Select a primary language to get the most out of our Journal pages:
English 日本語 Español Português

We have made a lot of improvements to our Journal section pages. Please send your feedback to editor@DiscoverNikkei.org!

Kizuna 2020: Nikkei Kindness and Solidarity During the COVID-19 Pandemic

日本の日系ラティーノの新型コロナウィルスに対する迷いと希望

日本政府の感染予防イラストや外国語情報サイト 

2020年4月16日現在、新型コロナウィルスが全世界に拡散し猛威を振るっており、その状況は日々変化している。今年2月3日、横浜に大型クルーザーが寄港した1。これが日本の見えないそれもまだ十分に知られていない「敵」との戦いの始まりだった。感染拡大を防止するため、3月に学校の一斉休校やイベント自粛要請が出た。3月に入るとイタリアやスペインをはじめとする欧州全体の出入国規制も厳しくなり、その反動で中南米諸国も同じような措置をとった。最終的には国や州別のロックダウン(都市封鎖)が行われ、一部の国では兵士の警備が伴う夜間外出禁止令が発せられた。我々一般市民は、きちんとした手洗いやマスク使用、部屋の換気や三つの密「密閉空間、密集場所、密接場面」をつくらない、外出を極力控えるという予防策をとることが推奨された。しかし、世界でのコロナウィルスの猛威は収まらず、ここ数週間ネット上では、日本政府は「なぜ非常事態宣言をせずロックダウンしないのか2」と政府の遅い対応へかなり厳しい指摘が相次いだ。「感染者数や死亡者数を隠匿しているのではないか」という陰謀説まで出てきた。そんな中、4月7日の夕方、日本政府は緊急事態宣言を都心部を中心に発令、16日に緊急事態宣言を全国へ拡大した。

現在日本には、約26万人弱の日系人が在住しており、うちブラジル国籍が206,886人、ペルーが48,517人で(2019年6月)3、この二つの国出身の日系人が日本の日系コミュニティー全体の9割以上を占めている。スペイン語やポルトガル語のエスニックメディアもあり、南米系の店やレストランでは無料雑誌も手に入る。ネット配信しているFMラジオ番組やフェイスブックとリンクしているコミュニティー団体のウェブサイトもある。自治体や国際交流協会は多言語で生活情報などを提供している。

しかし、今回のような異常事態では自国メディアの報道をいつもより意識してしまい、センセーショナルな話題に迷わされてしまうこともある。実際、新型コロナウィルスに関して、メディアやSNS(ソーシャルメディア)には様々な見解や憶測が出回っているが、本当に必要な的確な情報を手に入れるのは難しく、テレビのワイドショーが不安を煽っている側面も否定できない。きちんと情報を整理する前に断片的な情報をSNSで共有してしまうこともある。さらには、そこに根拠のないデマが書き込まれることもあり、とんでもない結果になってしまう。

このような状況の中、在日日系ラティーノは本国の情報なども把握していたせいか、日本の「自粛」措置を多くが遵守しているようだった。とはいえ、南米出身者にとっては、自分の国々では得られない日本の国民健康皆保険制度や、以前からマスク使用が一般化して清潔な街を維持している日本に対し、安心感をもってしまっている側面もある。そのせいか、日本の「自粛」を侮ってライブや宗教行事をする日系ラティーノや団体もある。

実際、知り合いから「そうしたイベントを中止させたい、警察や保健所は止められないのか」といった相談を受けた。あるペルー人クンビア・アーティストは、2月にスペインやイタリアで公演したのちにパリ経由でリマに帰る予定だったが、予定を少し変更し3月半ばに日本にいる親戚や知人を頼ってこの神奈川にやってきた。この当時在京及び在名古屋ペルー総領事館はすでに自粛要請をしていたが、急遽6か所(神奈川、茨城、三重、愛知、東京、静岡)でライブ実施を発表したのである。一稼ぎをしたかったのだと思うが、パリからリマに帰ったもう一人の仲間はコロナウィルスに感染していることが判明し、日本の同胞から大きな反発と抗議が殺到した。結局、彼はすべてのライブをキャンセルした。また、別の知人は、先週の日曜日(4月5日)、愛知県岡崎市にある福音教のある宗派が室内で礼拝を行うという案内を目にしたという。しかし、自治体や保健所、ブラジル総領事館に連絡したが、阻止できなかったという。

