第五話(後編) クレイト 血と汗&サンバの物語
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ふたたび転々と職を変えた。そのため、ブラジルの家族の存在はどんどん薄らいでいった。2歳になった娘の写真も見たことがなかった。そして、気がつくと、サンバのインストラクターになっていた。今まで一度も考えたことがなかった。まったくの偶然だった。
それは、ある日、彼が電車を待っていた時のことだった。反対のホームに紺のユニフォームを着た女子高生を見かけた。長い黒髪のお下げで淑やかな感じがかわいかった。早速話しかけようと、ジェスチャーを使い、いろいろ試みたが、彼女は困ったような様子をしていた。クレイトは、更に、アピールしようと、ダンスのようなさまざまな動作を敏捷でしなやかな体で演じてみた。
まもなく、向かいのホー…