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https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2011/11/30/programa-ohayo-bom-dia-1/

最終回(前編) 「オハヨウ・ボンディア」放送中

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「オハヨウ・ボンディア!みなさん、すばらしい朝ですね。ラウラ・ホンダです。今日も元気いっぱい、この番組をお届けします。どうぞ、楽しいひとときをお過ごしください」

このようにして、7年間、わたしの一日はスタートしていた。雨の日も晴れの日も、ラジオ局に通い、本当に楽しい時間を過ごした。

ラジオのパーソナリティーを務めるのは長年の夢だった。

時は遡り50年代、大人が子どもだった私たちによく聞いていたことがある。それは「大きくなったら何になりたい?」

女の子は全員一致で「学校の先生」と答えていたが、わたしの場合は「ラジオのアナウンサー」

近所の子どもたちは「アナウンサー」がどういう仕事か想像も出来なかった。わたしはその当時からラジオを聴くのが日課で、子ども向けのドラマやブラジルの歌謡番組が大好きだった。

大学を卒業後、銀行に勤めながら、当時一番大きいラジオ局でパートの仕事をしたが、2年ほどで辞めてしまった。国語(ポルトガル語)と国文学(ブラジル文学)の教師の道に進んだからだ。しかしながら、内心どこかで、またチャンスがあればラジオの仕事をしてみたいと思い続けていた。

定年退職後、サンパウロから550キロ離れた町に引越し、そこのラジオ局でボランティア活動を始めた。

日本の歌と文化を伝える番組を担当していた。内容の異なる3つの番組を受け持ち、それぞれ週に1回2時間づつ放送していた。月曜日は「オハヨウ・ボンディア」という日本の歌謡曲、童謡、昔話、ニュース、料理だった。火曜日は「オハヨウ・ボンディア・ゴスペル」という日本語での賛美歌と聖書の話。水曜日は「ハ・ハ・ハレルヤ」という番組で、子ども向けのゴスペルと聖書の話だった。この番組だけがポルトガル語で、ほかの2つは2ヶ国語で放送していた。

3つとも内容が違うので、リスナーもさまざまだった。言葉では表現出来ないほど多くのすばらしい体験ができた。

最初から音楽には国境がないと感じていた。人は感動するのに言葉はなくてもいい。歌を聞いて元気をもらい、励まされる。それを何度も実感した。

加山雄三が歌う「君といつまでも」は人気で第1位に輝いた。この歌を流すたびに電話がひっきりなしに掛かってきたものだった。「日本語は分からないけど、大好き!」「なんてすばらしい歌なの!CDどこで売っていますか?」「もう1度聞きたい」というリクエストがたくさんあった。

もう一曲は小阪忠の「きみはすばらしい」というゴスペルソング。「オハヨウ・ボンディア・ゴスペル」のテーマソングで、これを聞いて慰められたという感想がいつも寄せられた。そのほとんどは、日本語が分からないリスナーからだった。音楽はすごい!と思った。

何といってもみんなに愛されている歌は「上を向いて歩こう」だと思う。この歌は世界中で評判になった作品で、「オハヨウ・ボンディア」のテーマソングに選んだ。ある日のこと、このテーマソングを流していた時、こんな電話を受け取った。「もしもし。わたしは外回りの仕事をしていて、車の中でいつもこの番組を聞いています。今、公衆電話から掛けています。この歌が大好きです。妻と子どもにプレゼントしたいです」ブラジルではラジオを通して家族に歌を贈るのがリスナーの間で大人気。

音楽の次に、昔話や日本のニュースが好評だった。「浦島太郎」の話をした時にとても面白いことが起こった。「さて、浦島太郎が竜宮から戻った時に・・・」と、ちょうどこの部分で、熱心に聴いていたファンのセルマの家に来客があり、彼女は話の終わりを聞き逃した。「もう一度放送してほしい」とリクエスト。しかし、2度目の「浦島太郎」の時には隣りのおばさんに呼ばれて、手伝いに行っていたため、セルマはまた聞き逃してしまった。そして、3度目には居眠りをしてしまった!3週間たって、4度目の放送で、ようやく「浦島太郎」の終わりを知ったセルマは「なんと悲しい物語なんだろう」と言った。

後編>>

© 2011 Laura Honda-Hasegawa

ブラジル コミュニケーション オハヨウ・ボンディア(ラジオ) ラジオ 社会学 遠隔通信
このシリーズについて

祖父は日本から約100年前に来伯。私はブラジル生まれ。だから、私はブラジルと日本との「架け橋」になりたい。私の心に深く刻まれた「にっぽん」は宝物。ふるさとのブラジルで守りたい。そんな思いを込めて書いたのが、このシリーズです。(Bom Diaはポルトガル語でおはよう)

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執筆者について

1947年サンパウロ生まれ。2009年まで教育の分野に携わる。以後、執筆活動に専念。エッセイ、短編小説、小説などを日系人の視点から描く。

子どものころ、母親が話してくれた日本の童話、中学生のころ読んだ「少女クラブ」、小津監督の数々の映画を見て、日本文化への憧れを育んだ。

(2023年5月 更新)

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