デカセギ・ストーリー

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。

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第二十二話 (前編)「グラウシャ」は今、何処?

「美容師になりたい」と、カズエは生まれ育った町を出てサンパウロへ向かった。高校を休学してまで、伯父が経営する美容院で1年ほど住み込みで修行した。その後、美容師の資格を取り、伯父の美容院で本格的に働き始めた。

ある日、伯父の勧めで全国美容師コンテストに参加して見事に優勝した。それをきっかけに、カズエは大きな目標を持つようになった。

40年前に伯父と伯母が始めた「サロン・ダ・ロザ」の外見は地味で、客のほとんどが、年配の日系人女性だった。彼女たちは流行を追わず、昔ながらのパーマが気に入っていた。

カズエはテレビでよく見るブラジル人の歌手や女優のヘアースタイルに憧れていた。コンテストでは、大勢のプロの美容師に出会い、褒めら…

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第二十一話 ミッちゃんと「日本のおばあちゃん」

台風が通り過ぎた翌日のことでした。その日の朝は蒸し暑く、ミッちゃんは赤いランドセルを背負って、水筒を持って学校に向かって歩いていました。

「どっちが暑いのかなあ。ブラジルの夏と日本の夏では」と、まだはっきりと分からないようでした。ミッちゃんは、半年前までブラジルに住んでおり、日差しが強い日は、友だちと外で遊ぶよりベランダで本を読む方が好きでした。バチャン1の作るおいしいココナッツアイスクリームも大好きでした。ブラジルの生活の方が比べものにならないくらい良かったと思っていました。

全てが変わったのは、高齢のバチャンに、常時介護が必要になった時でした。子供たちはバチャンを老人ホームに預けることを決めたので、バチャンの家で暮ら…

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第二十話 「サッカーワールドカップで会いましょう」

「Copa do Mundo1」がブラジルで開催されると決まった時、ケントは跳び上がって喜んだ。サッカー好きの少年は、学校から戻るといつも、宿題をするのも忘れて、近くの原っぱでボールを蹴っていた。母親はしかたのないものと受け入れるしかなかった。ケントの父親もサッカー好きで、プロになろうと思っていた頃もあったのだ。

「パパイ2が日本から帰って来られたらいいのになあ。そうしたら、一緒にテレビでプレーを見られるし、スタジアムにも行けたらいいなあ!」と、ケントは強く願った。

母親はかわいそうに思ったが、「そんなはずないでしょ。パパイはあと2年は日本で頑張って、ちょうどお姉ちゃんが大学を卒業する頃に戻って来ると、言っていたでしょう…

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第十九話 (後編)ナカジマがやって来る!

前編 >>


思い切って日本行きを決心したナカジマ。2ヵ月前までは、サンパウロの「イタリア人街」でピザ職人として働いていた。妻のマリア・セシリアはレース編みやガーデニングを楽しんで毎日を過ごしていた。

ふたりの人生の転機はマリア・セシリアが初めて口にした言葉からだった。「一度でいいから日本に行ってみたいわ」と。

その瞬間、ナカジマは、母親と兄が2年ほど前から日本に住んでいることを思い出した。当時、兄から電話でそのことを聞いていたが、ナカジマは妻には何にも言っていなかった。と言うのは、イタリア系の妻の両親や親戚は裕福だったので、自分の母親と兄が生活のために日本へ出稼ぎに行っているとは言えなかったのだ。

し…

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第十九話 (前編)ナカジマがやって来る!

日系二世のナカジマ少年は日本語学校に行くのが嫌だった。しかし、日系人が多いブラジルのバストスという町には、どこへ行っても、町の中に日本のような雰囲気が漂っていた。八百屋もパン屋も理髪店も、ほとんどの商店は日系人の経営だった。ホテルもそうだった。ナカジマ家は養鶏所を持っていて、次男のナカジマ少年は卵を売るのを手伝っていた。それも嫌だった。日系人の客に日本語で声をかけられるのが苦手だったからだ。

ナカジマは、まったく日本のことに興味が持てず、会館で行われる日本の伝統行事に参加したこともなかった。土日はブラジル人の若者が行く溜まり場で「僕はジャポネザ1と付き合ったことは一度もないんだ。ナモラダ2はブラジル人がいい!」と、いつ…

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