キャンセルになったクンビアのライブ、領事館の自粛要請、名古屋の夜のブラジル人バーなど。

南米のように外出禁止(自宅強制隔離)違反者を拘束、逮捕、刑事処罰(罰金が多い)、そして無許可外出に使用した車の押収というような措置を求める日系人もいるが4、今の日本では法的に不可能なことである。他の国々とあまりにも乖離した日本政府のの対応策に対し、日系ラティーノの戸惑いと不安は高まる一方だ。

そんな中、ブラジル人もペルー人も自分たちのメディアを通して、日本の自粛要請に沿ってコミュニティー内での意識改善を呼びかけている。中には大人数でパーティーをしたり、三つの密に反する言動も見られるが、一部のメディアはそうした写真を掲載することで、感染クラスターにならないよう注意喚起を行っている。一方、二人のブラジル人女性が手作りマスク600枚を静岡県湖西市に寄付したという心温まるニュースも流れた5。そうした行動は社会でもコミュニティー内でも良い手本になる。

スペイン語での情報提供やペルーのニュースを提供するサイト、ブラジル人女性によるマスクの寄付。

私は、過去の経験をいかし、SNSを利用し、在日日系人への情報提供に努めている。2011年の東日本大震災の際、私は日本のメディアが配信する記事や映像をスペイン語でまとめ、フェイスブックなどで要点だけを配信したり、スカイプを通してブエノスアイレスやリマなどのメディアへも状況を報告した。今回も、日本のコロナウィルスに関する取材をブエノスの女性誌「パラティーPara Tí」から受けたので、その記事6をSNSで配信した。さらには、日本政府の「緊急事態宣言7」についてスペイン語で図やイラストを使って分かりやすく説明したものを掲載した。どちらもかなりの反響で、あっという間多くの人に共有された。

4月16日現在、在日日系人が新型コロナウィルスに感染したという情報はない8。が、新型コロナウィルスの影響で、契約不更新やシフト変更を言い渡された日系人は多くいるようだ。緊急事態宣言が拡大されれば、サービス部門の多くは事業を休業せざるをえないので、確実に雇用にも影響するので、在日ラティーノへの影響は無視できない9。国際労働機関ILOは、数日前に今回のパンデミックで世界では2億人近い労働者が職を失い、深刻なな失業問題が発生すると警告した10

日本政府は年度予算とほぼ同額、国内総生産の2割に相当する108兆円をコロナ経済対策事業費11として発表した。企業の雇用維持と金融支援、フリーランスや低所得者への給付金などに充てられる予定だ。施策の細かい内容を把握し、日系人にもこのような情報をできるだけ多く提供していきたいと考えている。2008年(リーマンショック)や2011年(東日本大震災)のときのように、情報発信の役割を担っていければと思う。 

日本では、これまでクラスターの早期発見、患者の早期診断と重症者の治療、そして市民の自粛で感染拡大に対応してきた。4月からは、東京や大阪では軽症者をホテルや自宅で療養する措置をとっている12。今後どのように感染が終息していくのか先はまだ見えないが、南米における感染者数と死亡者数、外出違反者の増加、脆弱な医療体制と疲弊した医療現場などの状況を鑑みると、たとえ今の状況が悪化して長期戦になったとしても、多くの在日日系人はこの日本の諸制度や政府による対策を信じながらも、規則正しく踏ん張っていくさらなる覚悟が必要である。

注釈:

1. 当初は3700人の乗客に対する政府の対応は、国内外から批判されたが、感染者711人、死亡者11人のうち重症者を入院させ、隔離期間を終えてから各出身国にチャーター便で帰国させた。他国でも同様のケースがあったが、他の国では寄港させ許されず、かなりずさんな対応であったため、今は日本の対応に一定の評価が与えられている。

國井修、「クルーズ船の隔離は「失敗」だったのか、専門家が語る理想と現実」(『ニュースウィーク日本版』2020年3月4日)

