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ネットオークションの最後15分で値が吊り上がって、目当ての小引き出しは、78,000円になった。5000円までと決めていたのに、競り合いになってヒートアップしてしまった。
送られてきた品物は、思ったよりしっかりしていた。上段の引き出しは二つに仕切られ、中段、下段は仕切りがない。上段を開けてペンやハサミを入れた後、私は下段を開けた。下段は、少し引き出しが斜めになっていて、何か引っかかっているみたいだったので、気になったのだ。
案の定、引き出しが出てこない。ぐっと手前に引っ張ると、開くには開いたけれど、何かが変だ。中段を開けてみる。中段と下段では引き出しの高さが違っていた。下段の方がずいぶんと低い。私は、下段を覗きこんだ。
ん?
下段は、上げ底になっているようなので、ひっくり返す。
コン、コン
うん。やっぱり。
底と下段の間には空間があるようで、空洞を叩いた時の音がする。振ってみると紙があたるシャカシャカという音がかすかに聞こえる。手を突っ込んだが底板に隙間はない。ハサミをてこにして底板に力をかけた。
中に入っていたのは、五通の手紙だった。英語だった。昔の授業の記憶と辞書を頼りに読んでみるか。ひと様の手紙を読む罪悪感は、好奇心に負けてしまった。
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「それは違うわ。それは見立てというより、色合わせでしょ?」
「ん~。ピンクとグレイを合わせると素敵なのよ!」…