このコラムで前回紹介した、日本人カナダ移民の第1号である永野萬蔵氏の生涯についてまとめているのが、1977年に出版された『カナダの萬蔵物語 The First Immigrantt To Canada』(尾鈴山書房)である。
この年は、萬蔵がカナダに渡ってからちょうど100周年となり、この本には“萬蔵の物語”のほかに、「パイオニアの人達の素顔 日系カナダ人百年記念」と題して、その名の通り、日本からカナダにわたって活躍した日本人(日系人)が98ページにわたって紹介されている。
萬蔵物語と同様に、森研三(ケン・森)と高見弘人の手によるものとみられる。繰り返しになるが森は1914年カナダのヴァンクーバー生まれで、戦前はヴァンクーバーで発刊された『大陸日報』などの記者をし、戦後はトロントで『ザ・ガーディアン』の日本語版編集長を務めた。高見は1936年宮崎県生まれで、65年から66年にかけてカナダに滞在、以来日系人の移民史を調査・研究してきた。
パイオニアたちがカナダに足を踏み入れた当時、カナダの太平洋岸は未開発で産業も未発達だった。が、その分彼らの破天荒な試みも可能だった。野望を抱き、豊かさを求めて日本を離れカナダにわたった彼らのなかには、密航により上陸したものもいる。
道筋は人それぞれだが、やがて水産業、農業、実業界、公職、社会福祉など、さまざま分野…