30年間、ボランティアが存在することで日系史は顔の見える歴史であり続けました。その間ボランティアはずっとコミュニティの物語を支えてきました。次は私たちが彼らの物語を支える番です。

以下の皆様の協力を得て、ミア・ナカジ・モニエが編集しました。ご協力いただいた皆様には、ここに厚く御礼申し上げます。(編集者 - クリス・コマイ;日本語編者 - マキ・ヒラノ、タカシ・イシハラ、大西良子;ボランティアリエゾン - リチャード・ムラカミ;インタビュー - 金丸智美 [日刊サン]、アリス・ハマ [日刊サン]、ミア・ナカジ・モニエ)

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執筆者について

『羅府新報』は日系アメリカ人コミュニティ最大手の新聞です。1903年の創刊以来、本紙はロサンゼルスおよびその他の地域の日系に関わるニュースを日英両言語で分析し、報道してきました。『羅府新報』の購読、配達申し込み、オンラインニュースの登録についてはウェブサイトをご覧ください。

(2015年9月 更新)

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