2. 2020年4月7日の夕方に安倍総理が7つの自治体に対して緊急事態宣言を発令した。東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、そして福岡だが、数日後愛知県、岐阜県、京都府も県単位で宣言し、国の枠内での措置を求めている。2月から3月にかけて北海道が独自に制定し、今後他の自治体ももっと厳しい制限措置を決定する可能性がある(2020.4.10現在)。4月12日には、緊急事態が解かれていた北海道と札幌市が緊急会見をし、外出自粛と小中高との休校を決定した。そして、4月16日にはこの宣言を全国に拡大した。これで様々な規制や支援が統一できるとみられる。

3. 法務省、「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表

4. 現地メディアによると、3月の半ばから4月初旬まで、ペルーでは5万人、アルゼンチンでは10万人以上の無許可外出違反が発生、警察や検察、担当判事はこれに追われているという。イタリアやスペインでは、強制外出禁止令の域内だけでなく、欧州の他の国に移動したものもかなり多い。

Coronavirus en Perú: suman más de 51 mil los detenidos desde que inició el aislamiento social obligatorio,” (El Comercio, 2020.4.6)

Amantes, partidos de fútbol y asados: las insólitas excusas para romper el aislamiento obligatorio,” (infobae, 2020.4.8)

5. 「ブラジル人が手作りマスク 湖西市に寄付」(『中日新聞』静岡、2020.4.3) 

6. アルゼンチンでは著名な雑誌で、編集長は日系のパウラ池田氏。インタビュー記事、“Japón vs el Coronavirus: aciertos para copiar (y errores que podemos evitar)”を書いた。

7. 緊急事態宣言に対する安倍総理の記者会見 2020.4.07 
スペイン語

8. 4月14日、『日本経済新聞』が島根県出雲市の村田製作所で従業員多数かコロナウィルスに感染したと報道したが、ここには多くの日系ブラジル人が働いている。16日現在、日系人が感染したということは確認されていない。

出雲市=村田製作所でコロナ感染者発生=在日ブラジル人が多数勤務」(ニッケイ新聞、2020.4.16)

9. 静岡県浜松市や愛知県の鈴鹿市では、日系ブラジル人が契約打ち切りなどで雇用保険の相談や手続きをしていることが報道されている。

『仕事がない』浜松のブラジル人 収入減で娘は学校退学 それでも『日本と一緒に立ち直りたい』」(テレしず、2020.4.15)

外国人労働者、失業保険の手続きに列 鈴鹿のハローワーク」(『中日新聞』、2020.4.16)

10. 『El Pais』紙、2020年4月7日付によると、ILOは失業者2億人と予測しているとあるが、1ヶ月前は新型コロナウィルスの雇用に対するインパクトは2,500万人であった。

11. 経産省、「新型コロナウイルス感染症関連
中小企業への支援も含む情報:「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ

12. 4月10日現在、世界では感染者150万人、死者9万人である。日本は、感染者約5400人、死者88人、回復者数685人である。「新型コロナウイルス感染症まとめ 

*****

スペイン語でSNSやウェブで発信しているサイト

 

© 2020 Alberto J. Matsumoto

coronavirus covid-19 Japan Kizuna2020 nikkei in japan

About this series

In Japanese, kizuna means strong emotional bonds. In 2011, we invited our global Nikkei community to contribute to a special series about how Nikkei communities reacted to and supported Japan following the Tohoku earthquake and tsunami. Now, we would like to bring together stories about how Nikkei families and communities are being impacted by, and responding and adjusting to this world crisis.

If you would like to participate, please see our submission guidelines. We welcome submissions in English, Japanese, Spanish, and/or Portuguese, and are seeking diverse stories from around the world. We hope that these stories will help to connect us, creating a time capsule of responses and perspectives from our global Nima-kai community for the future.

* * * * *

Although many events around the world have been cancelled due to the COVID-19 pandemic, we have noticed that many new online only events are being organized. Since they are online, anyone can participate from anywhere in the world. If your Nikkei organization is planning a virtual event, please post it on Discover Nikkei’s Events section! We will also share the events via Twitter @discovernikkei. Hopefully, it will help to connect us in new ways, even as we are all isolated in our homes.