第11回 東洋街形成と一世リーダーたち(1) -田中義数-
世界のどの移民史の局面でも、エスニックタウン形成の初期には、強力な指導力をもった大物リーダーが存在した。サンパウロ東洋街創設にかかわった日系大物リーダーといえば、まず思い浮かぶのが田中義数(1909~1979)と水本毅(1920~1989)であろう。
すでに書いたように(第6回「東洋街の形成と発展①」)、1953年、シネ・ニテロイがリベルダーデ広場からガルヴォン・ブエノ通りを少し下ったと ころ(現在の大阪橋の位置)に開業したことによって(写真11-1)、このエリアに日系商店が集まるようになり、のちに東洋街が形成される契機となった。 シネ・ニテロイは、ブラジル最初の本格的日本映画専門館であり、二階以上にレストラン、ホ…