近代における日本人の海外渡航は幕末からはじまった。移住を目的とする渡航について言えば、出稼ぎから定住へとおおきく推移していった。いまでこそ デカセギといえば南米の日系人が日本に来てはたらくことをもっぱら指しているが、かつては冬のあいだ雪国から都会に出て労働に従事することや、海外で一旗 揚げることが、出稼ぎの部類に属していた。そして海外では出稼ぎのつもりがいつのまにか定住にかわってしまうこともめずらしくなかった。最近では、デカセ ギの日系人が日本での定住ないし長期滞在をかれらの人生設計に組み込むようにすらなっている。
では、日本人の海外移住の歴史とはどのようなものであったか。ここでは歴史記述の書物を紐解くのではなく、展示にことよせて、世界各地のミュージア ムでそれをどのように展示しているのか比較してみることにしよう。とりあげるのは国内では山口県大島町の日本ハワイ移民資料館、JICA横浜国際センター 海外移住資料館(Japanese Overseas Migration Museum)、海外ではホノルルの日本文化センター歴史展示場(Historical Gallery, Japanese Cultural Center of Hawaii)、ロサンゼルスの全米日系人博物館(Japanese American National Museum)、サンパウロのブラジル日本移民史料館(Mus…