ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2008/3/29/2572/

第7回 長寿を支える「ヌチグスイ」アメリカへの普及はかる

沖縄県観光商工部北米委託事務所
当銘由洋 (とうめ・よしひろ) さん / 沖縄生まれ新一世

沖縄には「ヌチグスイ」という言葉がある。沖縄の食材を、県からの委託で北米にプロモートしている当銘由洋さんは、「この言葉は、食べるものは健康にいいという沖縄の発想で、中国の『薬食同源』につながります。古くから沖縄の料理は養生食とも言われています」と解説。

当銘さんに、沖縄の人々の長寿を支える代表的な食材を紹介してもらった。

「まず、ゴーヤ。体温を下げる働きがあるため、沖縄の人は夏にこの野菜を食べます。ビタミンC、カリウム、鉄分が豊富で、血糖値降下作用があり、夏 バテ防止にいいといわれる健康的な食材の代表格です。私もそうですが、沖縄出身者はこちらでもよく庭で栽培しています。日系、中国系のマーケット、朝市な どでも売っていますのでなじみがある人も多いでしょう」

ゴーヤ料理で一般的なのは、卵や豆腐、スパム、豚肉などと炒めるチャンプルーだ。

「続いて、もずく。ヌルヌルの成分に抗癌作用があるという研究結果も出ています。豊富なミネラル成分が特徴。最近は天麩羅やサラダにも使われます が、本来は三杯酢で食べることが多いですね。もずくは沖縄の特産品ですが、同じ海草でも、沖縄料理でよく使われる昆布は北海道産です。だしをとるのではな く、煮付けやソバに入れるなど食べるための食材です」

中国と交易が盛んだった頃には、沖縄経由で北海道の昆布を輸出していたそうだ。

「黒糖はサトウキビの汁を乾燥させて作ります。ミネラルが豊富でエネルギー源となります。沖縄のお年寄りは、寝る前にお茶と泡盛1杯、黒糖1かけらを食べて寝るのが習慣です」

課題はデータ提供

また、血糖値降下や疲労回復作用もあるとして日本のテレビでも紹介された、沖縄自生の果物のシークヮーサーは、ジュースやドレッシングに形を変えて食卓に頻繁に登場する。

さらにウコン。「生姜科の野菜で根の部分を使うウコンは、粉末やタブレットに加工されます。お酒を飲む前にウコンを服用すると、肝臓への負担を軽減します」。最近ではウコンの粉末を練り込んだソバや麩も販売されている。

健康志向が高まるアメリカで、これらの県産品の普及に取り組んでいる当銘さんは「沖縄はせっかく良い素材を持っていてもマーケティングに弱いのが難点。課題はアメリカ企業を納得させられるだけのデータの提供です。産官学をつないで調査を進め、アメリカの食品業界に沖縄の健康食品を定着させていくのが ゴールです」と抱負を語る。

* 本稿はU.S. FrontLine January 2008 (3rd week) からの転載です。

© 2008 Keiko Fukuda

食品 日本 沖縄県民 沖縄県 ウチナーンチュ U.S. FrontLine(雑誌)
このシリーズについて

福田恵子氏による第7回にわたるアメリカの沖縄系コミュニティのシリーズ。アメリカの日本人を対象に読まれている日本語無料週刊誌、U.S. Frontline からの転載。

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執筆者について

大分県出身。国際基督教大学を卒業後、東京の情報誌出版社に勤務。1992年単身渡米。日本語のコミュニティー誌の編集長を 11年。2003年フリーランスとなり、人物取材を中心に、日米の雑誌に執筆。共著書に「日本に生まれて」(阪急コミュニケーションズ刊)がある。ウェブサイト: https://angeleno.net 

(2020年7月 更新)

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